One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

75期司法修習日誌①~合格から修習開始まで~

はじめに

 令和4年度司法試験に合格された皆様、合格おめでとうございます。

 この記事は、76期司法修習生となる方への情報提供もかねて、75期司法修習を集合修習まで終えた今の感想を綴るものです。修習生に向けて発送される資料で形式的な面は大体分かるので、総論は簡潔にして実際の経験メインで書いていきます。

 

 ①総論、②導入修習、③~⑥分野別実務修習4クール分、⑦集合修習の7記事構成になる予定です。導入修習・集合修習がオンラインだった点は76期と異なるので、その点はご了承ください。

 なお、修習中に気になって調べた論点に関しては別記事で整理します。

 ①の本記事では、以下の3つのトピックをお話しします。

・全体のカリキュラム

・修習地の決定

・修習までにすべき勉強

特に重要で、合格者の方が気にされているのは下2つだと思いますので、そちらだけ読んでいただいても大丈夫です。

 

 

1 全体のカリキュラム

 司法修習のカリキュラムは以下の⑴~⑷のとおりです。ただし、⑶⑷はA班の順で、修習地によってB班となった修習生は、順番が逆になります。

⑴ 導入修習

 導入修習は、1か月弱で、分野別実務修習に向けたインプットを行う期間となります。合格発表から修習開始までに鈍った?頭を叩き起こす機会でもあります。

 司法試験の内容と実務の内容はステップが異なるため、頭を切り替える必要があります。正直に言って余裕のあるカリキュラムではありません。

 各論記事で詳述しますが、個人的には修習において非常に重要な期間と考えています。

⑵ 分野別実務修習

 修習のメインです。裁判所、検察庁、法律事務所に赴いて、実務を学ぶことになります。8か月を占めるので結構長い…と思いがちですが、土日等を含めるとその期間はあっという間です。

 各修習の特徴は以下の通りです。

ア 民事裁判修習

 民事訴訟手続を傍聴し、主張分析や事実認定を学びます。弁論準備手続や和解といった非公開の手続にも同席できるのが大きな特徴です。扱う分野が相当幅広く、飽きることがありません。傍聴と起案が中心のクールとなります。

イ 刑事裁判修習

 刑事訴訟手続を傍聴し、争点・証拠の整理や事実認定を学びます。適正手続の要請が強い関係上、民事裁判の場合より手続面を重視しています(模擬裁判もあります)。また、大規模庁では裁判員裁判の評議を傍聴できることが多いです。家庭裁判所修習や模擬裁判もあるため、非常に忙しいクールです。

ウ 検察修習

 他の修習と異なる点が多い特徴的なクールです。①唯一、自身が主体的に動くことができます(動くことを求められます)。実際に事件を配点され、捜査指揮をし、取調べを行って、終局処分の決裁を得ます。「模擬」ではなく本当に事件処理をしますので、経験もまた深いものとなります。②同じ班の修習生全員と一緒に過ごす期間が最も長く、仲良くなる格好の機会といえます。

エ 弁護修習

 配属先の法律事務所にお邪魔して、指導担当弁護士の下で様々な書面の起案や期日への同行、接見同行を行います。指導担当によって実施する内容が異なること、修習生の監督を行うのが弁護士会でやや独立色が強いことから、最も自由度の高いクールといえるかもしれません。

⑶ 集合修習

 分野別実務修習(B班は選択修習も含む)を踏まえて、各分野の素養をまとめて仕上げていく期間です。もっぱら起案中心で、全て評価の対象となり、その合間にはグループごとの実技演習と起案の講評が続くという、なかなかハードな修習になります。

⑷ 選択修習

 選択修習は、個人が自分のやりたいカリキュラムを選択して修習を行う期間です。裁判所の専門部及び集中部並びに家庭裁判所検察庁、法律事務所のほか、全国の法テラスや民間企業で修習ができます。実務修習の延長版ともいえるでしょう。

2 修習地の決定

 1に記載した実務修習は、修習生が配属される修習地において実施されます。

 修習地の決定は、修習生採用選考申込者が最大6つの希望地を希望順に書き、それを司法研修所が特殊事情(通院、介護、配偶者や子の同居)にも鑑みて割り振ることにより行われます。修習地は、北は旭川から南は那覇まで全国にあるので、悩む方も多いことでしょう。

⑴ 選択のルールがある

 資料にも書いてあることですが、修習地の希望にはルールがあります。

 まず、大都市近郊の修習地は「第1群」に属し、2つまでしか書けません。東京、大阪、横浜というように、3つの大都市近郊修習地を希望することはできないわけです。

 また、6個希望する場合は「第3群」(いわゆる地方都市)も含んでいる必要があ   

ります。 

⑵ タイプ別の希望傾向

 周りの同期に聞くところの、タイプ別の希望傾向を書いてみました。

ア 観光地に行って楽しく過ごしたい!タイプ

 おそらく最大多数派。札幌・仙台・横浜・京都・神戸・福岡・那覇の7都市は特に人気が高いです。観光に行って遊びまくりたい、という典型的(?)な修習生のパターン。東京は枠も大きいので、それほど激戦にはなりません。ただし立川は枠が小さく、倍率はトップクラスとなっています。このタイプの修習生は、他の修習地希望をどうするか戦略を練る必要があります。

イ 地元(ないしゆかりのある土地)から通う!タイプ

 もともと都市圏の大学・ロースクールに通っており、就職先も同都市圏にある人に多く見られるタイプです。社会人経験のある方で家庭を持っている方も、移動を嫌って地元を希望される方をよく見ます。経費を節約し、修習給付金を最大限活用している方が多いです。また、新天地に来た修習生に頼られる立場になります。

⑶ 志望進路と修習地の関係

 修習地希望とは別に、進路の志望状況も最初の提出書類で記載することになります。 

 よく、「任官・任検志望者はどこどこに行った方がいい」という噂が出回っていることがありますが、修習地は選考とは無関係です。「修習地ごと」の任官任検枠というものは存在しないからです(志望先の偏りを修習地間で調整している可能性はありますが、いずれにせよどこに行っても志望倍率などはあまり変わりません)。

 進路志望に関する話はまた別の記事で書こうと思います。

⑷ 自分の感想

 私は、一度首都圏を離れてゆかりのある関西で過ごしたいと考え、希望地を関西・北陸・四国で固めたのですが、第3希望の大阪になりました。

 もっとも、結果から言えば大阪は非常に良い修習地であったと思います。

 修習面でいえば、どの方も非常に面倒見がよく、指導が手厚かったです。特に、大阪弁護士会はゼミを設けた実践的な演習の機会を設けてくださるなど、修習生の指導に非常に力を入れてくださっていると思いました。

 また、オフの面でいえば、近畿圏の観光が非常にしやすいので、観光したいタイプの方にもおすすめです。ごはんも安くておいしいですしね。自分は週末のタイミングを見つけてサイクリングに出かけたり、動物園や水族館に行ったりしてリフレッシュしていました。

3 おわりにー修習までにしておくべき勉強?

 いろいろ考えている方もいらっしゃいますが、時々思い出す程度に民法・刑法の実体的理解・両訴法の手続の流れを復習すれば十分です。余裕のある方は、要件事実を先に学習しておくと後々楽になっていくでしょう。個人的に、事実認定を先出しで学修するのはお勧めしません。司法研修所教官室の見解(白表紙)とずれると修正に余計な手間がかかるからです。

                                   以 上