One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

本試平成24年刑法 構成メモ

 

1. 雑感

 新傾向での出題を予想する受験生が思いつきやすいであろう「業務上横領罪と背任罪の区別」「名義人の意義」「業務上横領罪に加功した者に成立する犯罪」という論点をすべて含んでいるため、直前期の確認として復習した。今回の出題で厚く論じたのは、判例と異なる処理をする最後の点のみ。

なお、甲の抵当権設定行為、甲乙の本件土地売却行為については詐欺罪の成立を検討する余地もある。Dの主観に関する事情は、同行為が財産的損害に向けられた「欺」く行為といえるかというところで用いることになる。メインは業務上横領罪だと思うので必須ではないだろうが、ここまで含めて書ききればAは確実だろう。

名義人に関してはいずれのアプローチも考えうる。ここで採るアプローチによって罪名・適用法条が変わってくるので、起案の際は決め打ちするのがベターかもしれない。

 

2. 構成メモ

 

甲の罪責

1 A社所有の本件土地に抵当権を設定する契約(以下、「本件抵当権設定契約」)を締結した行為

A社との関係で業務上横領罪

※A社のために事務を処理する者が本件土地に抵当権を設定しているため背任罪と業務上横領罪のいずれに問疑すべきか問題になるが、両罪が法条競合の関係にあるため、業務上横領罪を先に検討。今回は業務上横領罪が成立する

 

2 A社が本件抵当権設定契約を承認した旨の議事録(「本件議事録」)を作成した行為

無印or有印私文書偽造

本件議事録も「事実証明に関する文書」に該当することは認められる

Q作成者は甲だが、名義人は誰か

アプローチ1 文書に表示された意思観念に基づく法律効果が帰属する主体、すなわち「A社社員総会」と捉える

アプローチ2 文書に表示された意思観念が帰属する主体、すなわち「A社社員の互選により選任された甲」と捉える

→いずれのアプローチを採るにせよ、作成者と名義人との人格の同一性を偽ったと認められるから「偽造」したといえる

→アプローチ1によるなら無印私文書偽造罪(159Ⅲ)が、アプローチ2によるなら有印私文書偽造罪(159Ⅰ)が成立する 今回はアプローチ1を採用する

3 本件議事録をDに交付した行為

同文書行使罪

4 本件土地をEに売却した行為

⑴A社との関係で業務上横領罪

既遂時期は登記を移転した時点

⑵Dとの関係で背任罪

5 罪数

①業務上横領罪②無印私文書偽造罪③同文書行使罪④業務上横領罪⑤背任罪が成立。②③が牽連犯、④⑤が観念的競合。これと①とが併合罪

 

乙の罪責

甲がEに本件土地を売却した行為

⑴ 業務上横領罪の共謀共同正犯

Q共謀共同正犯の成立要件をみたしている(狭義の共犯との区別のため、正犯意思は厚く書く)が、単純横領と業務上横領のいずれに問疑するか

判例は業務上の占有者を構成的身分として65Ⅰを適用し業務上横領罪の成立を認めつつ、科刑については単純横領を基準とする(∵占有者たる身分の者が加功した場合、65Ⅱで単純横領が成立するにとどまることとの均衡)

しかし、成立する犯罪と科刑がずれるのは罪刑法定主義の観点から支持できない

乙は占有者たる身分を有していない→65Ⅰで単純横領罪の共謀共同正犯が成立すると解すべき       

⑵背任罪の共謀共同正犯

成立

2 罪数

①横領罪の共同正犯②背任罪の共同正犯が成立、①②は観念的競合             

                                     以上