One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

本試平成25年民法 構成メモ(改正法準拠)

1. 雑感

典型的な論証を使う場面がほとんどなく、趣旨に遡った思考や判例の射程の検討など純粋な法的思考力が試される点である意味"異色"の問題。本試験の民法では一番好き。

なかでも自分の民法学習の中で強く印象に残っているのが設問1。

設問1は、「それっぽい筋」を書くこと自体は簡単に出来る。例えば、446Ⅱの趣旨は保証人に慎重な判断を期すことにあるから、保証人が保証契約の締結に関与していれば足りる、今回は電話で追認の意思表示を示しているからOK、という感じだ。

自分は上のような流れで答案を書き終えた後に違和感を覚えた。電話の追認でいいなら、法が書面での締結を定めた意味がないのではないか、と考えたのである。

原因は簡単で、趣旨に遡った後規範を定立するのに必要なワンクッションとなる「法の規定によりその趣旨が満たされる理由の説明」がないからだ。

今回の場合、「書面であれば慎重な判断を期することができる理由」を説明して初めて、446Ⅱの趣旨に遡った規範が定立できる。それを欠くと、「保証契約に保証人が関与することが必要な理由」を答えただけになる。

趣旨に遡った思考が必要な問題では、➀趣旨に遡る②当該規定がどのようにして①の趣旨をみたそうとしているのか思考を「バック」させる③②を補助線にして規範を立てるという流れを押さえる。このことを分かりやすく教えてくれた設問であった。

 

 

2. 構成メモ

 

【設問1】

1 AのCに対する保証債務履行請求に際し、Aは以下のような主張をする必要がある。

①主たる債務の発生原因事実

②保証契約の締結

③保証が書面でされたこと

2 保証債務の履行請求に必要な要件(一般論)

要件①②③を列挙。これらをみたす旨の主張をする必要がある。

3

(1)①

AB甲土地売買契約締結の事実を主張すればよい

(2)②

保証についての合意は、ACではなくABでされている

→Cへの効果帰属のためには、Bによる有権代理(99Ⅰ)が認められなければならない

ア 有権代理の要件は(1)法律行為(2)顕名(3)(1)に先立つ代理権授与

イ ・Bは保証契約の締結という法律行為をAとの間でしていること→(1)充足

・AB間で作成された書面(以下、「本件書面」という)のBの署名にはCの代理人であることが示されていたこと→(2)充足

  しかし、Bは保証契約締結に先立ってCから代理権を授与されていない→(3)不充足

無権代理になる

ウ 本件ではCが事後的に電話でBによるAC保証契約の締結につき異存がない旨述べている→この事実を主張することにより、Bの法律行為につきCの追認(113本文)があったことを基礎づける必要もある。

(3)③

ア 本件書面は、Bが勝手に作っており、作成にCが関与していない。 446Ⅱの「書面」は、保証人によって作成されたことが必要かが問題になる。

446Ⅱの趣旨は、重い責任を負う保証契約の性質から、軽率に保証人になることを防止し慎重な判断を求めることにある。書面によることで、保証契約の内容が正確に把握でき、その保証意思が書面の形で外部に表示されることで慎重な判断を促せるからである。

 →書面としては、必ずしも保証人が作成した必要はなく、保証人となろうとする者が記載された保証契約の内容を正確に把握し、保証債務を負う意思を書面において表示していれば足りる*1

イ Cは本件書面の作成はしていないが、Bから示された本件書面を現認し吟味のうえで保証契約の締結につき承諾している→内容は正確に把握している

しかし、電話での追認では外部への表示を目に見える形で残したとはいえない。追認の意思表示についても書面でする必要があった

 →Aとしては、請求に際しCが電話で書面を追認した以上446Ⅱの要件をみたすと主張することになるが、この主張は認められない。

 

【設問2】

1 Kg

債務不履行責任の追及

(1)債務の本旨に従った履行がない、という要件の検討が重要。

いかなる債務の履行をしなかったか指摘するのが問題になるが、善管注意義務として構成するのが穏当。

※用法遵守義務(616・594Ⅰ)にいう用法とは、使用収益の種類を意味するものであり(居住用につかう、店舗に使う…etc)、「壊さないように注意して●●に使う」というようなレベルまで要求されるものではないと考えられる(野球のバットに例えれば、用法は「野球のボールを打つのに使うこと」、善管注意義務の内容は「折損しないようにすること」)。今回は、カフェ店舗に使うという用法は遵守している。

Hが誤った工事で亀裂を生じさせた→借主側の人為的事由により賃借の目的物を損傷させたから、善管注意義務違反になる。

※ここで、借主が依頼した業者が亀裂を生じさせているが、これが借主側の事情であることは、貸主からみて変わりない。「違反があったかなかったか」というのを結果から客観的にみて認定する。

(2)損害の発生及び額

壁に生じた亀裂の修繕に要した費用100万円が損害。

(3)因果関係(416Ⅰ)

問題なく認められる。

2 E

(1)①606Ⅰ本文の修繕義務としてBが負うべきものだから、Fは責任を負わないという主張と、②壁の亀裂は専門業者Hが生じさせたものであり、415Ⅰ但し書にいう「責めに帰することが出来ない事由」が認められるとの主張が想定される。

もっとも、①は本件修繕がFの責めに帰すべき事由により生じたものである場合認められない(606Ⅰ但し書)。そこで、まず②について検討する

(2)主張②について

業者のミスであることをもって借主は責任を免れるのか、の問題。415Ⅰ但し書の解釈とあてはめをしていくことになるが、条文の文言には「契約の発生原因」「取引上の社会通念」に照らして判断する、としかない。今回、第三者である専門業者Hが亀裂を生じさせているところ、BがHによる内装工事を承諾しているという特殊事情がある。

段階的に考えてみる

①借主が目的物について工事をし、工事中のミスが原因で損傷が生じた場合、その工事のリスク(ミスに伴う責任)は貸主と借主のいずれが負うべきか?(同意の法的性質は無視)

→直感では、借主が負うべき

②それはなぜか?

→借りた物を現状に復して返還するという賃貸借契約の本質、及び利益を享受すべき者に損失・責任もまた帰するという原則からすれば、借主がリスクを負うべきである。←根幹にある価値判断。

③では、このリスク負担の話は、貸主が工事を承諾していた場合にも妥当するか?

→妥当する。承諾といっても、原則として許容されない工事について承諾しているだけで、それに伴う責任を借主について免除する意味を有しないから。

④本問における事情は、「責めに帰することができない事由」といえるか?

BはHを利用した工事について承諾しているものの、前述のようにこれは責任免除を意味するものではない。したがって、Hの誤りによって損害が生じた以上、善管注意義務違反の責任は工事を依頼したFが負うべきである。

→Fの善管注意義務違反は、「責めに帰することができない事由」とはいえない。*2

 

【設問3】

Gの相殺の主張→必要費償還請求権(608Ⅰ)につき30万円の限度で賃料債権と相殺する

Dの主張根拠:SCH13.3.13より、相殺をもって対抗できないとの主張

 

Q1:本件判例の判断の基礎・価値判断はなんだろうか?

A1:相殺に対する期待の保護の要請と、登記による公示からくる、物上代位を実現する要請の比較衡量。

事例においては、抵当権の優先弁済的効力が物上代位においても妥当し、これが保証金返還債務を相殺することによる事実的優先弁済の期待を優越したと判断された。

→抵当権に基づく物上代位>相殺

 

Q2:本問事例で上記価値判断にしたがうなら、どうなるか?

A2:債務の性質の違いに着目するのがアプローチとして取りつきやすい 必要費は本来貸主が負担するはずの費用であるから、相殺に対する期待は単なる金銭債権よりも高いのではないか

                                     以上

 

 

                      

*1:書面性を要求する趣旨について、判断の前提となる契約の内容を正確に把握することを重視する見解と、書面に意思を表示することを重視する見解とがあるため、結論はどちらでもよい。

*2:今回の場合、内装工事の利益は専ら借主に帰属するものといえる。したがって、「利益の帰するところ損失もまた帰する」という考えから、借主がリスクを負うべきことが素直に導かれる。

 しかし、①②③に加え、④が以下のような事情であった場合はどうだろうか。

(1)工事が目的物を使用収益可能な状態に戻すために必要だった場合

まさしく原状回復の過程で生じたこと・利益は貸主のみに帰属することを考慮すると、そのリスクは貸主が負うべきと考えられる。

(2)引き渡す前に貸主の側で工事をする予定であったが、業者選定能力に長ける借主に工事を依頼していた場合

引渡前の工事については貸主がリスクを負うべきであり、借主は「原状」の設定を代行しただけで、依頼を受けたことをもってリスクまで移転したと解するべきではない。→リスクは貸主が負うべきと考えられる。

(3)工事が貸主・借主の双方に利益をもたらすものであった場合(有益費)

賃貸借の本質からすれば借主がリスクを負うべきであるように思われる