One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

短答式試験と論文式試験の関係

こんにちは。連日猛暑が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回の記事は、予備試験の論文式試験の手応えがない方・短答式試験で不合格になってしまい来年に向けて学習をしている方・司法試験短答式試験で不合格になった方に見ていただきたいと思っています。在宅クラスマネージャ―として、あるいは同期として相談を受けていて思うことを書いた記事になります。当てはまらない方はご覧にならなくて大丈夫です。また、「お前まだ本試受かってねえだろ」というツッコミはご容赦いただきたいと思います笑。

 

 

1.現時点での勉強はどうなっていますか

(1)方法より比率を見直してほしい

 上記のどれかに当てはまる方は、少なからず自分なりの敗因分析をして、それに即して現在勉強されていると思います。例えば、「論文のインプット・アウトプットにムラがあったから、科目ごとの学習配分を見直そう」とか、「短答の対策時間が足りなかったから今年はしっかり短答をやろう」とか。

 その具体的な対策は人によると思いますが、短答と論文の配分にも目を向けていただきたいです。

(2)予備試験の場合

 短答式試験で不合格になっている場合は、短答:論文=6:4~8:2の範囲、ようは「短答の方が多いけど論文もやっている」状態にしておくことをお勧めします。法律科目だけで7科目あり、絶対量を確保しなければなりませんし、試験構造上短答に受からないと論文を書く機会すら与えられないからです。

(3)司法試験の場合

 司法試験の短答式試験で不合格になっている場合は、短答インプットの多寡にかかわらず「論文メインで、短答は直前にやる」スタンスがベターだと考えられます。

 え、短答で取れなかったんだから短答をしっかりやるべきでは?と思われるかもしれません。これについては2で詳しく説明します。

 

2.「短答さえ受かれば論文はいける」と「論文はいけると思うんだけど、短答が…」は違う

(1) 上の見出しは、各受験生がよく口にしたり、心で思っていたりすることを2つあげたものです(以下、「短答さえ受かれば論文はいける」をA、「論文はいけると思うんだけど、短答が…」をBとします)。読者の方にもいずれかが当てはまる方はいませんか?

 Aは、聞く限り「自分は論文の実力は十分あると思う。敗因は、あくまで短答式試験そのものにある」というニュアンスが強いです。Bは、「論文の能力に不安は感じていない。けど、短答式試験は経験がないor苦手意識がある」というニュアンスです。

 AとBは非常に似ているのですが、私はこの2つでは意味していることが全く違うと考えています。一言で言えば、両者の違いは「短答と論文の関係をどう捉えているか」です。Aは両者を区別してとらえており、Bは両者を同一線上に捉えています。

(2) 結論から言うと、Aは合格から遠のく思考であり、Bは合格に向かっている思考であると考えています。

 理由は簡単。合格に必要な要素は論文と短答とでほとんど変わらず、そのコアの使い方が違うだけだからです。その要素をそれぞれで切り分けて考えてしまうと、勉強の方向を誤る可能性が高まります。

 短答と論文の関係を数学で例えると、

短答=数学の公式を使って計算できるか(途中式は不要、公式を覚えていればよい)

論文=数学の公式を正しく使って計算できるか(途中式必要、正しい場面で公式を使えるように、公式の意味を理解している必要がある)

 という関係にあると思います。

 「自分は公式さえ覚えれば点数を取れるが、公式を覚えている量が少ない」(=A)、「自分は公式なら最悪現場で導出できる。ただ計算が遅いんだよね」(=B)という2つの相談があったとしたら、どうでしょうか。実力を伸ばしやすいのは後者、というのは明らかでしょう。

 予備試験や司法試験も一緒です。短答と論文のいずれも必要な能力を試すための試験制度であることに変わりはなく、短答式試験は時間などの制約から要求する範囲を限定しているだけ、ということになります。語幣を恐れずに言えば、ABのどちらを口癖としているかは、短答と論文の関係をどう捉えているかのあらわれということができるでしょう。

(3)(2)の話を裏付ける実際の例についても簡単に書いておきます。

 私の周りには、①合格推定が強くはたらく予備未受験のロー生②予備試験を突破している人③予備短答は何とかなるけど予備論文がうまくいっていない人④司法試験の短答式試験で不合格になっている人⑤予備の短答がうまくいっていない人がいます。

 やり取りの中で、①②にあてはまる人でAを言う人はおらず、Bに近いことを言っている人が大多数でした。一方、③④⑤にあてはまる人は殆どがAを口にしており、Bに近いことを言っている人はいませんでした。

(4) ここまでの話で何となく分かると思いますが、論文の勉強によって短答を解く素地も鍛えられますから、短答に集中する期間(短答プロパーのインプット、選択肢の切り方や時間配分など実戦的な練習をする期間)はそれほど長くする必要はありません。また、短答に関しては短期記憶を活かした方がコスパが良いので、出来るだけ近い時期に演習を行うべきです。2(3)で「論文メイン」を推奨したのは、こういう理由によるものです。

 

3.小括と次回の記事

 短答式試験論文式試験は、試験制度の関係でどうしても区別して考えがちです。しかし、本来的に求められるものは変わりません。

 敗因分析はピンポイントなミスに目が行きがちですが、よりマクロな視点から見直してみてください。

 次回は、「MARCH以下・地方国立からでも予備試験・司法試験を目指せますか?」というよくある質問に対する1つの回答を提示します。

                                    以 上