One's Note

総論的勉強法・使用教材紹介・起案記録

本試平成27年刑法 構成メモ

 

1. 雑感

 占有がメインテーマの出題。行為者が3人いる時点で大変なのに、占有の有無を丁寧に検討する必要があるほか、正当防衛の検討までさせられる。占有の認定が重要であることは言うまでもないが、理論面で地味に難しいのが、カバンの取り返しについて、窃盗の既遂時期との関係でどの段階まで「急迫不正の侵害」があると認めるかという問題。

 

2. 構成メモ

甲の罪責

1 新薬開発課の部屋に立ち入った行為

建造物侵入罪

端的に認定でOK

2 新薬の書類を持ち出した行為

窃盗罪

⑴他人の財物

部長には書類の占有が認められるといってよい

もともとは新薬開発部におり、部長として書類の管理も任されていた

確かに後任の部長に引き継ぎ金庫の暗証番号も教えている

しかし、暗証番号自体に変化はないため甲も金庫を開けることができる

→甲は新薬の書類につき占有を喪失していない

もっとも、後任部長も新薬の書類について占有している

→後任部長との関係では「他人の財物」にあたる

⑵窃取

窃取の定義

→「窃取」にあたる

※既遂時点については、何故カバンに入れた段階で書類の支配が甲に移転したかを「答案に記載する」ことで説得的になる 例えばカバン内が私的領域と評価できるから、とか。

⑶ 故意及び不法領得の意思

端的に認定でOK

3 C所有のカバンを奪った行為

⑴ 問疑すべき罪

 強盗罪と窃盗罪の区別→「暴行」が人の反抗を抑圧するに足りるか

・暴行の態様

→そこまでには至らない(ひったくりの本質は、人の反抗を力づくに排除するわけではなく、反抗の余地がないことを利用して奪取する点にある。今回の行為態様で本当にそう言うことができるか、という話)。そこで窃盗罪と傷害罪に問疑

⑵ 窃取

端的に認定でOK

⑶故意及び不法領得の意思

 故意→客体を誤認識しているが、故意を阻却しない

 不法領得の意思→肯定(自己物として利用する意思あり)

⑷ 自己物の取戻し→正当防衛の成否

そもそもC所有のかばんなので、急迫不正の侵害がない→否定

※急迫不正の侵害の定義についてきちんと書くこと。

⑸ 責任故意の阻却―誤想防衛の成否

ア 規範/理論

イ 個別具体的検討

・窃盗罪はCが待合室を出て改札口に差し掛かった段階で既遂に達しており、「急迫不正の侵害」が終了しているとも

しかし、既遂に至った直後であれば、いまだ占有の侵害が現に存在しているといいうる

→本件でも、Cが持ち去ってから1分しか経過していないので、甲の主観では「急迫不正の侵害」が認められる

・「防衛の意思」→あり

・「やむを得ずにした」の定義

→あてはめ

必要性:電車に乗られた場合追跡が不可能・Cも話に応じずホームに向かおうとしていた

→電車に乗られる前にかばんを取り戻すために対抗行為をする必要があった

手段としての最小限度性:Cの体への接触を伴っていないが、転倒させるほどの力で引っ張っており、手段として必要最小限度であったとはいえない

→やむを得ずにしたとは言えない

⑹ 誤想過剰防衛の成否

・過剰性を基礎づける事情について誤認識していたとはいえない

→準用否定

⑺結論

窃盗罪成立。

⑻傷害罪

端的に傷害罪の成立を指摘。

→窃盗罪と同様誤想過剰防衛が成立。

4 罪数

①建造物侵入罪②窃盗罪③窃盗罪④傷害罪が成立、①②は牽連犯(54Ⅰ)、③と④とが観念的競合(同項)、両者が併合(45前段)

②③について36Ⅱが準用される旨論証

 

乙の罪責

1 甲の新薬書類持ち出しにつき窃盗罪の共謀共同正犯が成立するか

⑴ 共謀共同正犯の成立要件

⑵ あてはめ

 特に共謀の射程が問題になるが、乙が甲に異動の事実を伝えた後も新薬の書類と引き換えに300万円払う旨の意思表示をしている

→共謀成立時において、甲の所属部署にかかわらず犯行を実行することがその内容になっていたと認められる

→甲の行為は基づく実行といえる

⑶ 共犯の錯誤

共謀段階では業務上横領罪の主観であったが、客観的には窃盗罪を実現している

・抽象的事実の錯誤(主観>客観)

→重なり合う限度で軽い罪の故意が認められる

→懲役刑では上限に差がないが、罰金刑が定められている点で窃盗罪の方が軽い

物を領得することで財産権を侵害する点で両罪は共通

→乙には窃盗罪の限度で故意が認められる

2 乙には窃盗罪が成立し、甲と共同正犯になる

 

丙の罪責

1 

⑴甲のかばんを持ち去った行為に窃盗罪が成立するか

⑵「他人の財物」に当たることは端的に認定。

⑶「窃取につき」前述の定義に従い検討すること、及び占有の考慮要素を先出し

⑷個別具体的検討

・占有肯定方向

 距離20m

 1分しか経過していない

 意図的に離れている

 待合室の出入り口は1か所のみ

 当時甲と丙のほかに出入りしていない

・占有否定方向

 甲はかばんについてみていない

 待合室は誰でも出入りでき、ガラス張りで外から内部状況が確認できる

→占有アリ、丙は甲のカバンを「窃取」したといえる

⑸ 故意及び不法領得の意思

 故意→○

 不法領得の意思→甲のカバンを窃取することによって留置施設にいって寒さをしのぐというのは、甲のカバンを経済的用法に従い利用処分することで得られる効用ではない

→利用処分意思がない

⑹ 窃盗罪は不成立

2 器物損害罪

⑴「損壊」の定義

⑵ 個別具体的検討

 カバンの持ち去りは甲がカバンを使用収益できなくする点で効用を害する

→損壊を肯定

⑶成立。ただし、自首(42Ⅰ)により刑が任意的に減免される

                                    以上

本試平成28年刑法 構成メモ

 

1. 雑感

 事務処理系の流れを汲んでいる問題。おそらく重点的に検討すべきは、甲について共犯関係の解消が認められるか・丙の金銭持ち去り行為に強盗罪の共同正犯が成立するか(承継的共同正犯の肯否)の2点。他は淡々と要件充足性を検討すれば良いだろう。

例年に比べると難易度は低かったように思われるが、丁などは明らかに時間超過を狙って付加されている。記述のメリハリ付けを強制するためだろう。

 

2. 構成メモ

 

乙の罪責

1 V方に立ち入った行為

2 Vの顔面を蹴りふくらはぎをナイフで刺すなどして現金を強取した行為

強盗致死罪(240条、236条1項)

各要件、とりわけ問題にならない(死亡結果も強盗の手段たる暴行から生じている)

3 罪数

①住居侵入罪②強盗殺人罪が成立、②は甲と共同正犯 両者は牽連犯

甲の罪責

1 乙のV方立入り行為について

共謀共同正犯の成立要件3つはこっちで論証・定立しておく

甲は中止指示をしたにもかかわらず、乙はその後にV方に立ち入っている→共犯関係の解消が認められるか

たしかに、甲が乙に対して支配的な地位にあるから、中止指示をもって解消が認められるとも

しかし、犯行に用いる凶器や開錠器具を購入する資金を提供している→物理的因果性が及んでおり、共犯関係の解消にはこれらを回収するなど物理的因果性を遮断する措置まで必要

甲はこのような措置をとっていないから、共犯関係の解消は認められない

共謀共同正犯の要件はいずれもみたす

2 乙が現金を強取した行為について

・共謀に基づく行為といえることは若干丁寧めに書いておく。

・強盗について共謀が認められるので、結果的加重犯である強盗致死罪についても共同正犯として責任を負う

3 罪数

①住居侵入罪の共同正犯②強盗致死罪の共同正犯 ①②は牽連犯

丙の罪責

1 V方に立ち入った行為について

住居侵入罪

2 現金を持ち去った行為について

共謀に基づき、強盗罪のうち財物奪取だけに関与した者の罪責

→承継的共同正犯の問題。書きやすいのは積極利用説。

→強盗罪については肯定できよう。もっとも、反抗抑圧状態を利用しただけで、顔面を蹴った行為やふくらはぎを刺した行為自体を自己の犯罪の実現のために利用したとは言えない

→致死結果については帰責されないので、強盗罪の限度で共同正犯が成立する

3 罪数

①住居侵入罪②強盗罪の共同正犯 ①②は牽連犯

丁の罪責

1 V方に立ち入った行為について

住居侵入罪

2 キャッシュカードをポケットに入れた行為について

窃盗罪

キャッシュカードの「財物」性

3 キャッシュカードの暗証番号を聞き出した行為について

2項強盗罪の成否の問題

・丁の脅迫は単体では本罪の「脅迫」たりえないとも思えるが、甲によって作出された犯行抑圧状態を継続させるに足りるものではあったから、なお「脅迫」にあたる

・財産上の利益の具体的かつ確実な移転に向けられていることを認定

成立

4 盗取したキャッシュカードで現金を引き出す意図の下ATMのあるX銀行Y支店に立ち入った行為

建造物侵入罪(管理権者の承諾の範囲外の立入りであることを端的に認定すればOK)
5 ATMから現金を引き出した行為

銀行に対する窃盗罪

6 罪数

①住宅侵入②窃盗罪③強盗罪④建造物侵入罪⑤窃盗罪

①②・①③が牽連犯、全体として科刑上一罪 ④⑤が牽連犯 両者が併合罪                                                                                               

                                    以上

本試平成29年刑法 構成メモ

 

1. 雑感

 現行の出題方式に移行する前の最後の出題で、おそらく最も書く論点の多い過去問。その分、網羅的に復習することができる良問でもある。ちなみに、財産犯の大部分は刑法事例演習教材の第13問において扱われているトピック。死者の占有の誤認識は同書の好んでいる(?)トピックであり、これによって同書が本試験のネタ本になっているという噂が裏付けられる形になった。*1

以下は復習時に残っている疑問点・反省点。

①腕時計XとYの購入は別の機会になされているので、詐欺・有印私文書偽造・同文書行使罪はそれぞれについて成立しそうだが、分析本ではまとめて論じている。個々の理由がイマイチ分かっていない。また、Yの購入申し込み行為は詐欺罪と背任罪の両罪名に触れるが、牽連犯との関係でどう処理すればいいのか分からなかった(メモでは4つまとめて科刑上一罪になるとしている)。
②乙の殴打行為について、甲との共謀に基づく行為と認めた方が戦略上は良かったと思う。

2. 構成メモ

1 甲がA名義のクレジットカードで腕時計Xを購入した行為

詐欺罪(246Ⅰ)

・名義人の承諾

2 甲が売上票にA名義の署名をした行為

有印私文書偽造

3 甲が売上票を店員に交付した行為

偽造有印私文書行使

4 甲がA名義のクレジットカードで腕時計Yを購入した行為

詐欺罪→同上

Aとの関係での背任罪

5 甲が売上票にA名義を署名をした行為

同上

6 甲が売上票を店員に交付した行為

同上

7 乙がAを石で殴打し傷害を負わせた行為

⑴ 乙の罪責

・傷害罪の構成要件に該当

・正当防衛の成否(丁寧に)

「やむを得ずにした」の要件はみたさないと思われる

→傷害罪成立、過剰防衛で任意的減免(36Ⅱ)

⑵ 甲の罪責

・甲は乙の殴打行為に関与していないが共同正犯として罪責を負うか

成立要件→①共謀②①に基づく実行行為③正犯意思

今回の場合、①③はみたすが、共謀はあくまで正当防衛をすることに向けられており、Aへの攻撃を含んでいないので②をみたさない

→乙の殴打行為については罪責を負わない

【共謀の射程が及ぶことを肯定した場合】

・結果的加重犯は基本行為に重い結果を生じさせる危険性があることを内包している→重い結果について過失は要しない→行為と重い結果との間に因果関係が認められるならば、行為者の過失を問わず結果的加重犯の共同正犯が成立する

→傷害罪の共謀共同正犯の構成要件をみたす

・違法性は連帯するので、乙について正当防衛が成立しない以上違法性は阻却されない

・甲は乙が石を使って殴打したことを認識していない→責任は行為者ごとに検討するところ、誤想過剰防衛として責任故意が阻却されないか

→甲の認識を前提とすれば、補充性が認められる+乙とは背中合わせで乙の行動を把握することはできない状況にあったため、甲が過剰性を基礎づける事情を誤認識したことについて過失も無いと考えられる

→責任故意阻却。甲は乙の殴打行為について責任を負わない

8 Aの財布を持ち去った行為

⑴ 甲の罪責―窃盗罪

 死亡していると誤認したことが窃盗罪の故意を阻却するか

⑵ 乙の罪責―器物損壊罪

 損壊の意義

⑶ 共犯関係

 器物損壊罪の限度で重なり合う

9 罪数

甲→X,Yの購入行為についてそれぞれ①詐欺罪②有印私文書偽造③偽造有印私文書行使

が成立し、Yの購入行為については別途➃背任罪が成立。さらに➄窃盗罪が成立し、器物損壊罪の限度で乙と共同正犯になる。②③は牽連犯、これと➀とが牽連犯。①④は観念的競合 よって、Xについて①②③が科刑上一罪、Yについて①②③④となり、両者が併合罪 これと⑤とが併合罪

乙→①傷害罪②器物損壊罪の共同正犯が成立し、両者が併合罪                                以上

*1:同書が好む論点として他に挙げられるのは、住宅・建造物・邸宅の囲繞地への侵入です。最近の本試験では130条前段の罪は検討対象から除外されていることが多いですが...

2021 TKC模試雑感と復習・今後受験される方へ【長文】

 

お久しぶりです。

 

司法試験直前期なので、短答・論文に向けた追い込みを進めています。

そんな中、先月受けたTKC模試も返ってきていますので、この段階で復習することにしました。ここ4日間で全体的に見直し、関連するテーマについても知識を確認しています。

 

月並みながら復習していて思ったのは、「模試はしょせん模試」「採点者の力量による得点のばらつきがあまりに大きい」ということです。

形こそ本試にそっくりなものの、問題・論述例がいかにも予備校の答練で、個々の論点が設問ごとにバラバラに聞かれている印象を受けました。

合格推定圏内でしたが、個々の論点では理解の雑なところがあったし、時間切迫の答案も2通作ってしまったので、しっかり最後の詰めをしていこうと思います。

以下では、2021TKC模試の"復習実感"及び今後受験される方への個人的なアドバイスを書いておきます。

 

出題内容に言及するほか、否定的な評価を多分に含むことをご了承ください(高評価じゃなかったやつの戯言と思ってください)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第1 復習雑感

1.選択科目(経済法)

出題の予想されている非ハードコアカルテルと、行為類型の多い拘束条件付取引・再販売価格拘束(委託販売)のセット。

問題文が箇条書きに近く、最初なんだこれはと思いましたが、本試のR2がまさにそんな感じだったので、雰囲気を真似たんだと思います。芸が細かい。

いずれもこれまでに出題のなかったテーマで、委託販売の方は自分もマークしてなかったので結構助かりました。

素点は高く、極めて優秀との講評がついており舞い上がりましたが調整で20点下がりました。残念。

 

2.公法系

憲法

コスプレイヤーの公園利用を制限する立法の憲法適合性を論じさせる問題。憲法要改善の自分としては「なるほど」と思う出題でした。

しかし、論述例が微妙でした。論述例はいくつか言及していない事実があったほか、分けるべきところを分けておらず、判例泉佐野の射程を検討せずにそのまんま貼り付けています(出題趣旨では射程を検討して欲しかったとあるのに…)。

 

ずっと憲法は水物だと思っていましたが、模試でさらにその考えを強めました。理論面詰めるより多数派にまぎれる書き方にとどめて他の科目に力を注いだ方がいい、と。

すなわち、判例の立場に言及するといっても、判断枠組みのところで使うとなると大抵は比較衡量なわけで、あてはめはスカスカになるのがオチです。あてはめを充実させようとなると学者がいわば片面的に整理した(というと芦部先生に怒られるかもしれませんが)審査基準論と整合させることになるんでしょうけど、それには正確な理解が求められ、かなりの労力を要します。その分民事系や刑事系の理解を詰めた方が総合点は上がります。

 

断片的ですが復習メモを残しておきます。構成自体は参考答案・論述例よりまともだと思います。細かいあてはめ部分は割愛しています。

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第1 個人利用に対する規制

1 文面上の問題

⑴「不適切衣装」を着用しての利用が禁止されているが、何が「他の公園利用客に対して著しく不安若しくは恐怖を覚えさせるようなもの」に該当するか不明確

⑵「表現」該当性への言及、萎縮効果の回避の要請→徳島市公安条例展開

 

⑶ あてはめ

 武具や防具、妖怪やゾンビが印刷されたTシャツに対し「著しく不安若しくは恐怖を覚える」かは人によって異なる→これらの衣装を着用して本件公園を利用しようとする者にとっては、その衣装を着用しての本件公園の利用が許されるか否かの判断を可能ならしめる基準を読み取ることができない

→例示などをしないと漠然不明確故に無効とされ得る

2 開放エリアにおける規制

⑴開放エリアにおいて、コスプレして本件公園を利用する行為が規制される→当該行為をする自由を制約し憲法21Ⅰに反しないか

⑵制約があることの指摘

保障面については1で言及済み

⑶判断枠組み

・権利の重要性

反対意見:低価値表現を含む+模倣であり自己実現・自己統治に資さないから重要な権利ではない

確かに、残虐表現を時として伴う また、模倣の側面が強く、民主政の過程との関連性もうすいことは否めない

しかし、全てのコスプレが残虐表現を伴うわけではない

また、衣装の作成・着用やシーンの再現には収集した情報を自分で再構成する知的作業が伴う→自己実現の価値を有する

さらに、開放エリアは伝統的PFともいえるので、権利の重要性高まる

・制約の強度

今回の規制が表現内容規制なのか表現内容中立規制なのか

開放エリアにおける不適切衣装の着用を一律に禁じる(案3Ⅰ)→衣装の内容にかかわらない、表現内容中立規制

→LRA

⑷個別具体的検討

3 有料エリアにおける規制

⑴ 同じく21Ⅰに反しないかが問題

⑵ 保障、制約はほぼ同じ

⑶ 判断枠組み

・権利の重要性

有料エリアは、入場料を払えばだれでも入れる点で駅構内に類似した空間といえる+パブリックフォーラムである無料エリアと隣接しており、利用者層こそ異なるが公園としての利用形態が著しく異なるわけではない→同様に重要と考えてよい(現場思考)

・制約の強度

不適切衣装の着用を原則禁じる+許可にあたっては衣装の内容を審査する(案3Ⅱ、Ⅲ)→衣装が伝達する内容に着目した規制、すなわち表現内容着目規制

→厳格審査基準

⑷個別具体的検討

第2 集団利用に対する規制

1 

⑴コスプレ集会も「集会」にあたり、21Ⅰで保障される

⑵案4Ⅰはコスプレ集会を原則として禁止しているので、上記行為の自由を制約している

⑶判断枠組み

問題点①:コスプレ集会をする自由が重要な権利といえるか?言い換えれば、成田新法事件の示した保障根拠がどこまで妥当するのか

コスプレ集会に民主政の一過程を担う側面はなく、重要ではないとの反論が想定される

判例:①集会は国民が様々な情報意見に接することで自己の思想や人格を形成発展させることに資する

   ②集会は相互に意見や情報を伝達し交流する場として重要

事案:①各人が自分で再構成した情報を見せ合い表現することで、自己の思想や人格の形成発展に資する

   ②劇中シーンの再現は複数人のコスプレイヤーによって成立することもある→本件公園でのコスプレ集会は、コスプレイヤーが相互に意見や情報をやり取りする場として重要

→重要な権利といえる

⑴案4Ⅲが「正当な理由」のある場合に限り不許可に出来るとしているところ、重要な権利に対し許可制という強度の制約を課していることに照らし、集団利用に対する規制を憲法21Ⅰに反しないように運用するには、かかる「正当な理由」について厳格に解釈すべきである

泉佐野市民会館事件判決は同様の規定を定めた条例につき厳格な解釈を採ったが、判例は他の者の立ち入りが制限される屋内において行われる政治集会に関する事例であった 

今回の事例は、他の者が出入りしうる屋外で行われるものであるし、内容もコスプレをして劇中シーンの再現などをするもの

→管理権との調整を図る必要性が判例の事案に比べて高い+コスプレ集会を行う自由も重要な権利ではあるが、自己統治の価値を有する政治的集会には劣る

判例よりは緩やかに解釈すべき。

具体的には、「正当な理由」とは、コスプレ集会を保障することの重要性よりも、それによって公園を利用する者の心理的平穏や子供の健全な発達が害される危険を回避する必要性が優越する場合を言うと解する そして、ここにいう危険とは、具体的なものであって危険の発生が客観的事実から相当の蓋然性をもって予測されるものをいう                                                

                                    以上

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行政法

判例をスクラップにして事実いじって出した感じでした。ローの期末レポートそっくり。論述例と解説は分かりやすかったです。ただここまでストレートな出題はないかと...

TKC...というか伊藤塾行政法の答練系結構強いんですよね。

 

3.民事系

民法

出題予想としてなかなか狙っているなあ、という問題でした。出題も近時の本試に近い。JR東海事件は今年の設問3のダークホースなんじゃないかと思っています。

論述例・解説共に文句は特になかったです。

 

⑵商法

事業譲受人に対する債務履行請求は、過去にコンプリ答練とかでも出ていました。正直本試で出すのか分かりませんが、演習題材としては助かりました。他の設問は差し障りのない感じでしたね。428Ⅱによる適用除外が会社を代表して直接取引をした取締役にも適用されるか、という話はリークエでもあっさりとしか載っておらず、完全に盲点でした。

 

民事訴訟

所有権確認の訴えの請求原因事実を前提にして考えさせるのはびっくりしました。釈明義務も正面からは久しく聞かれてないので、しっかり復習しました。

…が、設問3は良問とはいえないんじゃないでしょうか。

前訴で釈明義務違反があったことを前提に、「前訴確定判決の既判力が後訴に作用しないとの立論をせよ」という問いでした。

私の理解ですが、既判力って⑴作用する場面か(訴訟物を比較検討する)⑵作用するとして何に生じるか(範囲を検討する)⑶範囲内の事項について前訴確定判決の既判力が後訴でどう作用するか(積極的作用・消極的作用を検討する)という3つのレベルで検討する事項があります。

上の問いって、⑴の問題であるようにも⑵の問題であるようにも取れませんかね?仮に⑴だとすると、まさしく114Ⅰの原則をひっくり返す話なので、もはや再審の方に話が近づきます(理論的には相当厳格に検討する必要があるんじゃないでしょうか)。⑵は良くある話ですが、問題文からはイマイチ当事者の主張が分かりません。自分の答案では混乱して結局ぼかして書きましたが、ここに関しては「悪くない論証です」「検討はきちんとできています」との指摘しかなく、模試の論述例を読んでもどのレベルで話をしているのか分かりませんでした。あんまり気にしすぎない方が良いのかもしれませんね。

あと過去問を見ていて思うんですが、既判力の縮減ってちょっと乱暴な議論じゃありませんか?

指示に従うだけなら、既判力及ぶ場合の不都合性指摘して、既判力の正当化根拠書いて、今回妥当しないこと書いて終わりです。でも、既判力の範囲(ないし作用場面)を不文の規律でぐにゃぐにゃ動かしたら114条の意義が薄れるし、処分権主義との関係でも問題になるんじゃないでしょうか。自分はいっつもこの手の議論がきた時信義則で保護すればいいんじゃないの、と思っています。まあ、聞かれた以上は書きますが…。

色々書きましたが、要は「こすられまくってるところを聞くなら、問いはもう少し具体的にしてほしいなと思った」ってことです。

 

4.刑事系

⑴刑法

設問1は令和元年重判掲載の偽計業務妨害事例、設問2は過剰防衛の量的過剰と共同正犯、設問3は設問2の結論を変える構成を考えさせる問題。

個人的に今回の模試で一番作問が悪いと感じたのは刑法です。

設問1は令和元年重判の事例(名古屋地裁金沢支部平30.10.30)をもとに作られてますが、重判読んでないんじゃ?と思わざるを得ませんでした。

この重判の判旨と解説を読めば、「妨害された「業務」はどれか」について論じたものであることはすぐわかります(「偽計業務妨害の対象業務は、飽くまで、被告人の本件行為がなければ遂行されたはずの…刑事当直等の業務をいうのであり、…被告人の任意同行、取調べ等の本件捜査ではない」という判示)。

これを前提にすると、➀偽計業務妨害罪の「業務」に権力的公務を含むか(偽計は強制力で排除できないため、本罪との関係では権力的公務も「業務」に含まれる、と解する見解があります)という見解分岐がまずあります。そして、➁「業務」には権力的公務を含まないと解した場合、今回妨害された業務が職質等の権力的公務であると考えるなら本罪は不成立、宿直等非権力的公務が害されたといえるなら本罪は成立ということになります。③そこで、以下裁判例の判示に即して今回害される(危険が生じた)「業務」について厚く論じる…という流れになるはずです(裁判例がこういう流れで検討しています)。私は、この流れで答案を書きました。

一方、模試の答案例では、「業務」について権力的公務以外の公務も含むというお決まりの論証だけ貼り付け、あっさりと非権力的公務が害されたと認定。そして、「妨害」のところで偽計業務妨害罪が抽象的危険犯か侵害犯かという論点を大展開。ここで犯罪の成否を分けています。対立しているわりに書けることはないので、当然、分量も少ないです。

この"題意"をくみ取れなかった結果、答案はなかなか酷い点数になりました。

偽計業務妨害罪の性質を聞きたいなら、この裁判例を持ってくる必要が全くありません。なぜこのような論述例にしたのか作成者に聞いてみたいところですね。

 

設問2は、第1暴行について新しい「急迫」性の判断基準を踏まえて共同正犯・正当防衛の成否を論じさせ、第2暴行について共謀の射程と因果関係を問い、付加的に死体遺棄の主観で傷害致死を実現した場合の処理を求めるもの。

侵害の「急迫」性自体はホットなので予想通りの出題でしたが、共同正犯や抽象的事実の錯誤も絡まっててなかなか重い問題でした。

第1行為について、論述例をみると傷害致死に問疑していますが、Cが気絶したのは第2行為なので適切ではないんじゃないでしょうか(第1暴行では鼻折ってるだけです。第1暴行で検討するにしても、Dの第2行為・甲の運搬/遺棄行為が介在しており、かつそれが死亡に大きく寄与しているので因果関係が否定されると思います)。

あとは、正当防衛の検討における「急迫」性のあてはめが雑な感じしますね。事実を羅列しているだけです。たしかに、新判例って考慮要素がかなり具体的で、規範に対応した評価を改めてする必要があるか?という気はします。しかし、規範定立の段階で論述例も使っている「緊急状況」性を基礎づける、とかワンクッションを挟んだ方がより説得的ではないでしょうか。

第2行為については、最判平6.12.6を用いて甲も罪責を負うか検討する必要があります。私はこの判例を十分に理解しておらず、専ら共謀の射程に位置づけられるものかと思っていましたが、そうではないんですね。規範を判例が出している以上、それに即して書かなくちゃいけないなと痛感しました。

砂末吸引のオチはお決まりなんですが、死体遺棄罪(190条)の規定探すのに時間をとられ、過失致死まで書く時間がなくなってしまいました。反省。

 

設問3は、設問2で第1行為に正当防衛が成立することを前提に、甲がなお傷害罪の共同正犯を負う(つまりDの第2行為について共同正犯として責任を負う)構成を検討せよというもの。

設問2で判例の出した規範の理論的位置づけが複数あるにもかかわらず、ある1つの見解に立たないと題意に沿って解くことが出来ないという悪問です。本試と異なり、1つしか道が許されていないのが致命的。問題設計自体がおかしいという意味では設問1より酷いかもしれません。

正当防衛後の追撃行為につき、正当防衛にしか関与していない者が共同正犯として責任を負うかは、➀共犯関係からの離脱があったかで処理するアプローチと、②共謀の射程が及んでいたかで処理するアプローチとがあります(解説・答案例は個々の分岐自体を放棄していると思います)。

前掲判例の判示を読む限り、「共同意思から離脱したかどうかではなく」と言っているので、②の方が判例に親和的な気もします。

しかし、新たな共謀があったと評価できる事実のない本問では、設問2での検討と事実評価を変えることによってしか共謀の射程が及んでいたということができません。つまり、②の立場でいくと殆ど書くことがなく、点数がもらえないわけです。

➀の立場にたてば、様々な判例の出した基準に従って離脱の有無を検討することになりますが、本問と同様の事例下で解消が認められることはまずないと思いますので、共同正犯の成立を肯定することは容易です(Dの行為を止めていないといった事情をふんだんに使えます)。もっとも、少なくとも前掲判示の文言とは真っ向から対立する処理なので、一言くらい理由がないと矛盾論述になってしまうと思うのですが、答案例・解説では一切の理由付けがありませんでした(今年の採点実感曰く、違う見解を紹介する場合に他説批判や理由付けは必要ないとのことなので、それを踏まえているのかもしれません。が、判例の規範を設問2で使っておいて平然と共犯関係からの離脱として論じるのは流石に矛盾記述と評価されると思います)。

まとめると、設問3は判例と親和的とは思われない特定の見解にたった場合に点が高くなる設計になっています(普段とっている見解と異なる立場からの立論を求められることもありうると考えてこのような出題にしているそうですが、作問者側がその要請に十分応えられていません)。

 

刑事訴訟法

設問1小問1は、➀おとり捜査の適法性に関する一般論②重大な違法のあるおとり捜査により公訴提起された場合に裁判所が採るべき措置③重大な違法のあるおとり捜査によって得られた証拠の証拠能力について問うものでした。おとり捜査は長い間出題がありませんし、任意処分の限界を超えて収集された証拠の証拠能力については確立した判例がありません。怪しいから確認しておこう、という主旨でしょうね。

➀について

自分はおとり捜査の適法性判断基準について、総合衡量で判断する立場を採用しています。論述例も同様の立場に立っているようです(なお、有名な最決平16.7.12は「少なくとも」の留保がついているため、判断基準としての汎用性はありません。が、さも一般的な要件として使っている答案や論証例が多いように思います)。

なお、添削者いわく「おとり捜査の適法性に関しては独自の判断枠組みでなく判例に従ったものを書きましょう」とのことでした。独自...?そして判例とはどの判例を指しているんでしょうか…。一般的に使える判例規範があるなら是非知りたいところです。これで平成16年決定とか言われたらがっかりしますが。

➁について

裁判所が違法の宣言をしないと将来の違法捜査抑止につながらんしなあと思って公訴棄却判決をすべきと書きました。違法の宣言、といっておきながら何に違反するのか書けていませんでした。適正手続の要請(憲法31条)に違反する、など示した方が良かったです。リークエ第2版の278頁に載っていました。

③について

重大な違法性を有するおとり捜査によって収集された証拠の証拠能力に関しては定説がないので、リーディングケースである昭和53年判決の枠組みを修正するか、同じ枠組みの中でうまく説明をつけるかのどちらかによることになると思います。

最大の障壁は、判例が「令状主義の精神を没却する」と修飾して違法の重大性要件を加重している部分ですね。仮にそのまま規範を使った場合、おとり捜査により収集された証拠を違法収集証拠排除法則により排除する余地はなくなります(任意処分には令状主義が妥当しないからです。実際、任意処分の違法を理由に物的証拠を排除した実例は存在しません)。

この結論が妥当でないとするなら、判断枠組みを修正する必要があります。加重機能を殺すわけにはいきませんから、自白法則・違法排除説にならって「憲法刑事訴訟法の所期する基本原則を没却するような重大な違法」とでもするのがいいでしょうか。

もう一つのアプローチとしては、前掲判決の枠組みを維持しつつ、おとり捜査にも妥当すると解することが考えられます。

前掲平成16年決定調査官解説では、「司法の廉潔性を維持するという思想はおとり捜査にも妥当するはずであるから、おとり捜査が(違法収集証拠)排除法則の適用される一場面となることは自然の成り行きといえよう」との指摘がされています(解説286-287頁)。

また、おとり捜査ではなくなりすまし捜査についての見解ではありますが、「なりすまし捜査から現行犯逮捕を経て差押えへと至る一連の証拠収集過程」を観察して、令状主義の精神を没却する重大な違法がある場合には違法収集証拠排除法則が適用される、との構成も考えられます(葛野尋之「なりすまし捜査の違法性と収集証拠の許容性」法律時報90.5.146-147)。

私は判例の規範を示しつつも、なるべくそのままの規範で説明することにし、葛野先生の見解を採りました。何で一般的ではないものを書いたのか、と言われそうですが、ローの演習ゼミで扱ったからです。

すると添削者からは「任意処分には令状主義の精神は妥当しないのではありませんか?」との指摘が。いやそれはわかってますよ…答案にもその旨書いてあるんですけどね。ちなみに参考答案では、「令状主義の精神を没却する」との記載部分に指摘・減点はありませんでした。採点者の違いですかね。

論述例はどう書いてるんだろうか、と思ったら、昭和53年判例の「令状主義の精神を没却する」を削って終わり。これだと判例の理解(要件を加重している部分)を示していることにもならないので自分のより酷いのでは…?参考答案にも論述例と同じように書いているものがありましたが、意図的に加重部分を抜いたのかは不明です。

設問1小問2は自ら書いたおとり捜査の適法性の判断基準に従いあてはめるだけなので割愛。

設問2は捜査報告書の証拠能力を問うもの。こすられまくった伝聞の問題です。本試に倣ったのか「複数の要証事実を想定」せよとありますが、立証趣旨がないのって実務的にあり得ない設定じゃないですかね…でもとにかく考えるしかありません。

捜査報告書の伝聞証拠該当性・適用される伝聞例外規定への言及はお約束。

…と思ったのですが、私の答案はここの段階で減点されており、見ると「伝聞証拠の定義は正確に押さえましょう」とありました。

私の書いた伝聞証拠の定義は、「公判外の供述を内容とする供述又は書面で、要証事実との関係で供述内容・記載内容が真実であることの証明に用いられるもの」です。添削者はこのうち下線部分を修正し、「の真実性が問題になるもの」と書き直し、2点減点していました。

私の書いた定義はおおむねリークエと同じですし、ローでも減点・指摘されたことはありません。添削者は「内容が真実であることの証明に用いられる」=「真実性が問題になる」という関係を理解していないと思われます。

一番問題になるのは、捜査報告書に添付されているラインのスクショ部分。ここにある会話部分は伝聞証拠にあたり、別途伝聞例外の検討を要するのか検討することになります。

前述の通りなぜか立証趣旨の言及がありませんので、争点になっている部分から要証事実を考えていきます。

乙は犯行への関与を否認しているので、まずはスクショ部分を乙の犯人性の立証に用いることが考えられるはずです。つまり、スクショ部分の会話の存在及び内容が証明できれば、20日に甲が大麻1包を所持していた事実、及び乙方から大麻が発見された事実と併せて、乙の犯行への関与、すなわち乙が大麻を保管していた事実が推認できます。この場合はラインの会話内容の真実性を証明するために会話部分を用いるわけではありませんから、伝聞証拠にはあたりません。

添削者は「甲に関与していたというだけでは犯人性が推認できません」と指摘していました。私の答案では客観的事実との合致を所与の前提としてしまっていたため、手痛いミスです。

問題は、もう一つ要証事実を考えなければならないこと。他に思いついたのが故意の立証だけだったので、故意があったことが要証事実だ!と思いました。

しかし、この検討は間違っていました。まず、故意があったことが要証事実とした場合、少なくとも会話内容から乙の故意が証明できなければなりませんが、残念ながら乙は「うん」「うるさい」しか言っておらず、乙の故意を証明できるだけの自然的関連性がありません。

再整理すると、乙の故意を立証するために、スクショの会話部分を要証事実とすることになります。この場合、会話の存在及び内容から乙が甲から受け取ったチョコを少なくとも違法薬物と認識していたことが推認できるので、やはり非伝聞になります。

しかし、下線部を見ていただくと分かる通り、要証事実はいずれも「会話の存在及び内容」です。要証事実を複数想定するという問いに応えられていないことになります。

論述例では、「甲が乙に大麻樹脂を預けたこと」と、「チャット履歴の存在及び内容」となっていました。前者の場合スクショ部分を甲の会話内容が真実であることの証明に用いるので伝聞証拠にあたり、甲は供述不能ではないので伝聞例外の要件をみたしません。一方、後者の場合は会話の存在自体から乙の犯人性を推認できるので非伝聞になります。

複数の要証事実を想定することが求められている問題では、争点に照らして証明・推認したい事実を考えた後、その推認過程の中で当該証拠はいかなる事実を「証明」できるのか慎重に考えねばなりませんね。本試一か月前になって今更何を言ってるんだ、と自分にがっかりしますが笑。

設問3は、反対尋問を経ない公判供述の証拠能力という、今まで問われたことがない論点が問われました。模試では以下のような記述をしました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

公判供述について、反対尋問を経なかった場合は憲法37Ⅱとの関係で問題が生じる。

ある見解は反対審問権を保障する見地から一切証拠能力を認めないとするが、伝聞証拠でも反対尋問に代わる正確性の保障がある場合には証拠能力が認められるのだから(322-324)、これと平仄を合わせるべき。

→具体的事情に照らし、正確性の保障があったといえるから証拠能力あり。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

問題点として、まず伝聞証拠に該当しないことの言及がありません。設問2で伝聞証拠の定義を公判廷での反対尋問を経ない供述としていた場合、Aの証言は伝聞証拠にあたるので反対審問権の話など無関係に伝聞例外の検討をすればいいだけです。一方、大多数が採用していると思われる前述した定義にあてはめると、伝聞証拠ではないので証拠能力が認められそう、という話になり、固有の論証を展開することになります。

第2の問題点は、固有の論証を忘れており、伝聞例外の規定の準用に近いことを述べているにとどまることですね。自分の用意していた立場が証拠能力完全否定説で、肯定する見解の書き方を押さえていなかったことが原因です。問題文は明らかに伝聞例外らしき事情を検討して欲しそうでしたから(A死んでますし)、ええ!?と思って焦ってでっち上げました。

解説を見る限り、完全否定説はそもそもあるのかも怪しいですね笑 なんで自説にしていたのか分かりません。これを機に自説を改め、きっちり復習しようと思います。本番じゃなくて良かった…。

 

第2 今後受験される方へ

総括すると、TKC模試は

➀科目間で問題の質に差がある

②各論証・あてはめは微妙(伊藤塾に依拠していると思うが、自分が知っている伊藤塾の論証の劣化版が使われていることがままある)

③採点者の実力に大きく左右される

という3つの特徴を有しています。今後模試を受験される方は、以下の点を留意されると良いかと思います。

■受験に際して

・ピーキングの練習にする

・中日を含む5日間の過ごし方を確認する

・時間配分を意識する

■答案返却・復習に際して

・採点方法が本試と違う以上、論文の素点や調整後の得点を気にし過ぎない(これは僻み抜きです 高得点に越したことはありませんが)

・採点者の実力はわからないので、その影響が小さいと考えられる事実のあてはめで点を取れているか/定型的な論証で点を取れているかを重視する

 

                                     以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本試平成18年憲法(LO型に改題) 構成メモ

 

 最終調整段階にあって一番の課題が憲法で、現在時間不足を解消するために色々と試行錯誤しているところです。今回はH18をLO型に改題し、改善点を洗い出す形で構成の練習をしました。

改題は以下の通りで、争訟性を前提としないものにしました。これに伴い、訴訟選択や国賠・損失補償に関する論点、法律施行後に関する事実は削除しています。

【設問(改題) T社及び立案担当者から相談を受けた弁護士の立場にたって、警告表示法の憲法適合性を論じなさい。必要に応じて、判例や異なる立場にも言及すること。】

復習にあたっては、以下の「憲法ガール remake edition」を参考にしました。

 

憲法ガール Remake Edition

憲法ガール Remake Edition

  • 作者:大島 義則
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: 単行本
 

 

 

1. 雑感

元々の出題では三者対立型で訴訟選択・国賠訴訟・損失補償も論じさせるので、極めて分量が多い。各人権に関する検討が薄くなるので、正直良い問題ではないと思う。

問題となるのは、消極的表現の自由・営業の自由・財産権。他にも喫煙の自由や購入者の情報受領権、刑罰法規の明確性など書こうと思えばいくらでも出てくるが、特に問題になる点について厚く論じるのが大事(自分はこれが出来ていない。問題点抽出後、何についてフォーカスするかもう少し慎重になりたい)。

以下は箇条書きで思ったことを書いておく。

・消極的表現の自由については、保障段階で判例を想起するのが難しい。というか無理だった。

・通常人からみても表現主体が製造業者だとは思わないから表現の自由の問題じゃない、というのは言われてみればその通りである。

・特定警告文のうちオだけは違憲になると考えた時、どのように摘示するのが適切か分からなかった。

・按摩師等法違反事件や国有農地特措法事件など、判旨をしっかり理解できていないものが多い。これも時間ロスにつながっている。

 

 

2. 構成メモ

 


⑴ 一般警告文及び特別警告文の表示を義務付ける旨定める警告表示法3条1項、4条、5条(以下、「本件規定」とする)は、たばこ製造業者が自己と異なる見解をパッケージに表示しない自由を侵害し憲法21条1項に違反しないか
⑵ 消極的表現の自由が保障されるか
(サンケイ新聞事件参照)
⑶ もっとも、上記自由に対する制約がない
確かに、5条は特定の見解を表示するように強制するものである 
しかし、通常人は政府が表示主体であると認識するはずだから、自己と異なる見解の表示を不特定多数人に強制される場面とはいえない
⑷ したがって、本件規定はたばこ製造業者の消極的表現を侵害するものではない

⑴ では、本件規定は、たばこ製造業者が包装について自由に表現内容を決定する自由を侵害し、21条1項に違反しないか
⑵ たばこの箱の包装→広告スペースであり、そのデザインを決定する自由は表現の自由として21条1項で保障される
 ここで、営利的表現は民主的政治過程に直接かかわる情報の伝達を含まないため自己実現の価値に乏しいことから、表現の自由としてではなく営業の自由の一環として保障されるに過ぎないとの見解がある
 しかし、営利的表現は多様な情報の流通を確保することで、受け手である消費者が自律的に判断することを支援するものであるから、消費者の知る権利に資する したがって、知る権利を実質的に保障する見地から、営利的表現の自由についても表現の自由として保障されると解する
⑶ 営利的表現に対する規制について、必要かつ合理的なものであれば憲法適合性が認められるとした判例がある(按摩師等法違反事件参照)
確かに、表現された情報の真偽は消費者が客観的に判断することができるため、営利的表現に対する規制が恣意的になる恐れは低いから、憲法適合性はこの判例に従い緩やかに審査すべきとも思える
しかし、3条1項、4条、5条は特定の見解を表示するように強制するものであるから、表現内容規制と同等の強度を有する制約であり事案が異なる
 そこで、規制の目的が重要で、当該目的を達成するより制限的でない手段が他に存在しないといえる場合に限り合憲と解する
⑷ 消費者に対したばこのリスクに関する客観的な情報を提供することで、生命身体の安全を守るという目的は重要
 一般警告文・特別警告文は、喫煙が喫煙者及び周囲の者にもたらす健康上のリスクについて客観的事実に対する評価を述べるもの→タバコ購入数を抑制することが見込まれるので、目的との関連性は認められる
 たばこの危険性の認知度についてみると肺がんのリスクに関する認知度は高いが、心臓病や脳卒中のリスクについてはいずれも半数を下回るほか、依存性についても約半数が認識しているにとどまる→タバコの包装部分を用いて情報を提供する必要性は高い
一般警告文及び特別警告文(5条1項ア~エ)は、客観的事実への評価を述べるにとどまる スペースとの関係である程度端的な表現にする必要があるから、これ以上制限的でない方法はないといえる
ただし、オについては事実に対する評価ではなく、情報提供を超えて消費者に対する意思決定に介入するものであり必要性及び最小限度性を欠く
⑸ 以上より、本件規定のうち5条1項オは21条1項に反する 他は反しない

⑴本件規定はたばこの販売事業に影響を与える点で販売業者の営業の自由を侵害し22条1項に反しないか
⑵営業の自由の保障
(小売市場事件参照)
⑶警告表示の強制は消極目的であるから、その名目の下濫用的な規制が行われる危険性がある
→規制が目的達成のために必要かつ合理的といえる場合に限り22条1項に反しないと解する
⑷目的は2⑷で述べた通りであり、重要
 手段について、消費者のリスク認知度の低さ・端的な表現の必要性から、警告文を表示させる必要性は認められる
 しかし、消費者への情報提供を超えた意思決定への介入まですることによって、たばこ販売業者が損害を被るのは合理性を欠くといえる
 したがって、営業の自由に対する制約は必要かつ合理的とはいえない
⑸ 以上より、本件規定のうち5条1項オは22条1項にも反する 他は反しない

⑴ 警告表示法には経過措置が定められていないが、これは在庫につき処分方法を制限する点でたばこの製造販売業者の財産権を侵害し29条2項に反しないか
⑵ 所有する財産の処分権は29条1項で保障されるところ、経過措置がないことによって製造販売業者は処分権を制約されている
⑶ 29Ⅱは法律により財産権の内容を事後的に変更することをも予定しているから、抽象的な財産権の制約に過ぎない場合は諸般の事情を総合的に勘案し、事後的変更による制約が合理的である限り合憲となる(国有農地特措法事件参照)
しかし、警告表示法3条3項、4項、9条は同法の規定に違反する在庫について販売を認めず、回収・廃棄の対象としているため、製造販売業者は自社在庫に関する処分権という抽象的な権利のみならず、すでに販売したたばこについても回収を余儀なくされる形で既存の売買契約による処分権をも遡及的に剥奪されている しかも罰則が設けられているので(10条以下)、その制約は強度
判例とは事案を異にし、憲法適合性は厳格に判断される 具体的には、目的が重要で手段と目的との間に実質的関連性が認められる場合にのみ合憲と解する
⑷3条3項、4項を制定するに際し経過措置を設けなかったのは、規定されている表示のないたばこが販売されることにより消費者に健康上の危険が生じることを防止するためと考えられる しかし、そのような危険が切迫している事情は存しない したがって、抽象的な危険を想定して経過措置を設けないことが重要な目的ということはできない
 また、たばこのリスクに関する情報を消費者に提供するという公共の利益は実現され得るが、それに比して在庫の処分権が遡及的に剥奪されるという不利益はあまりに過大であり、手段としての相当性を欠く
よって、目的と手段との間に実質的関連性は認められない
⑸ 以上より、警告表示法に経過措置が定められていないことは29条2項に違反する
                                    以上

本試平成30年民事訴訟法 構成メモ

 

1. 雑感

 設問1は「ロースクール演習民事訴訟法」に類題がある。が、どうも誘導がうまくない気がする。課題⑴では別訴提起と反訴提起の双方が書けてしまうところ、もし別訴提起の可否まで論じると課題⑵で何を論じるべきか分からない「行き止まり」状態になるのである。

自分はまさにそうなり、迷走した結果課題⑴で別訴提起を、課題⑵で管轄のみを論じる一番ヤバイ答案を書いてしまった(間違いなく不良に該当する)。反訴を書けていない時点でだめなので言い訳にもならないが、管轄だけで構成を絞らせるのは乱暴だと思う...。

設問2は文書提出命令であり、規範を準備していなかったので現場思考ででっちあげた。起案では求める結論に一直線に向かう形で書いてしまったが、実際には比較衡量の規範をきちんと立ててから検討すべきだった。ここも反省事項であった。復習していて再認識したが、文書提出義務の判断基準って基本的には比較衡量のようだ。連続して出題されているので、R3では出さないで欲しいところ。

設問3は補助参加の可否について問うもの。主張⑴と⑵は逆のほうが論ずべきことが明確なんじゃないかと思う。主張⑴は条文上認められないのが明らかでしょ、と思ったが、45Ⅰ但し書に該当するかを検討する形にした。主張⑵はお決まりの補助参加の利益の問題。

 

2. 構成メモ

 

【設問1】

1 課題⑴

⑴訴状の送達によりBの訴えは係属中→重複起訴該当性が問題

・当事者の同一性→明らか

・事件の同一性→訴訟物はAのBに対する不法行為に基づく損害賠償請求権のうち150万円を超える部分について共通する

⑵Aの訴えは不適法却下とも 

・しかし、債務者により債権者の権利実現を引き延ばすことを認めるのは妥当でない

→Aの訴えを適法とする構成を検討する

⑶反訴と構成すればどうか(反訴構成、別訴構成のいずれも考えることができるが、乙地裁に提起するとあるので、課題⑵と分ける観点からこちらでは反訴を検討)

・反訴要件検討→充足

・反訴は本訴と併合審理されるので重複起訴の弊害は生じない

・なお、Aの訴え提起によりBの訴えの利益が否定されるためBの訴えの利益が問題になる

→第1回口頭弁論期日前で訴訟資料がないためBに不利益とならないので、Bの訴えは不適法却下される

以上より反訴とすることで適法に提起可能

⑷ Cをも共同被告とできるか

・共同訴訟の要件(38前段)

「同一の事実上及び法律上の原因に基づく」といえるので充足

・反訴でCを被告に加えることができるか―主観的追加的併合の可否

・一般論としては否定∵併合前の訴訟資料が流用されるか明らかでなく訴訟の複雑化を招く

しかし、第1回口頭弁論期日前で訴訟資料がないので、追加しようとする被告Cにとって不利益はなく、訴訟の複雑化も生じない

→主観的追加的併合も認められると解する

→Cも共同被告とできる

2 課題⑵

⑴こちらの場合も重複起訴の問題になるが、甲地裁には反訴提起ができないため、別訴提起を適法にできる構成を検討する

⑵別訴であっても、それが不適法とされると債務者により債権者の権利実現を引き延ばすことを認めることになる

→審理重複部分は150万円を超えている部分にとどまるほか、Bの訴えにつき移送(16Ⅰ)したうえでの弁論併合をすればその弊害は生じない また、訴訟資料がない段階なので弁論併合を強制してもBに不利益は生じない

⑶ AはBとCに対する別訴を適法に提起できる

【設問2】

1 220④ハに該当するとの反論

2⑴ 規範定立(現場思考)

220④ハの趣旨は、第三者の機密情報が公にされることで第三者に不利益を及ぼし、ひいては円滑な職務執行を害することを防止する点にある

→第三者が当該文書の開示により被る不利益と開示の必要性とを比較衡量して、前者が優越する場合には、作成者の黙秘の義務が免除されていない限り当該文書はハにあたると解する

⑵あてはめ・結論

診療記録にはAに関する事項しか記載されていないところ、Aは診療記録の一部を謄写して提出しているから、文書の秘密性を放棄している→開示により被る不利益は小さい

一方で、損害賠償額を争うBとしては、自己と損害の因果関係とを把握するために診療記録を開示する必要性が大きい

また、D病院の医師について黙秘の義務が免除されたといえるか問題になるが、Aが一部の診療記録を提出していることから黙秘の義務は免除されているといえる

→ハに該当しない

→想定される反論は妥当しない

3 Dは220④で文書提出義務を負う

【設問3】

1 主張⑴の当否

⑴43Ⅱ、45Ⅰ本文より、第一審で参加していなかった者が控訴と共にする補助参加は45Ⅰ但し書に抵触しない限り出来る→但し書の意義のQ

⑵(現場思考)但し書→本文で補助参加人の独立性を定めつつ、本訴を前提として参加が認められている点では従属性をも有していることを確認する規定

そこで、但し書は訴訟経過により訴訟当事者ですらなしえなくなった訴訟行為をさすと解する

⑶ 本件では控訴期間を徒過していないので、AもCも控訴できる→但し書の場合にあたらず、控訴提起は45Ⅰ本文でできる

→Cの主張⑴は認められない

2 主張⑵の当否

⑴ 補助参加の利益についての一般論証

⑵ あてはめ

控訴審判決の主文で示されるAのCに対する損害賠償請求権の有無、及び理由中の判断におけるCの過失の有無は、BがCに対して求償権(民法442Ⅰ)を行使しうるか否かという法的地位に事実上の影響を及ぼす

→補助参加の利益を有する

⑶ Cの主張⑵は認められない

3 丙裁判所は控訴を適法と判断すべき

                                     以上

【2021/2/23修正】本試平成22年刑事訴訟法 構成メモ

 

1. 雑感

 The・物量ゲー。とにかく書くことが多い。捜査➀②はごみの持ち帰り・開披・内容物であるメモ片の復元についての問題である。領置の典型事例だが、占有取得段階・開披段階でそれぞれ検討すべき被制約利益が複数あるため、論ずべき点がとても多くなる。

捜査③は当初「必要な処分」(111Ⅱ)の問題かと思ったが、検討中に「捜索差押許可状でそこまでできるのかって話なのかなあ」となり、若干方針転換した。両論ありうるので結果的にはどっちでも良かった。

設問2はおとり捜査の適法性・秘密録音の適法性、そのうえ伝聞法則まで問うとんでもないボリューム(しかも検証調書に準じた検討をさせる最多量タイプ)。

時間内で書きあげるには、設問2をさっさと書き上げることが肝要だと思う(最悪そっちから入ってもいいかもしれない)。

2. 構成メモ

【 設問1】
1 捜査①
⑴ 公道上のゴミ袋の持ち帰り
 領置(221)として許容されるか
「遺留した物」の意義を示す
 公道上に甲が置いて行った→「被疑者が遺留した物」にあたる
→領置としての必要性・相当性が認められれば許容
→適法
⑵ 開披・内容物の確認
ア 強制処分性
 内容物について知られないという権利は重要か?
→公道上に置かれたごみなので第三者の接近は想定される、重要でない
→強制の処分にはあたらない
イ「必要な処分」(222Ⅰ前段・111Ⅱ)or任意処分の限界
証拠物としての関連性を確認するために必要 /内容物の確認は必然的に選択される手段であるから相当
⑶ 復元
必要な処分(111Ⅱ)として許容されるか
領置目的の達成に必要+記載内容が読み取れる程度に裁断されていただけなので、その復元は手段として相当
2 捜査②
⑴ 集積所内への立入り、ごみ袋の開披・内容物の確認
 強制処分該当性のQ
 マンション敷地内に甲が置いて行った
→マンション管理者の敷地内に侵入されない権利を侵害+合理的意思に反する
→捜索にあたる。令状を得ていないので違法*1
⑵ 持ち帰りと復元
持ち帰りは領置になるが、マンション管理者の占有がなお及んでいるため「遺留した物」にはあたらない
→違法
復元についても、違法に収集された押収物について「必要な処分」が許される余地はないから違法
3 捜査③
捜索差押許可状で押収物の復元・分析まですることが出来るか
→予定されているプライバシー侵害を超えるか否かの問題
→可視性・可読性の失われた情報を復元するだけで、情報の破壊や改変に至るものではない
よって、予定されていた以上のプライバシー侵害は伴わない
したがって、令状の効力(or「必要な処分」)として押収物の復元・分析も出来る
→適法
【設問2】
1 前提になる捜査の適法性
⑴乙・丙に捜査協力をとりつけて、甲に対する拳銃譲渡の働きかけをさせ、甲がこれに応じたところを逮捕した
→おとり捜査の適法性のQ
⑵ おとり捜査は将来の事件に関する捜査であるが*2、拳銃譲渡が将来において行われる蓋然性があることから許容
 また、被疑者の意思決定の自由を制約するわけではないので強制処分にもあたらない
 もっとも、おとり捜査は国家が詐術を用いて犯罪を行わせ、法益侵害の危険を惹起する側面がある
→おとり捜査が任意処分として許容されるかは、おとり捜査の必要性と相当性を考慮して決する
⑶あてはめ
 甲らに犯罪の嫌疑アリ
 拳銃は殺傷能力の高い凶器→譲渡罪は重大犯罪につながる→早期に犯人確保をする必要性
 一方、密行性が高く、法禁物の取引に過ぎないので直接の被害者もいない
 また、甲らは拳銃の売却を慎重に行っており通常の方法では捜査が困難
→おとり捜査の必要性あり
 乙から甲への働きかけは執拗なものではない
 拳銃密売が過去から継続的に行われていることからして、甲は機会があれば犯行に出ると考えられた
→おとり捜査の相当性あり
→おとり捜査は適法
⑷秘密録音(①―③)
予備で出題済み。強制処分ではないが会話の相手方の了承を得ていない点で会話の内容について知られない自由は制約される
→任意処分の限界を超えるか検討
必要性
相当性
→いずれも適法
2 捜査報告書の証拠能力
実況見分調書とパラレルに考えるのがポイント
⑴伝聞証拠該当性の定義
⑵本件では甲の犯人性が争点→捜査報告書に記載されている通り、甲乙間及び甲丙間の会話が存在した事実が認められれば、甲の犯人性を推認することができる
→要証事実は、甲乙間及び甲丙間の会話が存在したこと
捜査報告書は公判外における録音をKが反訳して記載したもの→要証事実との関係で記載内容が真実であることの証明に用いられる→伝聞証拠にあたる
⑶伝聞例外の検討 
Kの供述書であるが、捜査報告書は口述より書面による報告が適切である点で検証調書と共通
→321Ⅲを準用し、Kが真正に作成したものである旨証言すれば証拠能力が認められる
⑷甲乙間、甲丙間の会話及び乙による説明を記載した部分についての検討
この部分に、別途伝聞法則の適用があるか
→要証事実との関係で内容の真実性が問題になるか検討
ア 甲乙間、甲丙間の会話部分
要証事実は、甲乙間、甲丙間において記載されている会話が存在したこと
→その存在をもって、甲による拳銃譲渡の事実を推認しようとするものであり、会話の内容の真実性は問題にならない
→この部分は伝聞証拠に該当せず、別途伝聞法則は適用されない
イ 乙による説明を記載した部分
要証事実は、甲が乙に対し拳銃2丁を譲渡したことになる(?)
乙自らが知覚・記憶した会話内容を供述した部分→その内容が真実であることをもって、甲乙間、甲丙間において記載されている通りの会話が存在したことを証明する
記載中の乙の説明そのものを、会話の存在を証明する独立の証拠として用いる
→この部分は伝聞証拠にあたり、別途伝聞法則の適用を受ける
(ア)伝聞例外の検討(2021/2/23修正)
甲→乙→ICレコーダー→K→捜査報告書
当該記載部分については乙の供述録取書とみることができる。なお、321Ⅰ柱書より署名押印が必要とも思えるが、準用される321ⅢによりKに対し公判廷で反訳の正確性を吟味することは可能である。そこで、要件をみたすかぎり、乙の署名押印は不要と解する*3

→323③には該当しないうえ、321Ⅰ①②にもあたらないので、321Ⅰ③を検討
(イ)あてはめ
・乙は死亡しているので「供述することができない」場合にあたる
・「証拠として欠くことのできない」場合とは、その証拠が採用されない場合事実認定に著しい差が生じることを意味する
→録音においては甲乙が売買の目的物を何としているかが判然としない→乙の説明部分によって、目的物が拳銃であることが明らかになる。この部分が証拠として採用されない場合、甲の拳銃譲渡の事実を認定することは困難になる
→事実認定に著しい差が生じるのでこれをみたす
・絶対的特信性
乙による説明は、甲との会話の直後、記憶の鮮明なうちになされたものであり正確性が高い
乙の説明内容が、乙方においてリンゴの入った段ボール及び拳銃2丁が発見されたという客観的事実と整合
→供述の正確性が担保されているので、これをみたす
→この部分は321Ⅰ③の要件をみたし、証拠能力が認められる
3 結論
本件捜査報告書は、Kが真正に作成されたことを供述すれば、321Ⅲの準用及び321Ⅰ③により証拠能力が認められる                       

                                    以上

*1:近時の裁判例で、マンション内のごみステーションにあったゴミ袋を持ち帰った行為が適法とされた事例があった。

*2:ここについて書いている人はほとんどいないが、おとり捜査が将来捜査にあたることは確かなので論証すべき、というのがゼミの先生の談。基本的に認められるので、一言で認定すればいい

*3:ぶんせき本の答案構成例では供述書になっているが、疑問がある。供述書とは、原供述者が自ら作成した書面をいう。この定義に照らすと、乙の説明部分が供述書としての性質を有するというためには、捜査報告書のうち乙の説明部分は乙自らが記載したのと同視できるといえなければならない。この理解によって検討すると、「乙の説明部分は、ICレコーダーによる録音過程と、Kによる反訳過程を経るところ、前者は機械的過程であるから伝聞法則の適用がない。後者についても、反訳である以上伝聞性を帯びない。したがって、乙が自ら記載したのと同視できるから、供述書としての性質を有するといえる」ということになろうか。しかし、反訳を機械的録取過程と同視してしまうのはどう考えても無理があるように思える。そこで次に、供述録取書として捉えるアプローチを検討してみる。解釈上は素直なのだが、このアプローチを採る場合、乙の署名押印は必要なのではないかがなお問題になる。機械的録音により署名押印が不要になるのは、原供述者による録取の正確性を確認する必要がない場合、すなわち原供述者→書面等の間にある録取過程が機械的にされている場合である。しかし、今回の場合、乙→ICレコーダー→Kの部分が機械的にされており、ICレコーダー(乙)→K→捜査報告書の録取過程についてはなお正確性を確認する必要が残っている。したがって、乙の署名押印が必要だったのではないか、ということになるのである。ここで、捜査報告書の証拠能力が認められるためには、321ⅢよりKが公判廷において証人尋問を受け、捜査報告書の真正な成立を述べなければならないことになっていることに思い至る。いずれにせよ公判廷で反対尋問にさらされるのならば、反訳の正確性についても公判廷で吟味することが可能であるから、伝聞法則を適用する趣旨が妥当しないのではないか。したがって、反訳に係る録取過程については、乙の署名押印による正確性の担保を要しないと考えることができる。出題趣旨に特に言及はないが、厳密にはここまで論証する必要があると思われる。