One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

75期司法修習日誌②~導入修習~

1 導入修習とは

 導入修習とは、「導入」の名前の通り、裁判官・検察官・弁護士の各実務において必要となる基礎知識を叩き込み、実務修習への導入を行うカリキュラムです。期間は1か月少しと短いため、なかなか目まぐるしいスケジュールとなっています。

2 カリキュラムの概要

⑴ 総論

 まず留意していただきたいのは、「司法試験で問われることと修習で問われることは違う」ということです。

 司法試験は事実への法適用・解釈・評価の部分が重要でしたが、修習においては、証拠からある事実が認定できるか(事実認定)という部分が重要となります。事実認定については、言ってしまえば法律の領域の話ではありません。したがって、修習に先だって論証集を回すといった勉強は特段必要ないといえます。

 次に、導入修習のコンセプトですが、私は「崖から落としてうまく泳げないことを認識させ、どこを直せばよいか自覚してもらう」ものだと考えています。というのも、後述する事前課題も、即日起案も、最初からできるはずのないものばかりだからです。白表紙を読み込んで課題や起案に臨んでも、知識でっかちになって遠目で見ると説得力に乏しい、ということが起こり得ます。もしかすると、文章力に問題があったり、実体法や手続法の理解が怪しかったりすることもあるかもしれません。課題や起案を通してこれらの問題点を自覚し、実務修習で実際の事件に触れながら問題点を克服していってもらう、その機会として導入修習があるのでしょう。

⑵ 各論

 導入修習は、大きく分けると事前課題→講義→起案→講評の順で進みます。

 導入修習自体が始まる前の段階で、修習生には「紙爆弾」と称される段ボールが届きます。紙爆弾には、研修所作成のテキスト(以下、「白表紙」といいます)、導入中の起案で使う問題用記録、そして事前課題が入っています。

 事前課題は、その名の通り導入修習開始前までに取り組んでおかなければならないものです。これらは「導入始まるまでに一通り白表紙読んで概要掴んでおいてね」という研修所からのメッセージです。白表紙はいずれにせよ修習開始までに目を通すことになると思うので、読みながら事前課題を考えてみるというので良いと思います。

 導入の中心を占めるのは講義です。殆どは事前課題の解説で構成されますが、弁護士倫理や補充捜査に関する講義など、各分野固有の講義も実施されます。

 イメージとしては、ロースクールにおける双方向型授業に近い部分があります。教官が時々修習生を指名して、問答を行いながら話が進んでいきます。また、場合によっては修習生数名でのグループディスカッションを行うよう指示されることもあります。

 導入修習の比較的早い段階で、各科目の即日起案が実施されます。フルスケールではありませんが、形式は実務修習中の問研起案や集合修習における起案、そして二回試験と完全に共通しています。事前課題や講評で学んだことを活かして、修習での「起案」を体験しましょう。

 即日起案については、後日「講評」が行われます。問題の解説と併せて、修習生の起案に見られた問題点等を教官がお話しします。採点者による解説は実務修習以降の起案に直結するため、かなり重要です。

⑶ 私見

 導入修習は、全修習を通じて最も重要なカリキュラムだと考えています。その理由は、「『導入』ではあるが完結している」ことにあります。導入修習は全修習の骨格的な位置づけであり、実務修習は肉付けや修正、集合修習はその総仕上げを行うだけです。つまり、導入の段階が覚束ないと、後続の修習も効果が上がらなくなります。

 76期の修習生におかれましては、導入で「自分はどこに問題があるのか」を可視化し、実務修習に託せるようにしておくことに全力を尽くすことをお勧めします。

3 裁判官・検察官志望者の留意点

 導入段階では、教官は修習生の志望進路を把握することを行っています(修習採用選考申込みの段階でも希望度は記載するため、一応は把握しています)。志望する進路によって注力すべき点が変化することもあるので、既にJPで希望が固まっているのであればその旨教官に伝えておきましょう。1つに絞り切れていない場合も同様です。

                                   以 上