One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

本試27年商法 構成メモ

1.雑感

 26年と似ていて、定義や条文の文言に忠実な思考が出来るかを問うている良問と感じた。設問1は構成こそメジャーだが、どこに問題が潜んでいるのか条文に紐づけるかたちで言語化するのに苦労した。設問2は当初問題点を無視した起案を書いてしまい可燃ごみを錬成してしまった。設問3は配点も低く聞いたことがない論点だったので現場思考で処理したが、ばっちり条文があるし判例も存在する、書けてしかるべき重要な問題であった。全体として論点は少ない分、一個一個をしっかり書くことが合格に必要なのだろう。時間内に書ききるには相当早く答案構成をする必要があるのではないだろうか。

2.構成メモ

【設問1】

⑴Bが乙社における洋菓子事業に関与したことは、競業取引(356条1項1号)にあたるか。

・競業取引該当性

※「ために」→356条1項1号の趣旨、すなわち取締役がその地位に基づいて得られた知見や

ノウハウを用いて、自己または第三者の利益を図ることにより、会社財産が流出毀損されることを防止し、もって会社財産を保護するという趣旨からは、計算においてと考えるべきである。

Bは乙社との関係では代表取締役等、会社を代表する地位にはない。

→乙社で陣頭指揮をとっていたことや、株式の保有率が90%に達していたこと、乙社人事にまで関与していたことからすれば、事実上乙社の主宰者として行動していたものと評価できる。

→Bは356Ⅰ①の行為主体にあたる

・「事業の部類に属する取引」

→前述の356条1項1号の趣旨から、当該会社の事業と市場・商品において競合する取引をいう。

そして市場の競合については、かかる趣旨に照らして、現時点で市場が重なっていなくとも、将来における当該地域への進出計画が相当程度具体性・確実性を有する場合は、市場の競合が認められる。

→両社とも洋菓子販売製造事業者なので、市場の競合がありうる。地理的市場についても、甲社の本拠地は関東だが、市場調査を委託するなど関西進出の計画が相当程度具体的かつ確実→将来において市場が競合し、利益衝突の可能性がある

したがって、Bのした取引は「事業の部類に属する取引」にあたる。

役会で重要な事実を開示して承認を得る必要があるが、役会でない場においてACに乙社事業に携わる旨述べただけであり、「重要な事実」の開示はない

→役会の承認なく行ったことは法令違反行為として任務懈怠を構成する

⑵引き抜き行為が忠実義務違反(355条)にあたるか。

→引き抜き行為が常に取締役の任務懈怠にあたるとすると、引き抜かれる側の転職を制限

することになり、職業選択の自由憲法22条1項)との関係で問題となる。

 そこで引き抜かれる者の従前の地位、引き抜きの目的・態様、引き抜きが当該会社に与える影

響等を総合考慮して、不当な態様による引き抜きと評価できれば、忠実義務違反が認めら

れる。

→Bは、工場長という工場稼働に不可欠な立場にあるEを専ら乙社のために引き抜いた。Eが従前転職したがっていたという事情もみられない。また、甲社に事前の相談もなく引き抜いている。そして、甲社は引き抜きにより工場の稼働停止という大きな影響を受けている。

→不当な引き抜き行為として善管注意義務に違反し、任務懈怠を構成する。

 

⑶損害額の算定

①引き抜きについては、300万円

②競業取引の損害額については、423条2項で損害の推定規定が設けられているが、「ため

に」を名義と解するか、計算と解するかによって、どの利益にかかる損害の推定を適用す

べきかが分かれる。前者の見解に立った場合、Bは乙社名義で取引をしていたから、乙社に

もたらされた増加利益が推定損害となる。すなわち営業利益の増加分800万円が損害額と

なる。

後者の見解に立った場合、取締役本人が得た利益を実質的に判断していくことになる。

すなわちBが顧問料として得た100万円/月、さらにBは乙社株式の9割を保有しているから、

乙社が得た利益はBの利益といえる。そこで増加営業利益800万円に0.9をかけた720万円を

Bの実質的な利益と評価することができる。

③市場調査のために支払った500万円

→競業取引によってでた損害といえるから、「ために」の意義につきいずれの見解に立っても損害に含まれる。

※競業取引前に行われているから不可避的出費として損害としない考え方もあるが、500万円費やしての市場調査をするということは、今後の関西進出が相当程度確実である事を示しているから、「よって」生じた損害といえるだろう。

まとめると、損害額は1520万円および顧問料100万円/月

⑷因果関係

⑸故意又は重大な過失

○(法令違反なので原則認定されるだろう)

 

【設問2】

事業譲渡(467条1項)該当性

 

1.「事業の…譲渡」:法解釈の統一性を図る観点から総則規定の事業譲渡と同一に解するべ

きである。また取引の安全・法的安定の見地から、その要件は明確である必要がある。

→①一定の事業目的のために組織化され有機的一体となって機能する財産の全部または重要

な一部を譲渡し、②これにより譲渡会社が当該財産により営んでいた営業活動が譲受人に受

け継がれ、譲渡会社がそれに応じて当然に競業避止義務を負うものをいう。

 そして、株主利益保護の点から、特約によって簡易に排除ができる競業避止義務は、事

業譲渡の効果であって、要件ではないと考えるべき。

→第1取引:洋菓子工場の土地・建物は洋菓子製造のために一体となって機能する財産。そして、これの譲渡により乙社は洋菓子製造業を受け継ぐ。よって、事業譲渡に該当。もっとも、これ単体では簡易授業譲渡になるので総会決議不要。

第2取引:のれんの譲渡なので事業譲渡にあたる。ただし、簡易事業譲渡なので決議は不要

→しかし本件では、S社からの反対が予期されていた。また、二つの取引は時間的に近接し

ていた。これらの事実から、第一取引・第二取引は株主総会決議規制を潜脱するために取引を分割したと考えられる。したがって、この二つを一個の行為と解釈して、事業譲渡該当性を検討すべき。

 

2「重要な」

質的(看板事業か否か)かつ量的(資産額的な観点)に判断。 

→洋菓子部門は甲社が有する2つの事業部門のうちの一方であり、甲社総資産額5億に対し

て売却した洋菓子部門の総額は2億5千万なので5分の1を超えており、「事業の重要な一部

の譲渡」にあたる。

 

3 手続規制とこれに違反してされた事業譲渡の効力

⑴ 株主総会特別決議が必要(309Ⅱ⑪)

 本件ではこれを経ていない

⑵ 総会決議なき事業譲渡の効力

 趣旨に照らせば無効

 

【設問3】

1 

 新株予約権発行無効の訴え(828Ⅰ④)は出訴期間(同号括弧書)を徒過しているので不可。争うには株式発行無効の訴えによるしかない(828Ⅰ②)

 発行無効事由→取引安全の要請よりも会社・既存株主の利益を保護する必要があるほど重大な法令違反 に限る

2

⑴ 新株予約権の募集内容の決定は、原則として総会決議による(238Ⅱ)。もっとも、総会決議によって、募集事項の決定を役会に委任することができるとされている(239Ⅰ柱書) 

 本件では募集事項の決定について総会決議をもって行ったのち、行使条件自体の内容について役会決議をもって決定している

  ここで、新株予約権の行使条件は「新株予約権の内容」にあたるのかが問題になる

 ・あたるなら、総会決議をもって決定しなければならず、役会への委任はできない(238Ⅰ①,Ⅱ,239Ⅰ)

 →総会決議がないため、新株予約権発行の瑕疵を構成する

 ・あたらないなら、役会決議への委任をすることも可能

 →役会決議がある以上、新株予約権発行の瑕疵を構成しない

※239Ⅰ各号の意義:「役会に委任する場合であっても、1号~3号に掲げる事項については委任する際の総会決議で定めておけ」という趣旨。

⑶ 新株予約権行使及び株式発行に関する瑕疵

上場条件を役会決議のみで事後的に廃止(変更)することは許されるか

ここは判例が存在するので重要。

◇判旨

株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合に、新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がある場合は格別、当該新株予約権の発行後に上記行使条件を取締役会決議によって変更することは原則として許されない。その取締役会決議は、委任に基づき定められた新株予約権の行使条件の細目的変更をするのにとどまるのでない限り無効と解するべきである(最判平24.4.24)

この判例に従うなら本件での取締役会決議は無効。とすると、株式発行は行使条件を満たしていないにもかかわらず行使された新株予約権に基づき発行されたことになる。

⑷ 行使条件不充足のまま新株予約権が行使され株式が発行されたことは、無効事由を構成するか

判例は肯定。∵株主の利益のために決定された行使条件に従わない株式発行がなされることは、株主総会決議を欠く株式発行と実質的に同様。そして、非公開会社では既存株主の持株比率が重要な利益であり、その低下を事後的に回復することが困難であることに照らすと、その瑕疵は重大といえる(取引安全の要請より既存株主の保護を図るべき)

⑸ 無効事由があるから、本件での甲社株式発行は無効。

                                                                           以 上