One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

【使用教材紹介3】呉基礎本シリーズ 刑法総論・各論

本日紹介するのは、以下の2冊です。

 

刑法総論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 1)

刑法総論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 1)

 

 

 

刑法各論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

刑法各論 第3版 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

 

 【教材利用の目的:一周目のインプット】

 呉先生が執筆された刑法のテキストです。「基本刑法」などの有力教材もありますが、判例通説を徹底した教材として高い評価を得ています。

 一言でいうと、「シケタイ刑法を呉先生の講義を受けて加工したらこうなりました」という本。つまり、この本を読むことは呉先生の講義を受けるのとほぼ同値です。

 文章は平易でスラスラ読めますが、実は本番で書く答案を意識した文章にもなっています。ロジックを一つずつ積み上げて結論を出す思考法が身につきますよ。

 私が現在持っている刑法に関しての能力は、おおかた上の2冊で培いました。

 

 なお、私が利用目的について上記のような限定を付したのは理由があり、そこが本教材使用の上で注意すべき点になります。

 まず、本書は論文式試験を主眼に置いており、短答プロパーの知識などはあまり掲載されていません。そのため、1周目以降短答演習に移った場合はこの本が役立つ場面は少なくなります。言い換えれば辞書的用法はとれない、ということですね。

 次の点はやや複雑ですので、これからの使用を検討している方は注意してください。

 この本には受験生が欲してやまない(?)論証パターンがついています。この論パは記述の流れが見えるため、覚えやすいです。内容も実戦に堪えうるものといえましょう。

 但しこの論パには、私が起案を続ける中で気づいた一つの問題があります。

それは、「その論点が条文のどの文言との関係で出てくるのかが不明瞭である点」です。

 そもそも「論点」は条文の要件に当てはめていく中で生じるものです。そうすると、論証の書き始めはほとんどの場合条文のいずれかの文言に紐づけられることになるはずです。しかしながら、掲載されている論パの一部はかかる紐づけがないため、論点が宙づり状態になってしまっています(=いざ論文で書こうとしたときに書き出しが分からなくなる)。

 総論分野はそもそも条文から離れた議論が多いのでそこまで問題になりませんが、各論では論証と条文が離れると頭の中がごっちゃになってしまうので困ります。したがって、ある程度学習が進んだ段階でこの紐づけ作業を別途行う必要が出てきます

…まあ物はいいようでして、この紐づけ作業のおかげで論点の位置づけの理解がより進むことになるのは良いことだと思います。これが出来れば、本番で貸与される六法を論証想起のトリガーとして利用することが可能になります。

                                    以上

 

 

 

 

 

【使用教材紹介2】シケタイ憲法

教材紹介その2は、多くの受験生が最初に触れることになる憲法の教材です。

 

憲法 第3版 (伊藤真試験対策講座 5)

憲法 第3版 (伊藤真試験対策講座 5)

 

 

 

 【教材利用の目的:一周目のインプット】

いわずとしれた有名教材、「シケタイ」ですね。この本1冊で憲法を一通りインプットすることが出来ます。某塾生はこのテキストで学習することになります(私もそうです)。

 

書評は色々な方が書かれていると思いますので、端的に評価を述べさせてください。

分厚すぎ。独学には向かない

シケタイのほとんどに当てはまりますが、情報量が多すぎて独学が難しいです。特に憲法は改訂の度に厚くなってきており、第三版では660頁ほどにまでなっています。

内容の質・量は予備・本試・ロー入試に十分対応していますが、上記分量からすると講義を聴くのが前提になっているといわざるを得ません。

じゃあ辞書的用法はどうなのか、という話になりますが、予備校本なので辞書にするには記述が浅い。帯に短し襷に長し、との評価は免れないでしょう。

反面、記述のわかりやすさなどは流石シケタイといったところ。堅さがないので読むのに苦労しません。

一概にこき下ろすことはできませんが、現在は「基本憲法Ⅰ」などの良書が出てきているので、あえて中心教材にする必要はないでしょう。

 

余談:よく憲法基本書のスタンダードとして芦部憲法があげられますが、あれは最初の一冊にするには厳しいと思います。

 というのは、芦部憲法はあまりにも行間が多いからです。淡白な記述の裏に重要な議論が隠れていることがしばしばあります。短答確認用には適していますが、最初のインプット教材にするのは避けるべきです。

 

【使用教材紹介1】論文学習のパワーツール 『短期合格者愛用「論文処理手順マル秘ノート」』

 教材紹介第一弾は、DK先生の『短期合格者愛用「論文処理手順マル秘ノート」』です。

bexa.jp

【教材利用の目的】論文を書く上での思考過程や骨組みを学ぶ

 数々の上位合格者たちの答案から思考過程を抽出して、共通事項を「マニュアル」として整理したものです。予備校の入門講座ではなかなか教えてくれない「答案作成過程」を目で見える形で学べるということで、リリース直後から大きな反響がありました。

 

 正直言います。入門講座終えた直後の受験生はとりあえず買っておきましょう。

 合格者たちがどのようなプロセスで答案を作成しているのかが可視化されている、ほぼ唯一の教材です。はじめて論文を書く際には文字通りマニュアルとして役立ちますし、復習の際には論文向け学習に適したインプットのための一つの指標となります。

 特に憲法判例の射程表や行政法の答案構成方法、民法の要件事実一覧、会社法の条文マップなどは重宝すると思います。

 

 ただし、この教材を利用するうえで注意すべきことがあります。

①この教材に甘えすぎない

 前述のように、この教材には「直前見直し用」としての図表が数多く載っています。最初の方こそ見ながら作成してもいいですが、本番に参照できるのは六法のみです。図表がどのように作られているかを理解せずに丸暗記するのは全く意味がありません。まずは理解することを怠らないようにしましょう。

②直前期には劇薬になりうる

 直前期になってこの教材を読んだ場合には、むしろ混乱を招く可能性があり危険かもしれません。上で「入門講座直後の受験生は」と言ったのはこのためです。

 なお、すでに自分なりの手順を確立していて、答練で相応の成績が出ている方には別段この教材を利用する必要はないと思います。おそらくその手順は、この教材に載っているものとそれほど変わりがないはずだからです。(確認のために買ってみる、という手も無くはないですが)

③いわゆる「論証集」ではない

 なぜか勘違いされていることが多い点。この教材は「骨組み」の習得に特化しています。いくつか論証は載っていますがオマケに過ぎません。各科目の論証については別途インプットが必要です。DK先生は各科目の論証集も販売されていますから、それを利用してもいいでしょう。

 

 本教材の登場により、受験生全体の論文レベルが上昇するかもしれません。それほどのパワーを持っていると思います。

はしがき

 当ブログは、予備試験・法科大学院入試・司法試験を目指す方・目指している方向けに、教材の使用実感や過去問の検討メモ、総論的な勉強法の備忘録を公開するものです。

 

 筆者自体の情報は、twitter:@15B716X 及び不定期に発信しているツイキャスをどうぞ。

 

 各記事について概要を紹介いたします。

1.教材の使用実感

 見やすさを重視し、各記事の形式は ①教材名・リンク②教材の使用目的③内容概略・評価 で統一しています。

 個人的には②が重要だと思っています。なぜなら、どれだけ評判の高い教材を買ってもその用途を誤れば価値が半減するからです。また、目的が明確であれば、その達成に必要な範囲だけを使い倒せば足りるからです。(※その「目的」はあくまで私が定めたものであり、万人に妥当するものではありません)

 

2.過去問の検討メモ

 自主ゼミで検討した本試・予備試験の過去問について、解いたときの雑感や詳しめの答案構成(年度によっては答案)を公開しています。公開の理由は「書き物入れを新設しました」という記事で書いています。

 どの年度のメモも合格水準に達していると自負していますが、当然一受験生が書いたものに過ぎないことをご了承ください。ぶんせき本等の市販教材とは異なるアプローチを採っている場合もあります。

 

3.総論的な勉強法の備忘録

 「その他」のカテゴリーのみに属する記事は大体この内容です。日々の勉強で感じた事などをつらつらと書いたものになります。

 「総論的」とは、科目間に通底する思考のスタンス、という程度に捉えていただければと思います。各科目の解説などは、現状行う予定はありません。

 

以上のコンセプトでやっていこうと思います。よろしくお願いいたします。

                                     以上