One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

「MARCH以下・地方国立からでも予備試験・司法試験に受かりますか?」に対する一つの答え

 

こんにちは。

 

 先日、伊藤塾主催の高校生向け講演会と大学生協主催のパネルディスカッションに参加させていただきました。ご参加いただいた方々ありがとうございました。

 記事のタイトルの質問は、個人的に相談を受けたり講演会に参加したりする中でよく出てくるものです。皆さんも一度は聞いたことがありませんか?

 これに対する答えには毎度頭を捻ってきましたが、今回の一連の企画への参加を通じて、上記の質問に対する一つの答えが浮かび上がってきたので、私見として書き残しておくことにしました。上記の疑問を抱いたことがある方は参考にしてみてください。

 

1.「不可能ではないが難しい」が一般解

 上記質問に対する一般解は「不可能ではないが難しい」です。質問者が望む答えは「十分可能」なんでしょうが、留保なしでそう答える人はいないと思います。残念ながら、誰に聞いたところで返ってくる答えは同じです。では、なぜ「難しい」という留保がつくのでしょうか。

 

2.そもそも良い質問ではない

(1) 身もふたもない話ですが、上記の質問はあまり良い質問ではありません。口の悪い人だと、「そのような質問をする時点で厳しい」というような回答が返ってくる可能性もあります。

 不安な気持ちはわかるのでここまできつくは言いませんが、望むような回答はしてあげられないのも事実です。その理由について説明します。

(2) まず、「MARCH以下・地方国立からでも」というところは、所属の大学の序列(=地頭の良さとパラレルに捉えられることが多い)によって試験の合否が決まると考えてしまっていることを意味します。つまり、「敵を知る」ことが出来ていないことになります。*1 

 当たり前ですが、所属大学と試験の合否とは関係ありません。大学受験の突破に必要な能力と、実務家登用試験である予備試験・司法試験の突破に必要な能力とは全く違うからです。*2

(3) また、この点が今回の記事で最も述べたいことなのですが、大学の序列と試験の合否を単純に紐づけている点で、予備試験・司法試験に主体的に取り組む姿勢がないことがあらわれています。試験を受けるのは質問者自身なのですから、やってみないと分からないわけです。その部分についての認識が足りないと、このような質問が出てきてしまう。しばしば「自信がない」という理由に隠れがちですが、本質的な原因は試験との向き合い方にあるのではないかと思っています。

 この「主体的に取り組む」とは何か。簡単に言えば、「積極的に情報収集を行うこと」「自ら環境を変える努力をすること」です。SNSを使うのでもいい、書店で広告や書籍を見るのでもいい、講演会やセミナーに参加するのでもいい。勉強場所を変えるのでも、勉強仲間を作るのでもいい。重要なのは「積極的に」、つまり自分から動くことです。

 法曹を目指す人間は限られているわけですから、過大なコストをかけてまで広範囲に情報発信がされることはありません。法曹を目指す人が少ない環境では、情報は更に手に入りにくくなります。そうであるならば、自分から動いていくしかないのです。

 ところが、下位大学(このような言い方はしたくありませんが、予備試験・司法試験合格者の少ない大学を表現上こうします。申し訳ありません)の学生は、上位大学の学生と比べて圧倒的に動き出しが遅いです。動かないと情報が入らない*3にもかかわらず受動的で動き出しが遅いので、その分ディスアドバンテージを負います。先ほど述べたように、必要な能力を身につけなければならない点でスタートラインはどの大学も同じなのに、動き出しが遅いから「負ける」。本当にもったいないことです。

 やっぱりというべきか、この前の講演会・パネルディスカッション参加者の所属大学を見ると、大部分は上位大学の学生でした。他方、それ以外の大学の学生については多くても4,5名で、私の母校(下位大学に属します)の学生に至っては申し込んだ数名全員が当日欠席、先月行われた1回目の交流会は約半分が当日欠席、来週に行われる2回目交流会も1,2名が申し込んでいるにとどまっています。生協や、郵送によるお知らせをしてもこの現状なのです。

 高校生はともかく、大学1、2年生の8月というのも学習開始段階としては遅めであり、今回の講演等は実質的には学部予備合格を目指す"最後発組"に向けてされたものでした。私の大学時代よりよほど情報面で恵まれている今になっても、なおこれほどに腰が重いのか…と実感しました。 

(4) 予備試験・司法試験の実像を正しく捉え切れておらず、質問者に主体的意識がなく動き出しも遅い。このような状態で、予備試験や司法試験の合格を目指すのは「難しい」です。回答者は、言語化することはしないまでも、暗にこの状況を考慮して「不可能ではないが難しい」と答えているのではないでしょうか。

3.質問に対する答え

 まとめると、タイトルの質問はそれ自体に不合格推定を働かせる事情が内在している点で、良い質問とはいえない、ということでした。

 しかし、あえて答えるとすれば、「出来るだけ早い段階から、主体的に動いて合格に向けた正しい学習をすれば可能」ということになるでしょう。重要なのは自ら動き出すこととその早さ。やると覚悟を決めたならとっとと動き出すことです。

 私も情報収集に手間取り、動き出しが1年遅れた身です。どうかこの記事が、上位大学以外から法曹を目指さんとする学生の目に届くことを願います(それも現実にはかなわないのでしょうが…)。

                                     以上

 

*1:ここでは大学の"序列"について考えることはしません。

*2:相対評価の受験システムに慣れた人間は合格しやすい、という限度での相関関係はあります。

*3:動き出しの遅い学生が多い、ということは、成功体験をはじめとする有益な情報の蓄積も乏しいことになります。また、大学側も法曹志望者が少ないと把握した場合、情報発信をする頻度は下がります。これが下位大学が有する大きな弱点の一つです。もっとも、情報が大学によって遮断されるわけではないので、自分次第でいくらでも情報を手に入れられることは言うまでもありません。