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【使用教材紹介9】アガルートの司法試験・予備試験合格論証集 民法(2020/10/6追記)

お久しぶりです。

先日一橋ローの入試が行われました。受験された皆さん、本当にお疲れ様でした。

 

本日紹介するのはこちらの教材です。

 

アガルートの司法試験・予備試験 合格論証集 民法

アガルートの司法試験・予備試験 合格論証集 民法

 

 


【教材利用の目的:改正後の一元化ノート用】

 改正民法準拠の論証集として市販されているものとしては最も信用できる教材ということで、新たな民法一元化ノートとしてこれを選びました。

現在は、改正の影響がないところについて論証を前のまとめノートから移転したりしています。

 

特長① 記述の信用性が高い

アガルートの論証集に共通する特徴は、判例や調査官解説に基づいて作成されており信頼性がとても高いことです。論証集としては珍しくリファーがついているので、原典の確認も容易です。

ローの授業では、「受験生の多くがこのように理解しているがそれは正しい理解ではない」旨の"ありがたい言葉"をよく頂きます。そして、自主ゼミ等で授業内容をそれぞれのまとめノートに反映する作業を行っていると、「アガルートの論証は結局のところ間違ってはいないってことだよね」という結論に至る事がままあるのです。

少なくともこの本に載っている論証を正しく展開すれば沈むことは無いと思います。

 

特長② 改正法「準拠」であること

改正法施行が迫る中、現在の受験生のニーズは「改正でどこが変わったか」より「改正法を前提とするとあの論点はどう書くのか」に移行しつつあると思います。

しかし、基本書も含め改正法準拠の本はまだまだ少ないです。

シェアの高い趣旨規範ハンドブックも現状では改正法への言及があるにとどまりますし、伊藤塾は分野別のシケタイや呉基礎本でのみ改正法準拠となっており、論証だけ知りたい場合にはコスパの面で難があります。

アガルート論証集は先駆けて改正法に準拠している点、親族相続法改正にも対応している点で高く評価できます。

したがって、この時期から一元化用の本を選ぶとすれば、この本が最善であるように思います。

 

注意点① 分量が多いこと

正確性を期すためか、判例の言い回しや調査官解説の記載をそのまま持ってきている場所があります。そのため、答案として展開するには冗長なものが多いです。

1.条文のどの文言との関係で問題になるのか(or問題の所在がどこにあるか) 2.条文・制度趣旨 3.理由付け 4.結論・導出される規範 に着目し、コアとなる場所だけ抜き出すようにすると良いと思います。

 

(2020/10/6追記) 注意点② 読んで理解しにくいこと

個人の感性もあるので大きい声で言うべきではないかもしれませんが、論証自体が文章として非常に理解しにくい、というのが正直なところです。特徴①の裏返しとして、言葉として取り回しの利かない表現や行間の大きい表現がままあるため、論点によってはなぜそのような結論になるのかがあまり分からないことがあります。「丸ごと暗記して使えばいい」という声もあると思いますが、もし判例や典型論点から少し事案が変わった時に結論がどう変わるのか、その論証だけで思考できるでしょうか?答えはNOです(少なくとも自分はできません)。本書単体で当該論点を十分に理解するには足りないように思えます。

 

(2020/10/6追記)注意点③ 網羅性に欠けること

民法の論点には、 LV1:条文文言の解釈に関するもの LV2:条文や制度趣旨から条文適用の可否や下位規範を導くもの Lv3:百選レベルの判例で問題となった論点で条文の文言からは想起することが難しいもの Lv.4:学説において現在も議論されているものがあると考えています。

 このうち、合否を決するのはLv1-Lv.3の論証です。もちろん、その理由は知っているか否かで差がついてしまうから。本試も予備も、百選レベルだと知っているものとして聞いてくるので、知らないと書き負けてしまいます(しかもLv.3になると、そこに論点があると気が付くのも難しいという...)。Lv.4は、「悩みを見せた」うえでの「現場思考」が求められているので、覚えていることは要求されていませんし差もつきにくいです(「悩みを見せる」と「現場思考」の違いについては過去の記事参照)。

 つまり、民法の論証集に求められているのは、Lv.1-3の論証が記載されていることになります。

 しかし、この本にはLv.3の論証が少ない印象を受けます。伊藤塾の赤本では重要論点として展開されているものが載っていないことも。ゆえに、一元化の際は論証の追加が必要になります。一受験生としては、改訂時に論証をもう少し充実させてほしいところです。

 というか、伊藤塾が改正論ナビをもう少し市販向けにすればいいと思うんだけどなあ(小声)

                                   以 上