One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

本試平成18年憲法(LO型に改題) 構成メモ

 

 最終調整段階にあって一番の課題が憲法で、現在時間不足を解消するために色々と試行錯誤しているところです。今回はH18をLO型に改題し、改善点を洗い出す形で構成の練習をしました。

改題は以下の通りで、争訟性を前提としないものにしました。これに伴い、訴訟選択や国賠・損失補償に関する論点、法律施行後に関する事実は削除しています。

【設問(改題) T社及び立案担当者から相談を受けた弁護士の立場にたって、警告表示法の憲法適合性を論じなさい。必要に応じて、判例や異なる立場にも言及すること。】

復習にあたっては、以下の「憲法ガール remake edition」を参考にしました。

 

憲法ガール Remake Edition

憲法ガール Remake Edition

  • 作者:大島 義則
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本
 

 

 

1. 雑感

元々の出題では三者対立型で訴訟選択・国賠訴訟・損失補償も論じさせるので、極めて分量が多い。各人権に関する検討が薄くなるので、正直良い問題ではないと思う。

問題となるのは、消極的表現の自由・営業の自由・財産権。他にも喫煙の自由や購入者の情報受領権、刑罰法規の明確性など書こうと思えばいくらでも出てくるが、特に問題になる点について厚く論じるのが大事(自分はこれが出来ていない。問題点抽出後、何についてフォーカスするかもう少し慎重になりたい)。

以下は箇条書きで思ったことを書いておく。

・消極的表現の自由については、保障段階で判例を想起するのが難しい。というか無理だった。

・通常人からみても表現主体が製造業者だとは思わないから表現の自由の問題じゃない、というのは言われてみればその通りである。

・特定警告文のうちオだけは違憲になると考えた時、どのように摘示するのが適切か分からなかった。

・按摩師等法違反事件や国有農地特措法事件など、判旨をしっかり理解できていないものが多い。これも時間ロスにつながっている。

 

 

2. 構成メモ

 


⑴ 一般警告文及び特別警告文の表示を義務付ける旨定める警告表示法3条1項、4条、5条(以下、「本件規定」とする)は、たばこ製造業者が自己と異なる見解をパッケージに表示しない自由を侵害し憲法21条1項に違反しないか
⑵ 消極的表現の自由が保障されるか
(サンケイ新聞事件参照)
⑶ もっとも、上記自由に対する制約がない
確かに、5条は特定の見解を表示するように強制するものである 
しかし、通常人は政府が表示主体であると認識するはずだから、自己と異なる見解の表示を不特定多数人に強制される場面とはいえない
⑷ したがって、本件規定はたばこ製造業者の消極的表現を侵害するものではない

⑴ では、本件規定は、たばこ製造業者が包装について自由に表現内容を決定する自由を侵害し、21条1項に違反しないか
⑵ たばこの箱の包装→広告スペースであり、そのデザインを決定する自由は表現の自由として21条1項で保障される
 ここで、営利的表現は民主的政治過程に直接かかわる情報の伝達を含まないため自己実現の価値に乏しいことから、表現の自由としてではなく営業の自由の一環として保障されるに過ぎないとの見解がある
 しかし、営利的表現は多様な情報の流通を確保することで、受け手である消費者が自律的に判断することを支援するものであるから、消費者の知る権利に資する したがって、知る権利を実質的に保障する見地から、営利的表現の自由についても表現の自由として保障されると解する
⑶ 営利的表現に対する規制について、必要かつ合理的なものであれば憲法適合性が認められるとした判例がある(按摩師等法違反事件参照)
確かに、表現された情報の真偽は消費者が客観的に判断することができるため、営利的表現に対する規制が恣意的になる恐れは低いから、憲法適合性はこの判例に従い緩やかに審査すべきとも思える
しかし、3条1項、4条、5条は特定の見解を表示するように強制するものであるから、表現内容規制と同等の強度を有する制約であり事案が異なる
 そこで、規制の目的が重要で、当該目的を達成するより制限的でない手段が他に存在しないといえる場合に限り合憲と解する
⑷ 消費者に対したばこのリスクに関する客観的な情報を提供することで、生命身体の安全を守るという目的は重要
 一般警告文・特別警告文は、喫煙が喫煙者及び周囲の者にもたらす健康上のリスクについて客観的事実に対する評価を述べるもの→タバコ購入数を抑制することが見込まれるので、目的との関連性は認められる
 たばこの危険性の認知度についてみると肺がんのリスクに関する認知度は高いが、心臓病や脳卒中のリスクについてはいずれも半数を下回るほか、依存性についても約半数が認識しているにとどまる→タバコの包装部分を用いて情報を提供する必要性は高い
一般警告文及び特別警告文(5条1項ア~エ)は、客観的事実への評価を述べるにとどまる スペースとの関係である程度端的な表現にする必要があるから、これ以上制限的でない方法はないといえる
ただし、オについては事実に対する評価ではなく、情報提供を超えて消費者に対する意思決定に介入するものであり必要性及び最小限度性を欠く
⑸ 以上より、本件規定のうち5条1項オは21条1項に反する 他は反しない

⑴本件規定はたばこの販売事業に影響を与える点で販売業者の営業の自由を侵害し22条1項に反しないか
⑵営業の自由の保障
(小売市場事件参照)
⑶警告表示の強制は消極目的であるから、その名目の下濫用的な規制が行われる危険性がある
→規制が目的達成のために必要かつ合理的といえる場合に限り22条1項に反しないと解する
⑷目的は2⑷で述べた通りであり、重要
 手段について、消費者のリスク認知度の低さ・端的な表現の必要性から、警告文を表示させる必要性は認められる
 しかし、消費者への情報提供を超えた意思決定への介入まですることによって、たばこ販売業者が損害を被るのは合理性を欠くといえる
 したがって、営業の自由に対する制約は必要かつ合理的とはいえない
⑸ 以上より、本件規定のうち5条1項オは22条1項にも反する 他は反しない

⑴ 警告表示法には経過措置が定められていないが、これは在庫につき処分方法を制限する点でたばこの製造販売業者の財産権を侵害し29条2項に反しないか
⑵ 所有する財産の処分権は29条1項で保障されるところ、経過措置がないことによって製造販売業者は処分権を制約されている
⑶ 29Ⅱは法律により財産権の内容を事後的に変更することをも予定しているから、抽象的な財産権の制約に過ぎない場合は諸般の事情を総合的に勘案し、事後的変更による制約が合理的である限り合憲となる(国有農地特措法事件参照)
しかし、警告表示法3条3項、4項、9条は同法の規定に違反する在庫について販売を認めず、回収・廃棄の対象としているため、製造販売業者は自社在庫に関する処分権という抽象的な権利のみならず、すでに販売したたばこについても回収を余儀なくされる形で既存の売買契約による処分権をも遡及的に剥奪されている しかも罰則が設けられているので(10条以下)、その制約は強度
判例とは事案を異にし、憲法適合性は厳格に判断される 具体的には、目的が重要で手段と目的との間に実質的関連性が認められる場合にのみ合憲と解する
⑷3条3項、4項を制定するに際し経過措置を設けなかったのは、規定されている表示のないたばこが販売されることにより消費者に健康上の危険が生じることを防止するためと考えられる しかし、そのような危険が切迫している事情は存しない したがって、抽象的な危険を想定して経過措置を設けないことが重要な目的ということはできない
 また、たばこのリスクに関する情報を消費者に提供するという公共の利益は実現され得るが、それに比して在庫の処分権が遡及的に剥奪されるという不利益はあまりに過大であり、手段としての相当性を欠く
よって、目的と手段との間に実質的関連性は認められない
⑸ 以上より、警告表示法に経過措置が定められていないことは29条2項に違反する
                                    以上