One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

予備試験論文式試験を突破する方法を考える(総論のみ)

こんにちは。

 

だいぶ前に、「予備試験短答式試験を突破する方法を考える」という記事を書きました。

それ以降自分自身の試験対策で手一杯となってしまっていましたが、一応落ち着いたということで論文式試験についても少しだけ書いておこうと思います。

 

といっても、具体的な方法論(各科目どの教材を使えばいいか等)はもっと優秀な方の情報をご参照頂ければ十分です。

この記事では、残り期間が僅かとなった予備試験論文式に向けて留意していただきたい総論的なことをまとめておきます。

 

1.得意を伸ばすより苦手をなくすことに注力すべき。

予備論文は、単体科目の爆発力よりも全体でのバランスが重要です(科目の満点が50だからです)。とにかく、平均以下を意味するD-Fをとらないようにする勉強を心がけてください。

最優先は、おそらく初めて臨むことになる法律実務基礎科目。次は苦手意識のある科目です。他の科目は、知識をいつでもリカバリーできる状態にしておけば大丈夫です。

 

2.最大公約数的な思考のリスクを把握する。

ネットで適当に検索をかければ、上位合格者の使用教材や勉強法がわんさか出てきます。そうすると、「みんなが言ってることの共通点だけ絞ってやれば最短合格ルートじゃないか?」という考えに至ります。この考えを「最大公約数的な思考」と定義することにします。

たしかに、選択と集中という方法論にかなった、非常にスマートでカッコイイ思考ではあります。しかし、デメリットを理解しないと芳しくない結果を生むことになります。

よく淘汰の対象になるのが百選・基本書・演習書・ローの授業ですが、なぜ合格者がそれを必要なかったと言っているのかをきちんと把握していますか?

大抵の場合、①その年の試験で役に立たなかった➁他の教材で既に目的を達していたというのが理由です(明示されているかは別として)。これらは、その方法論を発信している受験生にしかあてはまらないものです。

つまり、受験生の位置によって何が必要で何が不要かは全く違います(当たり前ですが)。最大公約数的な思考は、受験者の地位が抽象化されるためこの点がぼやけやすくなります。盲目的にこれに従って最初から切り捨てた場合、1で述べた穴を埋めることができないまま試験に臨むという状態になりかねません。自分の実力に自信があり、かつそれを裏付ける事実があって初めて意味のある思考方法といえます。

情報の質が上がった昨今、意識すべきはその情報の使い方でしょうね。

 

3.「復習」と「繰り返しやる」は違う。

法律実務基礎科目は勿論、他の科目についても演習書等を利用して論点の把握にいそしでおられることと思います。特に、テキストを繰り返しやることで試験に備える方が多いでしょう。

「繰り返しやる」とは、テキストを高速周回して1周ごとの記憶よりも繰り返した結果内容が記憶に定着することを狙うものです。インプットの王道ですね。

しかし、これは「復習」していることにはならないので気を付けてください。「復習」は、その日に自分が何を学んだか振り返り、次の日に前日学んだことを思い出す作業です。

「繰り返しやる」だけでは、記憶の定着に時間がかかりすぎ、可処分時間を無駄に使ってしまいます。

是非、毎日「繰り返しやる」ことの後に「復習」の作業を入れてください。目的達成に必要な時間は大分減るはずです。

 

「これまた当たり前のことを」と思うかもしれません。しかし、勉強計画をこなすことに専心している方ほどその日の「復習」を怠りやすい(私自身がそうです)。「繰り返しやる」のは、本来的には「また忘れるのが怖いから」であり、それは各周回での記憶作業から逃げていることのあらわれでもあります。

 勉強一般に関していえば間違った手法ではありませんが、準備期間の短い予備論文との関係では相性が良くありません。もしその日の振り返りをしていなかった場合は、布団に入ってからでも頭の中で「復習」をしてみてください。

 

4.答練を受けるなら目的をきちんと意識する。

過去問の蓄積に伴い、時間と費用のかかる答練の重要性は徐々に低下しています。答練の受講を考える場合は、何故答練を受けるのかきちんと考えましょう。

答練を受ける目的を挙げるならば、➀起案のペースを維持する②論点を覚えているか確認する③第三者に答案を見てもらう機会を確保する④自身の相対的位置を知る⑤未出題論点を把握する の4つでしょうか。

➀②の場合、答練を受ける必要はありません。特段の事情がない限り、自分自身で過去問を起案する機会を設けることはできるはずです。また、論点を書けたかどうかは論証集の確認によって自己添削できます。
③の場合、答練を受ける実益があります。独りよがりな答案になっていることの自覚が得られないまま本番を受けると恐ろしいことになるので、添削による修正の機会を設ける必要があるでしょう。もっとも、合格者に見てもらうなど代替の手段がとれる場合は不要です。

④の場合、苦手な科目が存在するときには答練を受ける実益があります。「苦手」が平均からどれだけ乖離しているのかを見るのに有益だからです。

⑤は、これだけが目的の場合は答練を受ける必要はないと思います。予備試験でBランク以下の論点が問われることは基本的にありませんので、それに準じる答練から新たな論点を把握できることは稀です。過去問と演習テキストで事足ります。

答練を受けなかったから落ちた、となることはまずありませんから、答練を受けるべきかは慎重に検討してみてください。

 

私から申し上げることができるのは以上の4点です。残り期間全力で頑張ってください。応援しています。

                                    以上

選択科目ー経済法のススメ

こんにちは。

 

この時期、選択科目をどれにするかをそろそろ考え始めている(ないし学習をはじめている)と思います。

今回は、経済法を選択することのメリット・デメリットを紹介いたします。

 

1 前提ーいつから準備を始めるべきか

はじめに、選択科目の準備は出来る限り早い段階からするべきということを述べておきます。

基本7科目の学習が重要であることは言うまでもありませんが、だからといって選択科目の学習を後回しにすると直前期に相当苦労します。早い段階で選択科目のインプット・アウトプットを終えておけば、直前期でも7科目と並行して調整が行えます。

選択科目は司法試験初日の1発目ですから、ここでかっちり守ることができれば精神的に安定して受験を続けることができます。選択科目には早い段階から着手しましょう。

 

2 経済法のメリット

⑴ 事前に準備すべき規範が少ない

行為類型が多くなく固有の論証は限られているため、事前に覚えなければならないものは他の科目に比べてもかなり少ないです。自分が本試験まで利用した自作のまとめノートも30頁前後しかありません。

⑵ 答案が定型的で書き方が覚えやすい

行為要件→効果要件/違法性阻却事由という決まった検討順序があるため、答案の型はすぐに押さえることができます。一通りの答案が書けるようになるまでにかかる時間は刑法よりも早いと思います。

⑶ 学習に要する費用が少ない

他の選択科目と一線を画すメリット。明快かつ網羅的、それでいてどのようなテキストよりも正確性は高く、無料。経済法にはそんな"壊れ資料"が存在します。公正取引委員会が公表・配布している各種のガイドラインです。本試験の出題趣旨や市販の基本書も、殆どガイドラインに従って記述されています。つまり、最強のテキストが無料配布されているのと変わらないのです。

極論をいえば、新しく用意する必要があるのは百選くらい。学習コストが極めて低く済むのは、経済法ならではの大きなメリットと言えるでしょう。

3 経済法のデメリット

⑴ 過去問に関する情報/テキストが少ない

上の⑶の裏返しとも言えますが、出版社が敢えてテキストを作成するメリットが乏しいためか、市販の過去問解説やテキストは他の科目に比べてかなり少ないです。そのため、過去問の復習や一元化ノートの作成には苦労すると思います。

辰巳の出している「1冊だけで経済法」が最有力ですが、26年度までしか過去問の掲載はなく再現答案の質も当時のレベルにとどまっているため、有用性は落ちつつあります。そして、プレミアがついており入手は困難になっています。

ここに関しては、経済法の過去問検討メモのアーカイブ化とあわせて、自作の経済法まとめノートを(限定的に)配信することも考えています。後者については現在ツイッターでアンケートを取って配信するかを検討中です。

⑵ 相対評価の影響が大きい

大体の受験生は一定のレベルの答案を書いてくるため、高得点の獲得は難しい一方で適用法条や固有の論証で書き負けると簡単に得点が下がります。点を取る、よりも失点しないようにすることが重要で、そういう意味ではプレッシャーのかかる科目といえます。

演習量がものを言うので、早期からの着手でしっかり基礎を固めておく必要があるでしょう。

⑶ 合わない人にはとことん合わない

刑法と憲法を足し合わせたような科目で、あてはめのウェイトが非常に大きいです。また、なされた行為に対する事後的評価のみならず、行為が今後市場にもたらす影響のような将来に向けた評価をすることも求められる点で、基本科目とは異なったあてはめが求められます。

割り切って考慮要素や良くあるシナリオを覚えれば、答案の作成は可能です。しかし「自分が納得しないと覚えられん!」という方にとっては、インプットがなかなか進まないため、とことん合わない科目になるでしょう。

 

以上のメリット・デメリットを勘案の上で、経済法を選択科目にするかを決めていただければと思います。

                                     以上

 

ブログの再構成について

こんいちは。

 

バイトへの復帰や就活などもあり純粋な休息期間は長くありませんが、その間に考えていたブログの再構成を実施します。以下、経緯と方針について。

 

1.再構成の経緯

⑴ 鮮度に影響されない情報だけ発信する方向にシフトしたい

優秀でない私がツイッターのアカウント(@15B716X)で質問箱をはじめたのは、一橋ローの受験情報があまりにも少なかったからです。

しかし、今では一橋ローの後輩が質問箱を開設するなどしてくれてある程度情報が増えていますし、予備や本試に関してもいろんな方が積極的に発信しておられます。なので、自分が情報発信をする必要性は低下したと考えています(実際、送られてくる質問も落ち着いてきています)。

また、自分は(合否はともかくとして)いったん受験勉強を終えてしまったので、持っている情報は今後どんどん時代遅れになっていきます。そうだとすれば、トレンドを追う受験情報発信は優秀で説明の上手い方にゆだね、あまり流動性のない情報に関してここで書き残すほうが情報のすみわけも出来て役に立てるはずです。

そこで、鮮度が影響しない情報をブログで発信する方向にシフトすることとしました。今後も来た質問にはお答えさせていただきますが、頻度は減ると思います。

⑵ ツイッターの司法試験受験界隈に疲れた

⑴に少し関連しますが、司法試験畑のツイッターに疲れたというのも発信をブログにシフトしようと考えた一つの理由です。

点数・順位という一回的な評価が過度に重視されており、小学生が母親に向かって「成績全部Aだった!すごいでしょ」とやることの延長線が大真面目に繰り広げられています。

苟も学歴との結びつきがあるので、受験生・経験者の承認欲求も強いのでしょう。プロフィール欄に試験の合否のみならず評価や順位まで上げている人が少なくない異質な環境です。

もちろん否定はしませんが、自分はこのような風潮が好きではない(あまり意味がないと考えている)ので、発信していてすこし疲れてしまいました。

⑶ ローのグーグルドライブが失効した

過去問検討のメモはローの学籍番号に対応して付与されるグーグルドライブに保管していたのですが、修了に伴い失効してしまいました。

パソコンの容量にも限度があるので、検討メモを未アップのものも含めてアーカイブ化する必要が生じました。

⑷ 閲覧者層に幅があることを知った

アクセス先の解析をしたところ、1番閲覧数が多いのは教材紹介の記事で、次に多いのは予備短答対策や一橋ロー対策の記事でした。他の記事の閲覧数は軒並み多くありませんでした。

つまり、このブログの閲覧者層は①受験自体を考えている方②受験勉強中の方③受験勉強終盤の方に分かれているようでした。

現在の記事は想定読者層であまり区別していないので、もう少し閲覧される方が自分に合った記事を探しやすいようにする必要があると感じました。

 

2.再構成の方針

⑴想定読者層を分けた記事の作成

カテゴリーA(入門レベル),カテゴリーB(初修者・中級者レベル),カテゴリーC(受験生後半レベル)の3つに分けて記事を整理します。

Cは「予備試験ってなに」というレベルのフランクな記事、Bは現状の教材紹介レベル、Aは過去問検討メモなどやや発展的な記事を想定しています。

⑵過去問検討メモのアーカイブ

PC内の本試過去問検討データを順次アップしてまいります。時期にあわせて、予備の口述再現等もアップします。

 

                                   以 上

 

 

 

R3司法試験を終えて (長文・問題内容言及なし)

 

お久しぶりです。

 

 

先日の12日から本日16日にかけて、司法試験を受験してまいりました。

 

大学2年で法律の道に歩みを進めてから4年、ついにここまで来たのかと感傷に浸らずにはいられません。今はホテルにいるのですが、今夜くらいは青臭くこれまでを振り返っていようと思います笑

 

この記事は、問題内容について出来などを振り返ることはせず、これから本試験・予備試験を受ける方に向けるメッセージとして、5日間本試を受けて思ったことをつらつら書き留めておくものです。何かの役に立つことを願います。

 

1.試験期間の過ごし方

・地方受験は身体的精神的に快適。

→仙台で受けましたが、トイレでの時間待ちや会場内での混雑はほぼありませんでした。会場内での雑談も皆無。遠征費も都心に比べると安く済むので、割とメリットの大きい選択だと思います。

※首都圏から移動するのは感染拡大状況如何ではリスクが伴いますので、慎重に検討してください。

 

・滞在するホテルは値段で妥協しない方が良い。

→贅沢する必要はありませんが、パフォーマンスを維持・発揮できる場所を選ぶべきです。特に大浴場・サウナは寝付きが非常に良くなるので、多少値が張っても大浴場・サウナのあるホテルを選ぶことをおすすめします。

 

 

SNSをみない。

→皆が「出来なかった」「難しかった」と嘆いているのを見て安心したいという気持ちもあるかもしれませんが、基本的にはノイズにしかなりません。そこにあるのは、会場で答え合わせをするような人たちの肩で風を切る発信がほとんどだからです。その時間は休息か勉強に充ててください。

 

2. 論文式試験

「1頁あたりにかかる”最速の”筆記時間」を把握しておくことが超重要。

正直これだけで1本記事が書けます。大事なのは「最速の」という部分です。

本番では、問題の内容や残り時間に合わせて出力を調整しなければなりません。その際には、「どれだけ速く書いても1頁書くには○分かかる」(minutes per page=「mpp」と呼んでいます)という基準が非常に重要になってきます。ここの基準が不明瞭なまま書き出すと、予想より時間を割いてしまうことなどによる形式的・実質的な途中答案のリスクが跳ね上がります。限界が分かることで、起案の枚数のコントロールや答案構成の精度・時間の調整など、とれる具体的な方策も定まります。

この基準を用いることができる、という観点からも、起案時はあてはめ、結論まで固めた答案構成をして一気に書ききるスタイルの方が個人的におすすめです。

「小手先じゃん、くだらない」と思ったあなたにこそやって欲しい。途中答案は知識の精度が高まる終盤ほど直面しやすい悩みだと思います(時間があれば全部書けるのに、という状態に近づくからです)。自分自身模試で実質的な途中答案を2,3通作ってしまい対策に悩んでいましたが、最後の調整期間になってこの基準を把握してから霧が晴れ、本番ではすべての科目できっちり書き終えることが出来ました。

 

・枚数は結果論。

予備で4枚、本試で8枚書ければ合格推定。この界隈で語り継がれる諺です。あまりに語り継がれた結果、8枚書くことが盲目的に肯定されるに至っているような気がします。

さきほど述べたmppの基準を考えると、8枚を目指すことのデメリットが良く分かります。

最も標準的な筆記速度は15mpp程度だと言われます(「1頁15分」という言葉は良く聞きますね)。本試験で15mppで書ききれる受験生が答案構成を30分行った場合、書ける上限は6枚になります。実際、受験生の答案の多くが5,6枚です。

ここから8枚を目指すとなると、①答案構成の時間を減らす②mppをあげる のいずれかをせざるを得なくなります。➀は読み方・構成のしかたを改める必要があるため、一定以上短くするのは相当難しいと思います。②は可読性とトレードオフの関係にありま、一朝一夕にはできません。実現するにしても12mppが限度になると思います。*1

このように、枚数を増やすのは非常に労力がかかるのです。一方で、紙をめくる回数が増えるだけ無駄な時間も生じますし、その労力により上昇する点数はあまり多くありません。

どのみち問われたことに答え切っているのなら、枚数は少ない方が良い。枚数はあくまで結果論です。普段の起案が、8枚を「目指す」という誤った方向を向かないようにしていただければと思います。

 

・論証を「書ける」ことは結局大事。

論証が「書ける」、というのは、「問題に対してどのように展開させるかまで手が覚えている状態」をいいます。論証単体を覚えて書けるということではありません。

本試験の直前に見直すのは論証集になると思いますが、論証だけ見直していると実際の問題で処理手順が分からず、起案時に引っかかりを感じやすくなります。

➀その論証は条文のどの文言/制度趣旨との問題ですか。

②要件を先出しにするか個別に検討するかを、想起した論証から区別できますか(=適用・要件論の問題なのか、要件解釈の問題なのか等区別できますか)。

③複数の論点を連続して展開するとき、論理的な順番をきちんと考えられますか。

 

各科目で一例をあげます。上の➀②③ができるかチェックしてみてください。

憲法:公金支出と政教分離原則

行政法:行政指導の継続を理由にした処分留保の違法性

民法:占有開始後に占有権原を喪失した者による留置権主張の可否

商法:事実上の取締役が429条1項の責任を負うか

民事訴訟法:裁判所は当事者の主張した事実を用いて過失相殺できるか

刑法:自招侵害

刑事訴訟法:一罪一逮捕一勾留の原則

各論証につき、実際の答案でどう展開するかを思い出せるまで問題演習を怠らないでください。

 

3. 短答式試験

・条文素読に勝るインプットなし。

→選択肢を削る確実不変の根拠になるのは条文です。アウトプットとして過去問演習をするのは当然ですが、インプットの際には条文の文言に忠実に向き合ってみてください。過去問の蓄積が少ない改正後民法ではかなり有効だと思います。

 

 

                                    以上

 

*1:1行あたりの文字数を減らす・改行を増やす・記述を冗長にするといった方法は、答案の質を向上するためには有害となり得るので採るべきではありません。

本試プレテスト憲法(第1問のみ) 構成メモ

近時のLO型に近い司法試験プレテスト第1問を復習しました。

小題が2つあり、1つ目で憲法上問題がある要綱を箇条書きさせ、2つ目でそのうち最も違憲の疑いが強いものを取り上げて憲法上の問題及び違憲性を解消するために必要な手段を論じさせる形になっています。 現在の傾向と合わないので、演習時は「提出された要綱の憲法上の問題点及びその問題点を解消するために採るべき措置を検討しなさい。必要に応じて、反対の立場及び判例の立場にも言及すること。」と改題しました。

 

1. 雑感

本試の問題としてプレテストを含めるならば、史上最も「黒い」法案といっても過言ではない。その気になればすべての要綱について憲法上の問題点を指摘できるが、紙幅と時間の関係上それは得策ではない。演習段階では、明らかに違憲であると思われる要綱第5~7のみ検討した。

個人的に難しいと感じたのは要綱第6,7。

要綱第6はそもそも何の判例を軸に検討すればいいのかがピンと来ず、緊急逮捕合憲判決を援用した。最判昭和30.4.27も近いと言えば近いが、主体が捜査機関ではない点が悩みどころ。

要綱第7は川崎民商事件や成田新法事件が頭に浮かんだが、捜査機関主体の刑事手続であるためこれらの判例は用いなかった。

プレテストは簡潔な出題趣旨しかなく、ぶんせき本等による解説も見当たらない。以下の構成メモが適切な解答筋であるか不明だが、演習される際には批判的検討題材として利用されたい。

 

2. 構成メモ

 1 要綱第5
⑴ 特定国際テロリズム組織への情報提供につながる情報発信行為を禁じる要綱第5は、国民が情報発信をする自由を侵害し、憲法21条1項に反しないか。
⑵「表現」(憲法21条1項)とは、自己の内面における精神活動を不特定多数人に向けて公表する行為をいう
 情報は事実に過ぎないから、不特定多数人に向けて発信する行為に精神活動は伴わず、「表現」には当たらないとも思える
 しかし、知覚・記憶した事実を再構成する段階には知的作業が伴うから、事実の発信も精神活動を外部に公表する行為といえる
 したがって、情報の発信は、自らが知覚・記憶した事実を不特定多数人に向けて公表する行為であるから、「表現」にあたる(博多駅事件判決)
 よって、国民が情報発信をする自由は、表現の自由として憲法21条1項で保障される
⑶ 情報の発信は、国民が様々な情報に触れて人格を形成し民主政の過程に参加する上で欠かすことのできないものである したがって、情報を発信する表現の自由は、極めて重要な権利である
 要綱第5は、情報発信行為を含む「特定国際テロリズム組織のためにする」行為の一切を禁止しているから、表現の自由を制約している
 当該制約には懲役・罰金という刑罰が伴うから、事後規制とはいえ制約は強度である
また、規制は「特定国際テロリズム組織のためにする」行為か否かという表現の内容に着目して行われるから、公権力の恣意が働く危険が高い
したがって、憲法適合性は厳格に審査すべきである
具体的には、形式面において過度広汎な規制であると認められる場合、表現に対する萎縮効果を生じさせるとして要綱第5は憲法21条1項に反し、実質面において①当該規制の目的がやむにやまれぬ必要不可欠のもので②当該規制が目的を達成する手段として必要最小限度といえない限り違憲と解する

ア 形式面
 法案の目的は日本におけるテロ活動を防止する点にある また、情報の提供は物的手段の提供と並んで規定されている 趣旨及び規定から、「特定国際テロリズム組織のためにする行為」は、表現との関係では特定国際テロリズム組織の活動に寄与する情報を当該組織に直接提供する行為と合憲限定解釈できる            
したがって、要綱第5のうち間接的に情報を提供することにつながる行為をも規制している部分は、過度に広汎な規制として憲法21条1項に反する
イ 実質面
要綱第5は、アメリカにおいて大規模な同時多発テロが発生し、日本もテロの標的とされていることに鑑み、国民の生命・身体、ひいては国家の安全を保護するために定められたものである 国家の存立や国民の生命・身体は最も重要な法益であるから、目的はやむにやまれぬ必要不可欠のものといえる(①充足)
 これらの極めて重要な権利は一度損なわれると取り返しがつかないから、予防的措置としてある程度強度の規制をする必要がある 情報発信行為を規制すれば、特定国際テロリズム組織の情報収集が阻害されるため、テロの防止につながる よって、上記目的と情報発信行為を規制することとの間には関連性及び必要性が認められる 
 しかし、現状の要綱第5は規制範囲が過度に広汎であり、最小限度とは言えない
 したがって、必要最小限度の規制とはいえない(②不充足)
⑸ 以上より、要綱第5は21条1項に違反する。違憲性を解消するためには、規制対象となる情報提供行為につき、「特定国際テロリズム組織に対し活動に寄与する情報を直接に提供する行為に限る」などの限定を付す必要がある
2 要綱第6
⑴ 一定の場合に令状なくして捜索差押えが行えるとする要綱第6は、令状主義に反し憲法35条1項、2項に反しないか。
⑵ 判例は、事前の令状発付を要しないとする緊急逮捕について、①明示された一定の重大犯罪に限定されていること②緊急やむを得ない場合のみ認められるとしていること(刑事訴訟法210条1項前段)③逮捕後ただちに令状請求しなければならないとしていることを理由に、憲法35条に反しないとしている(緊急逮捕合憲判決)
 憲法35条1項、2項も33条と同じく令状主義について定めているから、要綱第6が憲法35条に反するかは、上記①②③の観点から検討する
⑶ 
ア ①について
要綱第6の1は犯罪の主体を特定国際テロリズム組織に限定しているが、犯罪について明示の限定はしていないから、捜索差押えが可能とされる範囲の限定は不明確である
イ ②について
「証拠を保全する緊急性があり、かつ裁判官の令状を求めることができないとき」という限定は緊急逮捕の規定に準ずる限定といえる
ウ ③について
 要綱第6の2は裁判官による事後の許可を要求し、許可がなかった場合押収物の還付等を義務付けている 
 しかし、捜索については事後に不許可となっても何ら制約がないうえ、令状の発付が必要ない点で捜査機関の権限濫用に対する歯止めがない
 以上より、①③の点で緊急逮捕とは異なるから、要綱第6は憲法35条1項2項に違反する
⑷ 違憲性を解消するためには、特定国際テロリズム組織の犯罪行為を明確に限定し、事後の許可ではなく令状請求を義務付けるべきである
3 要綱第7
⑴ 質問や記録の閲覧請求を拒んだり虚偽の答弁をしたりした金融機関職員に対し、刑罰を科す要綱第7は、憲法31条に反しないか。
⑵ 要綱第7は刑事罰を科すこととしているので、31条により適正手続の保障が及ぶ
 しかし、金融機関の職員に対する手続について何らの規定もされていない
⑶ したがって、要綱第7は31条に違反する 違憲性を解消するためには、事前に特定国際テロリズム組織による犯罪行為と関わりがあると信じるにつき相当の理由があることを裁判官が認めている場合にのみ許容するなどの限定を付す必要がある
                                     以上

本試平成25年民法 構成メモ(改正法準拠)

1. 雑感

典型的な論証を使う場面がほとんどなく、趣旨に遡った思考や判例の射程の検討など純粋な法的思考力が試される点である意味"異色"の問題。本試験の民法では一番好き。

なかでも自分の民法学習の中で強く印象に残っているのが設問1。

設問1は、「それっぽい筋」を書くこと自体は簡単に出来る。例えば、446Ⅱの趣旨は保証人に慎重な判断を期すことにあるから、保証人が保証契約の締結に関与していれば足りる、今回は電話で追認の意思表示を示しているからOK、という感じだ。

自分は上のような流れで答案を書き終えた後に違和感を覚えた。電話の追認でいいなら、法が書面での締結を定めた意味がないのではないか、と考えたのである。

原因は簡単で、趣旨に遡った後規範を定立するのに必要なワンクッションとなる「法の規定によりその趣旨が満たされる理由の説明」がないからだ。

今回の場合、「書面であれば慎重な判断を期することができる理由」を説明して初めて、446Ⅱの趣旨に遡った規範が定立できる。それを欠くと、「保証契約に保証人が関与することが必要な理由」を答えただけになる。

趣旨に遡った思考が必要な問題では、➀趣旨に遡る②当該規定がどのようにして①の趣旨をみたそうとしているのか思考を「バック」させる③②を補助線にして規範を立てるという流れを押さえる。このことを分かりやすく教えてくれた設問であった。

 

 

2. 構成メモ

 

【設問1】

1 AのCに対する保証債務履行請求に際し、Aは以下のような主張をする必要がある。

①主たる債務の発生原因事実

②保証契約の締結

③保証が書面でされたこと

2 保証債務の履行請求に必要な要件(一般論)

要件①②③を列挙。これらをみたす旨の主張をする必要がある。

3

(1)①

AB甲土地売買契約締結の事実を主張すればよい

(2)②

保証についての合意は、ACではなくABでされている

→Cへの効果帰属のためには、Bによる有権代理(99Ⅰ)が認められなければならない

ア 有権代理の要件は(1)法律行為(2)顕名(3)(1)に先立つ代理権授与

イ ・Bは保証契約の締結という法律行為をAとの間でしていること→(1)充足

・AB間で作成された書面(以下、「本件書面」という)のBの署名にはCの代理人であることが示されていたこと→(2)充足

  しかし、Bは保証契約締結に先立ってCから代理権を授与されていない→(3)不充足

無権代理になる

ウ 本件ではCが事後的に電話でBによるAC保証契約の締結につき異存がない旨述べている→この事実を主張することにより、Bの法律行為につきCの追認(113本文)があったことを基礎づける必要もある。

(3)③

ア 本件書面は、Bが勝手に作っており、作成にCが関与していない。 446Ⅱの「書面」は、保証人によって作成されたことが必要かが問題になる。

446Ⅱの趣旨は、重い責任を負う保証契約の性質から、軽率に保証人になることを防止し慎重な判断を求めることにある。書面によることで、保証契約の内容が正確に把握でき、その保証意思が書面の形で外部に表示されることで慎重な判断を促せるからである。

 →書面としては、必ずしも保証人が作成した必要はなく、保証人となろうとする者が記載された保証契約の内容を正確に把握し、保証債務を負う意思を書面において表示していれば足りる*1

イ Cは本件書面の作成はしていないが、Bから示された本件書面を現認し吟味のうえで保証契約の締結につき承諾している→内容は正確に把握している

しかし、電話での追認では外部への表示を目に見える形で残したとはいえない。追認の意思表示についても書面でする必要があった

 →Aとしては、請求に際しCが電話で書面を追認した以上446Ⅱの要件をみたすと主張することになるが、この主張は認められない。

 

【設問2】

1 Kg

債務不履行責任の追及

(1)債務の本旨に従った履行がない、という要件の検討が重要。

いかなる債務の履行をしなかったか指摘するのが問題になるが、善管注意義務として構成するのが穏当。

※用法遵守義務(616・594Ⅰ)にいう用法とは、使用収益の種類を意味するものであり(居住用につかう、店舗に使う…etc)、「壊さないように注意して●●に使う」というようなレベルまで要求されるものではないと考えられる(野球のバットに例えれば、用法は「野球のボールを打つのに使うこと」、善管注意義務の内容は「折損しないようにすること」)。今回は、カフェ店舗に使うという用法は遵守している。

Hが誤った工事で亀裂を生じさせた→借主側の人為的事由により賃借の目的物を損傷させたから、善管注意義務違反になる。

※ここで、借主が依頼した業者が亀裂を生じさせているが、これが借主側の事情であることは、貸主からみて変わりない。「違反があったかなかったか」というのを結果から客観的にみて認定する。

(2)損害の発生及び額

壁に生じた亀裂の修繕に要した費用100万円が損害。

(3)因果関係(416Ⅰ)

問題なく認められる。

2 E

(1)①606Ⅰ本文の修繕義務としてBが負うべきものだから、Fは責任を負わないという主張と、②壁の亀裂は専門業者Hが生じさせたものであり、415Ⅰ但し書にいう「責めに帰することが出来ない事由」が認められるとの主張が想定される。

もっとも、①は本件修繕がFの責めに帰すべき事由により生じたものである場合認められない(606Ⅰ但し書)。そこで、まず②について検討する

(2)主張②について

業者のミスであることをもって借主は責任を免れるのか、の問題。415Ⅰ但し書の解釈とあてはめをしていくことになるが、条文の文言には「契約の発生原因」「取引上の社会通念」に照らして判断する、としかない。今回、第三者である専門業者Hが亀裂を生じさせているところ、BがHによる内装工事を承諾しているという特殊事情がある。

段階的に考えてみる

①借主が目的物について工事をし、工事中のミスが原因で損傷が生じた場合、その工事のリスク(ミスに伴う責任)は貸主と借主のいずれが負うべきか?(同意の法的性質は無視)

→直感では、借主が負うべき

②それはなぜか?

→借りた物を現状に復して返還するという賃貸借契約の本質、及び利益を享受すべき者に損失・責任もまた帰するという原則からすれば、借主がリスクを負うべきである。←根幹にある価値判断。

③では、このリスク負担の話は、貸主が工事を承諾していた場合にも妥当するか?

→妥当する。承諾といっても、原則として許容されない工事について承諾しているだけで、それに伴う責任を借主について免除する意味を有しないから。

④本問における事情は、「責めに帰することができない事由」といえるか?

BはHを利用した工事について承諾しているものの、前述のようにこれは責任免除を意味するものではない。したがって、Hの誤りによって損害が生じた以上、善管注意義務違反の責任は工事を依頼したFが負うべきである。

→Fの善管注意義務違反は、「責めに帰することができない事由」とはいえない。*2

 

【設問3】

Gの相殺の主張→必要費償還請求権(608Ⅰ)につき30万円の限度で賃料債権と相殺する

Dの主張根拠:SCH13.3.13より、相殺をもって対抗できないとの主張

 

Q1:本件判例の判断の基礎・価値判断はなんだろうか?

A1:相殺に対する期待の保護の要請と、登記による公示からくる、物上代位を実現する要請の比較衡量。

事例においては、抵当権の優先弁済的効力が物上代位においても妥当し、これが保証金返還債務を相殺することによる事実的優先弁済の期待を優越したと判断された。

→抵当権に基づく物上代位>相殺

 

Q2:本問事例で上記価値判断にしたがうなら、どうなるか?

A2:債務の性質の違いに着目するのがアプローチとして取りつきやすい 必要費は本来貸主が負担するはずの費用であるから、相殺に対する期待は単なる金銭債権よりも高いのではないか

                                     以上

 

 

                      

*1:書面性を要求する趣旨について、判断の前提となる契約の内容を正確に把握することを重視する見解と、書面に意思を表示することを重視する見解とがあるため、結論はどちらでもよい。

*2:今回の場合、内装工事の利益は専ら借主に帰属するものといえる。したがって、「利益の帰するところ損失もまた帰する」という考えから、借主がリスクを負うべきことが素直に導かれる。

 しかし、①②③に加え、④が以下のような事情であった場合はどうだろうか。

(1)工事が目的物を使用収益可能な状態に戻すために必要だった場合

まさしく原状回復の過程で生じたこと・利益は貸主のみに帰属することを考慮すると、そのリスクは貸主が負うべきと考えられる。

(2)引き渡す前に貸主の側で工事をする予定であったが、業者選定能力に長ける借主に工事を依頼していた場合

引渡前の工事については貸主がリスクを負うべきであり、借主は「原状」の設定を代行しただけで、依頼を受けたことをもってリスクまで移転したと解するべきではない。→リスクは貸主が負うべきと考えられる。

(3)工事が貸主・借主の双方に利益をもたらすものであった場合(有益費)

賃貸借の本質からすれば借主がリスクを負うべきであるように思われる

本試平成24年民法 構成メモ(改正法準拠)

1. 雑感

 改正による影響を露骨に受けている過去問の1つで、40点もの配点がある設問2は殆ど条文摘示で終わってしまう。当時は現場で混合寄託契約を考え、妥当な結論を導く処理が求められたことだろう。

他の設問はオーソドックスで、丁寧に条文・要件を挙げて検討していくのが差をつけるポイントになると思う。

設問3は債務不履行責任における債務不履行の有無と損害の範囲が問題になっており、後者は書き方に悩んだ。

2. 構成メモ

 

 設問1
1 小問⑴
⑴ Fの主張は、Bが甲土地の所有権を有することを前提にして、AB間の売買契約により甲土地の所有権がAに移転し(555,176)、Aを単独相続したことによりFが所有権を取得したというもの(882,887Ⅰ,896本文)
Bが甲土地の所有権を有していれば主張は基礎づけられるので、この点について検討する
⑵ BはDの唯一の子でありDの妻はすでに死亡しているので、DがCから甲土地を単独相続したといえればBが単独相続により甲土地の所有権を取得することになる
 もっとも、Cの相続人はDだけでなくEもいる→遺産分割協議が行われた事情はないので、甲土地はDEに共同相続され、Dは甲土地につき2分の1の持分を有するにとどまる(898,899)
 したがって、Dを相続するBは甲土地の2分の1の持分を相続するに過ぎないから同土地の所有権を有していない
⑶ よって、FがEに対し甲土地の所有権が自己にあることを主張することはできない
2 小問⑵
⑴ 長期取得時効による時効取得の条文上の要件は、①20年間②所有の意思をもって③平穏かつ公然と④他人の物を⑤占有したこと(以上につき162条1項)、及び⑥取得時効の援用(145条)である
⑵ ①について、ある時点での占有及びそこから20年経過した時点での占有を証明すればその間継続して占有したものと推定される(186Ⅱ) また、Fは占有者たるAの承継人であるから、Aの占有を併せて主張できる(187Ⅰ)
 Aが甲土地に直接的な支配を及ぼし占有を開始したのは、柵で囲み看板を立てた1990年11月20日。Fはこの時点での占有及び2010年11月20日時点での占有を証明すれば①をみたす
②③は186Ⅰにより推定されるところ、これを覆す事情はないからみたす
⑤もみたす
⑥について、Aは1990年11月15日にBから甲土地を買い受けている この下線部事実によれば、甲土地はAが占有を開始した時点でAの所有だったことになるから、「他人の物」にあたらず⑥をみたさないのではないか 占有客体が「他人の物」であることは時効取得の要件となるかが問題になる
取得時効の趣旨は、長期間継続した事実上の状態を法的に保護すること及び所有権の帰趨をめぐる立証の困難性を解消する点にある 占有客体が自己の物でも他人の物でも、上記趣旨が及ぶことには変わりない
→条文上の「他人の物」は占有客体の例示であり、実体法上の要件ではないと解すべき
→下線部の事実は取得時効の成立を妨げるものではなく、法律上の意義を有しない

設問2
1⑴ 寄託契約書6条・665-2Ⅱに基づく返還請求が認められるか
⑵ 混合寄託契約該当性
665-2Ⅰに照らし混合寄託契約に該当するかを検討
・「複数の者が寄託した」→FGが寄託している
・「物の種類又は品質が同一」→和風だし2000箱は種類及び品質が同一
・「各寄託者の承諾を得た」→寄託契約書3条により承諾がされている
→混合寄託契約に該当
→665-2Ⅱ・寄託契約書6条に基づきGのHに対する返還請求権は基礎づけられる
⑶ Hの主張
665-2Ⅲにより、Gが返還請求できるのは500箱
この主張が認められるか。寄託契約書には665-2Ⅲに対応する規定がないところ、本件寄託契約によって同条の適用は排除されるかが問題になる
665-2Ⅲは、寄託物の割合に応じた数量の返還を認め、返還を受けられなかった分については別途損害賠償請求を認めることで寄託者間の公平を維持する趣旨の規定
→趣旨を尊重するべく、契約内容の合理的解釈からこれと異なる合意がされたと認められない限り、本条の適用は排除されないと解する
→寄託契約書4条が寄託した物の数量の「割合」に応じた持分権を確認している 他にこれと異なる割合での権利を認める規定がないことから、FGH間の契約は寄託者間で公平を図る内容であったと解釈するのが合理的 割合も665-2Ⅲと対応しているから、これと異なる合意をしていたとは認められない
→665-2Ⅲの適用は排除されない
→Hの主張は正当。1000箱滅失しているから、Gはそれぞれの持分に応じて500箱の返還を請求できるにとどまる

設問3
1 
⑴ 「債務の本旨に従った履行をしない」
Hは無償寄託契約により負う注意義務(659)に違反したといえるか
自己物であっても、山菜おこわ500箱は相当な価値を有するものであるから、通常人であれば他人から盗取されないよう施錠して管理する
Hは質屋を営んだ経験もあるから、自己の物であっても通常人より注意能力が劣っていたとは考えられない
→Hは自己の財産に対するのと同一の注意義務として、山菜おこわを管理するに際し施錠する義務を負っていた
→山菜おこわの滅失はHの施錠忘れが原因であるから、Hは上記注意義務に違反したといえ、この要件をみたす
⑵ 「これによって生じた損害」
上記債務不履行との因果関係が認められる「損害」の範囲を検討する
416Ⅰは「通常生ずべき損害」として債務不履行と相当因果関係を有するものを「損害」とする旨定めている。2項は債務不履行時に「当事者」、すなわち債務者が「予見すべきであった」事情を判断基底に加え、これと相当因果関係を有するものをも「損害」とする旨定めている
・FQの契約が解除されたことにより逸失した利益である300万円は「通常生ずべき損害」だから、損害賠償請求できる。
・全店舗販売ができなくなったことの損害は「通常生ずべき損害」ではない
また、FはHに寄託するに際し交渉に入ったことを伝えているが、全店舗販売がされることは寄託段階において確実ではなかったから、Hをして山菜おこわが滅失すれば交渉打ち切りによる大きな損害が生じうることを予見することは容易ではなかった
→交渉打ち切りにより山菜おこわを取り扱ってもらえなくなることはHが「予見すべきであった」事情ではないから、判断基底に加えられない
よって、交渉打ち切りによる逸失利益は「これによって生じた損害」にあたらない
2 FはHに対し415Ⅰに基づき交渉打ち切りによる逸失利益の賠償を請求することはできない
                                                                                                                                                                                 以上