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【使用教材紹介7】呉基礎本 民法総則

本日紹介するのはこちらの教材です。初の民法カテゴリですね。

 

民法総則 <第2版> (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

民法総則 <第2版> (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ)

 

 


【教材利用の目的:1周目のインプット、論証の収集】

 「お前は呉先生の本しか読まんのかい」と言われると返す言葉がありません笑 先に付言しておくと、この本を強く勧めるわけではないです。

 

 民法は司法試験・予備試験・ロー入試との関係でもかなり大きな比重を占める科目であり、民訴と商法、その他私法分野の基本となる超重要科目です。

 つまり、民法に苦手意識をもっていると法律科目の勉強はなかなかうまくいかなくなります。

 苦手意識を持つ原因になるタイミングは二つあります。最初のタイミングは一周目で良く分からん知識にぶつかったとき。次のタイミングは二周目以降短答や論文を解き進めているときです。2つめは力業で克服できますが、一つ目が厄介です。特に民法憲法に次いで二つ目に学ぶ科目なので、ここで苦手意識を持つとその後の法律学習のやる気が出なくなり、途中で脱落する危険すら出てきます。なので、民法の学習に用いるテキストは慎重に選ぶべきでしょう。

 

 さて、この呉テキストの特長は、①平易でありながら実際の論述を意識した文体を取っている点、②図表を多用しているため権利関係を視覚的に捉えられる点、③一周目に必要最小限度であり、判例通説に従った一貫した立場を身に着けられる点、④債権分野との関連もしっかり載っている点 です。

 これらのおかげで、一周すると物権法・債権法の理解に必要なだけの理解が身につきます。また民法自体を一通り学んだあとで④に該当する部分を読むと、より横断的理解が進むでしょう。

 

 この本を使う上で注意すべき点は以下の通りです。

①あくまで「基礎本」

 この本は初学者の混乱を避けるため、やや複雑な問題についてはコラムにあったり省かれたりしています。したがって勉強が進むにしたがい足りない箇所も出てきます(私は足りない部分について付箋に書き補充していました)。辞書的用法には耐えられないので、そのレベルに来たら佐久間総則などを参照すると良いでしょう。

②条文起点の思考を忘れない(論点だけ切り離して覚える、といったことをしない)

 刑事系と同様、この本にも論証パターンがついています。また、ページの多くは論点の解説に割かれています。別にこれ自体は予備校本なので問題ありません。

 ただ、何も考えずにこの本を読むと「ああこれらの論点を覚えて書ければ民法総則は大丈夫なんだ」と考えてしまう可能性があります。この思考は結構危険です(私は最初こうでした)。

 刑法の記事でも述べましたが、ほとんどの論点は条文の文言該当性と関連して出てきます。にもかかわらず、論点だけ切り離して覚えると、「なぜそれが論点なのか」が分からなくなったり、どの段階で書く話なのか分からなくなったりするのです。

 民法の論点は要件充足性検討の中で出てくる。このことを頭に入れておくだけで、論点の位置づけや判例の意味がだいぶ分かるようになると考えます。

 

 今になって思いますが、一周目の段階でDK先生の処理手順ノートの民法分野について軽く読んでおくと、上で私の書いたことが良く分かると思います。

                                     以上