One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

2021 TKC模試雑感と復習・今後受験される方へ【長文】

 

お久しぶりです。

 

司法試験直前期なので、短答・論文に向けた追い込みを進めています。

そんな中、先月受けたTKC模試も返ってきていますので、この段階で復習することにしました。ここ4日間で全体的に見直し、関連するテーマについても知識を確認しています。

 

月並みながら復習していて思ったのは、「模試はしょせん模試」「採点者の力量による得点のばらつきがあまりに大きい」ということです。

形こそ本試にそっくりなものの、問題・論述例がいかにも予備校の答練で、個々の論点が設問ごとにバラバラに聞かれている印象を受けました。

合格推定圏内でしたが、個々の論点では理解の雑なところがあったし、時間切迫の答案も2通作ってしまったので、しっかり最後の詰めをしていこうと思います。

以下では、2021TKC模試の"復習実感"及び今後受験される方への個人的なアドバイスを書いておきます。

 

出題内容に言及するほか、否定的な評価を多分に含むことをご了承ください(高評価じゃなかったやつの戯言と思ってください)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第1 復習雑感

1.選択科目(経済法)

出題の予想されている非ハードコアカルテルと、行為類型の多い拘束条件付取引・再販売価格拘束(委託販売)のセット。

問題文が箇条書きに近く、最初なんだこれはと思いましたが、本試のR2がまさにそんな感じだったので、雰囲気を真似たんだと思います。芸が細かい。

いずれもこれまでに出題のなかったテーマで、委託販売の方は自分もマークしてなかったので結構助かりました。

素点は高く、極めて優秀との講評がついており舞い上がりましたが調整で20点下がりました。残念。

 

2.公法系

憲法

コスプレイヤーの公園利用を制限する立法の憲法適合性を論じさせる問題。憲法要改善の自分としては「なるほど」と思う出題でした。

しかし、論述例が微妙でした。論述例はいくつか言及していない事実があったほか、分けるべきところを分けておらず、判例泉佐野の射程を検討せずにそのまんま貼り付けています(出題趣旨では射程を検討して欲しかったとあるのに…)。

 

ずっと憲法は水物だと思っていましたが、模試でさらにその考えを強めました。理論面詰めるより多数派にまぎれる書き方にとどめて他の科目に力を注いだ方がいい、と。

すなわち、判例の立場に言及するといっても、判断枠組みのところで使うとなると大抵は比較衡量なわけで、あてはめはスカスカになるのがオチです。あてはめを充実させようとなると学者がいわば片面的に整理した(というと芦部先生に怒られるかもしれませんが)審査基準論と整合させることになるんでしょうけど、それには正確な理解が求められ、かなりの労力を要します。その分民事系や刑事系の理解を詰めた方が総合点は上がります。

 

断片的ですが復習メモを残しておきます。構成自体は参考答案・論述例よりまともだと思います。細かいあてはめ部分は割愛しています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第1 個人利用に対する規制

1 文面上の問題

⑴「不適切衣装」を着用しての利用が禁止されているが、何が「他の公園利用客に対して著しく不安若しくは恐怖を覚えさせるようなもの」に該当するか不明確

⑵「表現」該当性への言及、萎縮効果の回避の要請→徳島市公安条例展開

 

⑶ あてはめ

 武具や防具、妖怪やゾンビが印刷されたTシャツに対し「著しく不安若しくは恐怖を覚える」かは人によって異なる→これらの衣装を着用して本件公園を利用しようとする者にとっては、その衣装を着用しての本件公園の利用が許されるか否かの判断を可能ならしめる基準を読み取ることができない

→例示などをしないと漠然不明確故に無効とされ得る

2 開放エリアにおける規制

⑴開放エリアにおいて、コスプレして本件公園を利用する行為が規制される→当該行為をする自由を制約し憲法21Ⅰに反しないか

⑵制約があることの指摘

保障面については1で言及済み

⑶判断枠組み

・権利の重要性

反対意見:低価値表現を含む+模倣であり自己実現・自己統治に資さないから重要な権利ではない

確かに、残虐表現を時として伴う また、模倣の側面が強く、民主政の過程との関連性もうすいことは否めない

しかし、全てのコスプレが残虐表現を伴うわけではない

また、衣装の作成・着用やシーンの再現には収集した情報を自分で再構成する知的作業が伴う→自己実現の価値を有する

さらに、開放エリアは伝統的PFともいえるので、権利の重要性高まる

・制約の強度

今回の規制が表現内容規制なのか表現内容中立規制なのか

開放エリアにおける不適切衣装の着用を一律に禁じる(案3Ⅰ)→衣装の内容にかかわらない、表現内容中立規制

→LRA

⑷個別具体的検討

3 有料エリアにおける規制

⑴ 同じく21Ⅰに反しないかが問題

⑵ 保障、制約はほぼ同じ

⑶ 判断枠組み

・権利の重要性

有料エリアは、入場料を払えばだれでも入れる点で駅構内に類似した空間といえる+パブリックフォーラムである無料エリアと隣接しており、利用者層こそ異なるが公園としての利用形態が著しく異なるわけではない→同様に重要と考えてよい(現場思考)

・制約の強度

不適切衣装の着用を原則禁じる+許可にあたっては衣装の内容を審査する(案3Ⅱ、Ⅲ)→衣装が伝達する内容に着目した規制、すなわち表現内容着目規制

→厳格審査基準

⑷個別具体的検討

第2 集団利用に対する規制

1 

⑴コスプレ集会も「集会」にあたり、21Ⅰで保障される

⑵案4Ⅰはコスプレ集会を原則として禁止しているので、上記行為の自由を制約している

⑶判断枠組み

問題点①:コスプレ集会をする自由が重要な権利といえるか?言い換えれば、成田新法事件の示した保障根拠がどこまで妥当するのか

コスプレ集会に民主政の一過程を担う側面はなく、重要ではないとの反論が想定される

判例:①集会は国民が様々な情報意見に接することで自己の思想や人格を形成発展させることに資する

   ②集会は相互に意見や情報を伝達し交流する場として重要

事案:①各人が自分で再構成した情報を見せ合い表現することで、自己の思想や人格の形成発展に資する

   ②劇中シーンの再現は複数人のコスプレイヤーによって成立することもある→本件公園でのコスプレ集会は、コスプレイヤーが相互に意見や情報をやり取りする場として重要

→重要な権利といえる

⑴案4Ⅲが「正当な理由」のある場合に限り不許可に出来るとしているところ、重要な権利に対し許可制という強度の制約を課していることに照らし、集団利用に対する規制を憲法21Ⅰに反しないように運用するには、かかる「正当な理由」について厳格に解釈すべきである

泉佐野市民会館事件判決は同様の規定を定めた条例につき厳格な解釈を採ったが、判例は他の者の立ち入りが制限される屋内において行われる政治集会に関する事例であった 

今回の事例は、他の者が出入りしうる屋外で行われるものであるし、内容もコスプレをして劇中シーンの再現などをするもの

→管理権との調整を図る必要性が判例の事案に比べて高い+コスプレ集会を行う自由も重要な権利ではあるが、自己統治の価値を有する政治的集会には劣る

判例よりは緩やかに解釈すべき。

具体的には、「正当な理由」とは、コスプレ集会を保障することの重要性よりも、それによって公園を利用する者の心理的平穏や子供の健全な発達が害される危険を回避する必要性が優越する場合を言うと解する そして、ここにいう危険とは、具体的なものであって危険の発生が客観的事実から相当の蓋然性をもって予測されるものをいう                                                

                                    以上

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

行政法

判例をスクラップにして事実いじって出した感じでした。ローの期末レポートそっくり。論述例と解説は分かりやすかったです。ただここまでストレートな出題はないかと...

TKC...というか伊藤塾行政法の答練系結構強いんですよね。

 

3.民事系

民法

出題予想としてなかなか狙っているなあ、という問題でした。出題も近時の本試に近い。JR東海事件は今年の設問3のダークホースなんじゃないかと思っています。

論述例・解説共に文句は特になかったです。

 

⑵商法

事業譲受人に対する債務履行請求は、過去にコンプリ答練とかでも出ていました。正直本試で出すのか分かりませんが、演習題材としては助かりました。他の設問は差し障りのない感じでしたね。428Ⅱによる適用除外が会社を代表して直接取引をした取締役にも適用されるか、という話はリークエでもあっさりとしか載っておらず、完全に盲点でした。

 

民事訴訟

所有権確認の訴えの請求原因事実を前提にして考えさせるのはびっくりしました。釈明義務も正面からは久しく聞かれてないので、しっかり復習しました。

…が、設問3は良問とはいえないんじゃないでしょうか。

前訴で釈明義務違反があったことを前提に、「前訴確定判決の既判力が後訴に作用しないとの立論をせよ」という問いでした。

私の理解ですが、既判力って⑴作用する場面か(訴訟物を比較検討する)⑵作用するとして何に生じるか(範囲を検討する)⑶範囲内の事項について前訴確定判決の既判力が後訴でどう作用するか(積極的作用・消極的作用を検討する)という3つのレベルで検討する事項があります。

上の問いって、⑴の問題であるようにも⑵の問題であるようにも取れませんかね?仮に⑴だとすると、まさしく114Ⅰの原則をひっくり返す話なので、もはや再審の方に話が近づきます(理論的には相当厳格に検討する必要があるんじゃないでしょうか)。⑵は良くある話ですが、問題文からはイマイチ当事者の主張が分かりません。自分の答案では混乱して結局ぼかして書きましたが、ここに関しては「悪くない論証です」「検討はきちんとできています」との指摘しかなく、模試の論述例を読んでもどのレベルで話をしているのか分かりませんでした。あんまり気にしすぎない方が良いのかもしれませんね。

あと過去問を見ていて思うんですが、既判力の縮減ってちょっと乱暴な議論じゃありませんか?

指示に従うだけなら、既判力及ぶ場合の不都合性指摘して、既判力の正当化根拠書いて、今回妥当しないこと書いて終わりです。でも、既判力の範囲(ないし作用場面)を不文の規律でぐにゃぐにゃ動かしたら114条の意義が薄れるし、処分権主義との関係でも問題になるんじゃないでしょうか。自分はいっつもこの手の議論がきた時信義則で保護すればいいんじゃないの、と思っています。まあ、聞かれた以上は書きますが…。

色々書きましたが、要は「こすられまくってるところを聞くなら、問いはもう少し具体的にしてほしいなと思った」ってことです。

 

4.刑事系

⑴刑法

設問1は令和元年重判掲載の偽計業務妨害事例、設問2は過剰防衛の量的過剰と共同正犯、設問3は設問2の結論を変える構成を考えさせる問題。

個人的に今回の模試で一番作問が悪いと感じたのは刑法です。

設問1は令和元年重判の事例(名古屋地裁金沢支部平30.10.30)をもとに作られてますが、重判読んでないんじゃ?と思わざるを得ませんでした。

この重判の判旨と解説を読めば、「妨害された「業務」はどれか」について論じたものであることはすぐわかります(「偽計業務妨害の対象業務は、飽くまで、被告人の本件行為がなければ遂行されたはずの…刑事当直等の業務をいうのであり、…被告人の任意同行、取調べ等の本件捜査ではない」という判示)。

これを前提にすると、➀偽計業務妨害罪の「業務」に権力的公務を含むか(偽計は強制力で排除できないため、本罪との関係では権力的公務も「業務」に含まれる、と解する見解があります)という見解分岐がまずあります。そして、➁「業務」には権力的公務を含まないと解した場合、今回妨害された業務が職質等の権力的公務であると考えるなら本罪は不成立、宿直等非権力的公務が害されたといえるなら本罪は成立ということになります。③そこで、以下裁判例の判示に即して今回害される(危険が生じた)「業務」について厚く論じる…という流れになるはずです(裁判例がこういう流れで検討しています)。私は、この流れで答案を書きました。

一方、模試の答案例では、「業務」について権力的公務以外の公務も含むというお決まりの論証だけ貼り付け、あっさりと非権力的公務が害されたと認定。そして、「妨害」のところで偽計業務妨害罪が抽象的危険犯か侵害犯かという論点を大展開。ここで犯罪の成否を分けています。対立しているわりに書けることはないので、当然、分量も少ないです。

この"題意"をくみ取れなかった結果、答案はなかなか酷い点数になりました。

偽計業務妨害罪の性質を聞きたいなら、この裁判例を持ってくる必要が全くありません。なぜこのような論述例にしたのか作成者に聞いてみたいところですね。

 

設問2は、第1暴行について新しい「急迫」性の判断基準を踏まえて共同正犯・正当防衛の成否を論じさせ、第2暴行について共謀の射程と因果関係を問い、付加的に死体遺棄の主観で傷害致死を実現した場合の処理を求めるもの。

侵害の「急迫」性自体はホットなので予想通りの出題でしたが、共同正犯や抽象的事実の錯誤も絡まっててなかなか重い問題でした。

第1行為について、論述例をみると傷害致死に問疑していますが、Cが気絶したのは第2行為なので適切ではないんじゃないでしょうか(第1暴行では鼻折ってるだけです。第1暴行で検討するにしても、Dの第2行為・甲の運搬/遺棄行為が介在しており、かつそれが死亡に大きく寄与しているので因果関係が否定されると思います)。

あとは、正当防衛の検討における「急迫」性のあてはめが雑な感じしますね。事実を羅列しているだけです。たしかに、新判例って考慮要素がかなり具体的で、規範に対応した評価を改めてする必要があるか?という気はします。しかし、規範定立の段階で論述例も使っている「緊急状況」性を基礎づける、とかワンクッションを挟んだ方がより説得的ではないでしょうか。

第2行為については、最判平6.12.6を用いて甲も罪責を負うか検討する必要があります。私はこの判例を十分に理解しておらず、専ら共謀の射程に位置づけられるものかと思っていましたが、そうではないんですね。規範を判例が出している以上、それに即して書かなくちゃいけないなと痛感しました。

砂末吸引のオチはお決まりなんですが、死体遺棄罪(190条)の規定探すのに時間をとられ、過失致死まで書く時間がなくなってしまいました。反省。

 

設問3は、設問2で第1行為に正当防衛が成立することを前提に、甲がなお傷害罪の共同正犯を負う(つまりDの第2行為について共同正犯として責任を負う)構成を検討せよというもの。

設問2で判例の出した規範の理論的位置づけが複数あるにもかかわらず、ある1つの見解に立たないと題意に沿って解くことが出来ないという悪問です。本試と異なり、1つしか道が許されていないのが致命的。問題設計自体がおかしいという意味では設問1より酷いかもしれません。

正当防衛後の追撃行為につき、正当防衛にしか関与していない者が共同正犯として責任を負うかは、➀共犯関係からの離脱があったかで処理するアプローチと、②共謀の射程が及んでいたかで処理するアプローチとがあります(解説・答案例は個々の分岐自体を放棄していると思います)。

前掲判例の判示を読む限り、「共同意思から離脱したかどうかではなく」と言っているので、②の方が判例に親和的な気もします。

しかし、新たな共謀があったと評価できる事実のない本問では、設問2での検討と事実評価を変えることによってしか共謀の射程が及んでいたということができません。つまり、②の立場でいくと殆ど書くことがなく、点数がもらえないわけです。

➀の立場にたてば、様々な判例の出した基準に従って離脱の有無を検討することになりますが、本問と同様の事例下で解消が認められることはまずないと思いますので、共同正犯の成立を肯定することは容易です(Dの行為を止めていないといった事情をふんだんに使えます)。もっとも、少なくとも前掲判示の文言とは真っ向から対立する処理なので、一言くらい理由がないと矛盾論述になってしまうと思うのですが、答案例・解説では一切の理由付けがありませんでした(今年の採点実感曰く、違う見解を紹介する場合に他説批判や理由付けは必要ないとのことなので、それを踏まえているのかもしれません。が、判例の規範を設問2で使っておいて平然と共犯関係からの離脱として論じるのは流石に矛盾記述と評価されると思います)。

まとめると、設問3は判例と親和的とは思われない特定の見解にたった場合に点が高くなる設計になっています(普段とっている見解と異なる立場からの立論を求められることもありうると考えてこのような出題にしているそうですが、作問者側がその要請に十分応えられていません)。

 

刑事訴訟法

設問1小問1は、➀おとり捜査の適法性に関する一般論②重大な違法のあるおとり捜査により公訴提起された場合に裁判所が採るべき措置③重大な違法のあるおとり捜査によって得られた証拠の証拠能力について問うものでした。おとり捜査は長い間出題がありませんし、任意処分の限界を超えて収集された証拠の証拠能力については確立した判例がありません。怪しいから確認しておこう、という主旨でしょうね。

➀について

自分はおとり捜査の適法性判断基準について、総合衡量で判断する立場を採用しています。論述例も同様の立場に立っているようです(なお、有名な最決平16.7.12は「少なくとも」の留保がついているため、判断基準としての汎用性はありません。が、さも一般的な要件として使っている答案や論証例が多いように思います)。

なお、添削者いわく「おとり捜査の適法性に関しては独自の判断枠組みでなく判例に従ったものを書きましょう」とのことでした。独自...?そして判例とはどの判例を指しているんでしょうか…。一般的に使える判例規範があるなら是非知りたいところです。これで平成16年決定とか言われたらがっかりしますが。

➁について

裁判所が違法の宣言をしないと将来の違法捜査抑止につながらんしなあと思って公訴棄却判決をすべきと書きました。違法の宣言、といっておきながら何に違反するのか書けていませんでした。適正手続の要請(憲法31条)に違反する、など示した方が良かったです。リークエ第2版の278頁に載っていました。

③について

重大な違法性を有するおとり捜査によって収集された証拠の証拠能力に関しては定説がないので、リーディングケースである昭和53年判決の枠組みを修正するか、同じ枠組みの中でうまく説明をつけるかのどちらかによることになると思います。

最大の障壁は、判例が「令状主義の精神を没却する」と修飾して違法の重大性要件を加重している部分ですね。仮にそのまま規範を使った場合、おとり捜査により収集された証拠を違法収集証拠排除法則により排除する余地はなくなります(任意処分には令状主義が妥当しないからです。実際、任意処分の違法を理由に物的証拠を排除した実例は存在しません)。

この結論が妥当でないとするなら、判断枠組みを修正する必要があります。加重機能を殺すわけにはいきませんから、自白法則・違法排除説にならって「憲法刑事訴訟法の所期する基本原則を没却するような重大な違法」とでもするのがいいでしょうか。

もう一つのアプローチとしては、前掲判決の枠組みを維持しつつ、おとり捜査にも妥当すると解することが考えられます。

前掲平成16年決定調査官解説では、「司法の廉潔性を維持するという思想はおとり捜査にも妥当するはずであるから、おとり捜査が(違法収集証拠)排除法則の適用される一場面となることは自然の成り行きといえよう」との指摘がされています(解説286-287頁)。

また、おとり捜査ではなくなりすまし捜査についての見解ではありますが、「なりすまし捜査から現行犯逮捕を経て差押えへと至る一連の証拠収集過程」を観察して、令状主義の精神を没却する重大な違法がある場合には違法収集証拠排除法則が適用される、との構成も考えられます(葛野尋之「なりすまし捜査の違法性と収集証拠の許容性」法律時報90.5.146-147)。

私は判例の規範を示しつつも、なるべくそのままの規範で説明することにし、葛野先生の見解を採りました。何で一般的ではないものを書いたのか、と言われそうですが、ローの演習ゼミで扱ったからです。

すると添削者からは「任意処分には令状主義の精神は妥当しないのではありませんか?」との指摘が。いやそれはわかってますよ…答案にもその旨書いてあるんですけどね。ちなみに参考答案では、「令状主義の精神を没却する」との記載部分に指摘・減点はありませんでした。採点者の違いですかね。

論述例はどう書いてるんだろうか、と思ったら、昭和53年判例の「令状主義の精神を没却する」を削って終わり。これだと判例の理解(要件を加重している部分)を示していることにもならないので自分のより酷いのでは…?参考答案にも論述例と同じように書いているものがありましたが、意図的に加重部分を抜いたのかは不明です。

設問1小問2は自ら書いたおとり捜査の適法性の判断基準に従いあてはめるだけなので割愛。

設問2は捜査報告書の証拠能力を問うもの。こすられまくった伝聞の問題です。本試に倣ったのか「複数の要証事実を想定」せよとありますが、立証趣旨がないのって実務的にあり得ない設定じゃないですかね…でもとにかく考えるしかありません。

捜査報告書の伝聞証拠該当性・適用される伝聞例外規定への言及はお約束。

…と思ったのですが、私の答案はここの段階で減点されており、見ると「伝聞証拠の定義は正確に押さえましょう」とありました。

私の書いた伝聞証拠の定義は、「公判外の供述を内容とする供述又は書面で、要証事実との関係で供述内容・記載内容が真実であることの証明に用いられるもの」です。添削者はこのうち下線部分を修正し、「の真実性が問題になるもの」と書き直し、2点減点していました。

私の書いた定義はおおむねリークエと同じですし、ローでも減点・指摘されたことはありません。添削者は「内容が真実であることの証明に用いられる」=「真実性が問題になる」という関係を理解していないと思われます。

一番問題になるのは、捜査報告書に添付されているラインのスクショ部分。ここにある会話部分は伝聞証拠にあたり、別途伝聞例外の検討を要するのか検討することになります。

前述の通りなぜか立証趣旨の言及がありませんので、争点になっている部分から要証事実を考えていきます。

乙は犯行への関与を否認しているので、まずはスクショ部分を乙の犯人性の立証に用いることが考えられるはずです。つまり、スクショ部分の会話の存在及び内容が証明できれば、20日に甲が大麻1包を所持していた事実、及び乙方から大麻が発見された事実と併せて、乙の犯行への関与、すなわち乙が大麻を保管していた事実が推認できます。この場合はラインの会話内容の真実性を証明するために会話部分を用いるわけではありませんから、伝聞証拠にはあたりません。

添削者は「甲に関与していたというだけでは犯人性が推認できません」と指摘していました。私の答案では客観的事実との合致を所与の前提としてしまっていたため、手痛いミスです。

問題は、もう一つ要証事実を考えなければならないこと。他に思いついたのが故意の立証だけだったので、故意があったことが要証事実だ!と思いました。

しかし、この検討は間違っていました。まず、故意があったことが要証事実とした場合、少なくとも会話内容から乙の故意が証明できなければなりませんが、残念ながら乙は「うん」「うるさい」しか言っておらず、乙の故意を証明できるだけの自然的関連性がありません。

再整理すると、乙の故意を立証するために、スクショの会話部分を要証事実とすることになります。この場合、会話の存在及び内容から乙が甲から受け取ったチョコを少なくとも違法薬物と認識していたことが推認できるので、やはり非伝聞になります。

しかし、下線部を見ていただくと分かる通り、要証事実はいずれも「会話の存在及び内容」です。要証事実を複数想定するという問いに応えられていないことになります。

論述例では、「甲が乙に大麻樹脂を預けたこと」と、「チャット履歴の存在及び内容」となっていました。前者の場合スクショ部分を甲の会話内容が真実であることの証明に用いるので伝聞証拠にあたり、甲は供述不能ではないので伝聞例外の要件をみたしません。一方、後者の場合は会話の存在自体から乙の犯人性を推認できるので非伝聞になります。

複数の要証事実を想定することが求められている問題では、争点に照らして証明・推認したい事実を考えた後、その推認過程の中で当該証拠はいかなる事実を「証明」できるのか慎重に考えねばなりませんね。本試一か月前になって今更何を言ってるんだ、と自分にがっかりしますが笑。

設問3は、反対尋問を経ない公判供述の証拠能力という、今まで問われたことがない論点が問われました。模試では以下のような記述をしました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

公判供述について、反対尋問を経なかった場合は憲法37Ⅱとの関係で問題が生じる。

ある見解は反対審問権を保障する見地から一切証拠能力を認めないとするが、伝聞証拠でも反対尋問に代わる正確性の保障がある場合には証拠能力が認められるのだから(322-324)、これと平仄を合わせるべき。

→具体的事情に照らし、正確性の保障があったといえるから証拠能力あり。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

問題点として、まず伝聞証拠に該当しないことの言及がありません。設問2で伝聞証拠の定義を公判廷での反対尋問を経ない供述としていた場合、Aの証言は伝聞証拠にあたるので反対審問権の話など無関係に伝聞例外の検討をすればいいだけです。一方、大多数が採用していると思われる前述した定義にあてはめると、伝聞証拠ではないので証拠能力が認められそう、という話になり、固有の論証を展開することになります。

第2の問題点は、固有の論証を忘れており、伝聞例外の規定の準用に近いことを述べているにとどまることですね。自分の用意していた立場が証拠能力完全否定説で、肯定する見解の書き方を押さえていなかったことが原因です。問題文は明らかに伝聞例外らしき事情を検討して欲しそうでしたから(A死んでますし)、ええ!?と思って焦ってでっち上げました。

解説を見る限り、完全否定説はそもそもあるのかも怪しいですね笑 なんで自説にしていたのか分かりません。これを機に自説を改め、きっちり復習しようと思います。本番じゃなくて良かった…。

 

第2 今後受験される方へ

総括すると、TKC模試は

➀科目間で問題の質に差がある

②各論証・あてはめは微妙(伊藤塾に依拠していると思うが、自分が知っている伊藤塾の論証の劣化版が使われていることがままある)

③採点者の実力に大きく左右される

という3つの特徴を有しています。今後模試を受験される方は、以下の点を留意されると良いかと思います。

■受験に際して

・ピーキングの練習にする

・中日を含む5日間の過ごし方を確認する

・時間配分を意識する

■答案返却・復習に際して

・採点方法が本試と違う以上、論文の素点や調整後の得点を気にし過ぎない(これは僻み抜きです 高得点に越したことはありませんが)

・採点者の実力はわからないので、その影響が小さいと考えられる事実のあてはめで点を取れているか/定型的な論証で点を取れているかを重視する

 

                                     以上