One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

本試平成29年刑法 構成メモ

 

1. 雑感

 現行の出題方式に移行する前の最後の出題で、おそらく最も書く論点の多い過去問。その分、網羅的に復習することができる良問でもある。ちなみに、財産犯の大部分は刑法事例演習教材の第13問において扱われているトピック。死者の占有の誤認識は同書の好んでいる(?)トピックであり、これによって同書が本試験のネタ本になっているという噂が裏付けられる形になった。*1

以下は復習時に残っている疑問点・反省点。

①腕時計XとYの購入は別の機会になされているので、詐欺・有印私文書偽造・同文書行使罪はそれぞれについて成立しそうだが、分析本ではまとめて論じている。個々の理由がイマイチ分かっていない。また、Yの購入申し込み行為は詐欺罪と背任罪の両罪名に触れるが、牽連犯との関係でどう処理すればいいのか分からなかった(メモでは4つまとめて科刑上一罪になるとしている)。
②乙の殴打行為について、甲との共謀に基づく行為と認めた方が戦略上は良かったと思う。

2. 構成メモ

1 甲がA名義のクレジットカードで腕時計Xを購入した行為

詐欺罪(246Ⅰ)

・名義人の承諾

2 甲が売上票にA名義の署名をした行為

有印私文書偽造

3 甲が売上票を店員に交付した行為

偽造有印私文書行使

4 甲がA名義のクレジットカードで腕時計Yを購入した行為

詐欺罪→同上

Aとの関係での背任罪

5 甲が売上票にA名義を署名をした行為

同上

6 甲が売上票を店員に交付した行為

同上

7 乙がAを石で殴打し傷害を負わせた行為

⑴ 乙の罪責

・傷害罪の構成要件に該当

・正当防衛の成否(丁寧に)

「やむを得ずにした」の要件はみたさないと思われる

→傷害罪成立、過剰防衛で任意的減免(36Ⅱ)

⑵ 甲の罪責

・甲は乙の殴打行為に関与していないが共同正犯として罪責を負うか

成立要件→①共謀②①に基づく実行行為③正犯意思

今回の場合、①③はみたすが、共謀はあくまで正当防衛をすることに向けられており、Aへの攻撃を含んでいないので②をみたさない

→乙の殴打行為については罪責を負わない

【共謀の射程が及ぶことを肯定した場合】

・結果的加重犯は基本行為に重い結果を生じさせる危険性があることを内包している→重い結果について過失は要しない→行為と重い結果との間に因果関係が認められるならば、行為者の過失を問わず結果的加重犯の共同正犯が成立する

→傷害罪の共謀共同正犯の構成要件をみたす

・違法性は連帯するので、乙について正当防衛が成立しない以上違法性は阻却されない

・甲は乙が石を使って殴打したことを認識していない→責任は行為者ごとに検討するところ、誤想過剰防衛として責任故意が阻却されないか

→甲の認識を前提とすれば、補充性が認められる+乙とは背中合わせで乙の行動を把握することはできない状況にあったため、甲が過剰性を基礎づける事情を誤認識したことについて過失も無いと考えられる

→責任故意阻却。甲は乙の殴打行為について責任を負わない

8 Aの財布を持ち去った行為

⑴ 甲の罪責―窃盗罪

 死亡していると誤認したことが窃盗罪の故意を阻却するか

⑵ 乙の罪責―器物損壊罪

 損壊の意義

⑶ 共犯関係

 器物損壊罪の限度で重なり合う

9 罪数

甲→X,Yの購入行為についてそれぞれ①詐欺罪②有印私文書偽造③偽造有印私文書行使

が成立し、Yの購入行為については別途➃背任罪が成立。さらに➄窃盗罪が成立し、器物損壊罪の限度で乙と共同正犯になる。②③は牽連犯、これと➀とが牽連犯。①④は観念的競合 よって、Xについて①②③が科刑上一罪、Yについて①②③④となり、両者が併合罪 これと⑤とが併合罪

乙→①傷害罪②器物損壊罪の共同正犯が成立し、両者が併合罪                                以上

*1:同書が好む論点として他に挙げられるのは、住宅・建造物・邸宅の囲繞地への侵入です。最近の本試験では130条前段の罪は検討対象から除外されていることが多いですが...