One's Note

一橋ロー入試対策情報・司法試験過去問・修習雑記

一橋ロー入試対策⑤ 第二次選抜編(2)(2020/9/14追記)

こんにちは。

 

今回も第二次選抜についてです。科目ごとの傾向などについてお話ししたいと思います。以前後輩向けに書いたメモ書きをコピペしました(手抜き)。 自分よりよっぽどいい成績で合格している方も多数いますが、ひとまず情報提供をば、という考えです。

あくまで主観的な評価ではありますが、解答に要求される要素を10段階(1→10の順で水準が高くなる)で、科目別難易度を★()~★★★★★()で示しました。これらは受験者の多いロー(東大・京大・早稲田・慶應・中央)を基準(レーダーで5、難易度で★★★)としています。

 

1-2-1 憲法 ★★★(平均的)~★★★★(やや難)

判例知識:8

条文知識:5

現場思考:5

出題範囲:7

処理速度:7

 

(1)“予備試験を踏襲した出題形式

事例が与えられ、小問1で原告の主張を、小問2で被告の反論と私見を書かせる予備試験と同様の形式が続いています。

古い年度では、第一問で人権、第二問で統治という出題がされたこともありますが、ここ数年は上記形式に沿っており、この傾向は今後も続くものと思われます。

出題の多くは、百選レベルの判例と類似するもののどこかにひねりがある事例です(一応元ネタはあるものの地判レベルであり、知っていることは要求されません)。当該事例において重要判例の射程が及ぶのか、及ばないとすればどう判断するのかを問うています。時間制限がやや厳しいので、途中答案にならないように気を付けましょう。

(2)対策のためのおススメ基本書・参考本

 『基本憲法Ⅰ―基本的人権』木下智史、伊藤健 日本評論社

インプットに有用。統治分野は載っていないので注意

 『読み解く合格思考憲法』玄唯真 辰巳法律研究所

判例の使い分けや、三者間型答案の書き方がとても分かりやすく載っている。  第一部の「憲法答案の書き方」は一読の価値あり。

 

 

公法系処理戦略

 前述したが、憲法では百選レベルの事例とどこかが異なる事例で判例の射程が妥当するのか検討させる問題が出ます。したがって、解答にあたっては重要判例を想起し、それが分かっていることを答案用紙に示すことが大前提です(これはローの教授がおっしゃっていた)。ここの検討と構成は時間がかかるため気を付けましょう。答案構成時間は30分前後にしておきたいです。主張・反論・私見という大枠は決まっているので、問題を読む中で各事実を原告側と被告側に振り分け、判例の射程が及ぶかどうかについては私見のところでしっかり論じることを意識すべきです。

 

1-2-2 民法 ★★★★(やや難)~★★★★★()

判例知識:5

条文知識:7

現場思考:9

出題範囲:8

処理速度:6

(1)”癖の強い応用問題、動向に注意

 「典型的な事例とは少し事情が違うが、これによって結果がどう変わる?」というのを聞いてくることが多いです。具体的には小問1で典型問題、小問2で事情が違う場合、といったかたちです。また非典型譲渡担保やサブリース契約などを出題したこともあり、受験生からすれば何とも厄介な出題をしてきます。典型問題を落とさない、守りの姿勢が要求されます。

 どのような問題にも対応できるよう、生の主張(反論)→法律構成→法律要件充足性検討→結論というしっかりとした思考回路を持つことが肝要でしょう。

 なお、平成31年度は今までの傾向と異なり、基本的な問題のみの出題となりました。これは民法改正及び早期卒業生への配慮でしょう。ここから改正民法施行までは、こちらの出題傾向にシフトする可能性も考えられます。いずれにせよ、基本を着実に抑え、少し事例が変わったらどうなるのかを考える訓練が重要です。

(2)対策のためのおススメ基本書・参考本

『読み解く合格思考民法』菅野邑斗 辰巳法律研究所

…答案の書き方を学ぶのに有用。条文の趣旨に立ち返って規範を定立していく方法は、一橋ローで出される応用問題にも有効である。収録されている旧司法試験の問題も良問ぞろい。

『趣旨規範ハンドブック②民事系』辰巳法律研究所

…論点確認用。一橋ローで出題された論点は大体載っている。論証集ではないので、別途論証の形で整理する必要がある。

 

1-2-3 民事訴訟法 ★★(やや易)~★★★(平均的)

判例知識:8

条文知識:7

現場思考:4

出題範囲:7

処理速度:4

(1)”もっとも良心的

 事例問題形式。百選レベルの判例をベースにした典型的な問題が多く、最も良心的な出題といえるでしょう。ひねりも少なく真正面から聞いてくるので、基礎をかっちりと固めておけば解答は十分可能です。逆にその分野について理解が不十分だった場合、とたんに書き負けることになります。出題分野に偏りがないので、管轄などの細かい分野を除きしっかり学習しておきましょう。

(2)対策のためのおススメ基本書・参考本

『基礎からわかる民事訴訟法』和田吉弘 商事法務

…民訴のインプットに最適。個人的には一周目はリークエよりこちらを薦めたい。ただし言葉の定義が若干曖昧なので、趣旨規範ハンドブックなどで逐一確認。

Law Practice民事訴訟法 第3版』山本和彦、安西明子、杉山悦子、畑宏樹、山田文 商事法務

…「解く」というより読んで論点を理解し収集するための本。百選判例も触れることが出来る。

 

◆民事系処理戦略◆

民法2問と民事訴訟1問で135分という時間が与えられますが、民法で時間を取られます。皆それなりに書ける民事訴訟法で書き負けると厳しいです。

民法2問に対し民事訴訟法1問のため、民法でしっかり書きたいところ。そこで、民事訴訟法から先に解き、余った時間で民法を書いていくという戦略も一手ではないでしょうか。

 

1-2-4 刑法 ★★(やや易)~★★★(平均的)

判例知識:5

条文知識:5

現場思考:4

出題範囲:7

処理速度:5

(1)”書き負け注意

 スタンダードな事例問題形式です。第一問で総論、第二問で各論といった形で出題されることが多いです。

総論分野では正当防衛や共犯が頻出。各論分野では、窃盗や強盗よりも後ろの方の分野が出題されやすい傾向にあります。論点自体は典型的なものばかりなので、各分野のAランク級論点は押さえておきましょう。私見ですが、詐欺・恐喝・横領・文書偽造・公務執行妨害あたりは今後の出題可能性が高いように思います。

難易度自体は平均的で時間的にも厳しくはないので、周りの受験生に書き負けないように注意しましょう。

科目ごとの足切り制度が新設されたところ、この第一問が足切り基準の機能を果たしている可能性は高いです。

 (2)対策のためのおススメ基本書・参考本

『呉基礎本シリーズ1,2 刑法総論・刑法各論』呉明植 弘文堂

…インプット本として最適。論証パターンも収録。

『基本刑法Ⅱ 各論 第2版』大塚祐史、十河太朗、塩谷毅、豊田兼彦 日本評論社

…特定の分野についてより詳細に知りたいときはこちらを参照。作者は詐欺以降の分野についてこちらを使用した。

 

1-2-5 刑事訴訟法 ★★★★★()

判例知識:8(2020/9/14修正,5→8)

条文知識:9(2020/6/6修正,7→9)

現場思考:10

出題範囲:7

処理速度:4

(1)”ロー入試屈指の難易度

 一橋ローで最も癖が強く、そして難しいのが刑事訴訟法です。

出題形式も特殊です。近年は判例文の一部の抜粋が載せられており、それに関する問題が複数出される形が多いです(一度過去問をご覧ください)。内容としては、刑事訴訟法の改正にかかるものや現状での問題意識、刑事訴訟法を貫く諸原則についてのものが頻出する印象です。受験生が考えた事がないような問題なので、まずは問題に関連する最低限の理解(条文、制度趣旨)を示すことを意識しましょう。そこからは現場思考で問いに答える努力をすれば、相対評価で大きく負けることはないと思います。

(※2020/6/6追記:2020年度はまた出題傾向が異なっているようです。純然たる事例問題ではなく、刑事訴訟手続自体の趣旨・内容・要件・効果を問うものでした。)

 やはり同期に聞いても「なに書くべきかわからなかったから条文から考えて作文したわ」との声が多いです。自分も例にもれずそうでした。

(2)対策のためのおススメ基本書・参考本

『呉基礎本シリーズ3 刑事訴訟法』呉明植 弘文堂

…一周目に。この本でなくてもよいが、とにかく二周目以降に高度な知識を入れ込むための「器」を早く作り上げることがポイントである。

『刑事系TOPが作った刑事系論証講義』国木正

BEXAにて販売中の論証集。呉基礎本の論証をこれで修正する中で理解をブラッシュアップさせていく。

(※2020/6/6追記:事例問題の出題が稀であるため、論証自体よりも背後の理解を習得するという意味で有益です。)

刑事訴訟法入門 第2版』緑大輔 日本評論社

一橋大学の教授が執筆された基本書。示唆に富む記述で、この問題意識の持ち方は一橋ローの出題傾向を探るヒントになるだろう。

※2020/6/6追記:『リーガルクエス刑事訴訟法(第2版)』宇藤ほか 有斐閣

…刑訴におけるスタンダードな基本書。論点に対する解説はもとより、勾留・保釈や公判前整理手続といった諸手続について押さえるにもピッタリ。ただし独学での一周目には向かない。

 

◆刑事系処理戦略◆

試験日の最後に実施されるので、疲れが溜まっている中で問題を解くことになります。刑法で書き負けないようにするのがなにより大事。刑法を先に解き、精神的に安心したところで刑訴に臨むことをお勧めします。

刑事訴訟法の難易度について脅しに近い文言を使ってはいますが、「合格レベルの答案を書く」のは決して難しくはないと思います。最低限を書くことだけ意識してもらえれば十分です。

なお付け焼刃的戦略ではありますが、一橋ローの公式サイトから教員欄にとび、先生方がどのような論文を執筆されているのか見てみるという手もあります。先生方の抱いている問題意識が問題に反映されている可能性もあるため、直前期のヤマはりに使えるかもしれません。

 

次回は第二次選抜実践編についてお話しします。

 

 

 

                                    以上

一橋ロー入試対策④ 第二次選抜編(1)

こんにちは。梅雨空続きですっきりしませんね...

 

さて、今回からはいよいよ第二次選抜について書きます。

言うまでもなく一橋ローの入試でもっともウェイトの高い選抜ですから、相応の準備が必要となります。

 

今振り返ると自分の対策はやや過剰な部分もあったのかなと思うのですが、一つの対策としてお話しします。

書きたいことがたくさんあるので、いくつかに記事を分けます。今のところは、(1)入試対策総論―過去問演習の必要性 (2)入試対策各論―科目ごとの傾向 (3)実戦―どこまでのミスが許されるか の3つにする予定です。

 

では、早速本題に入っていきましょう。

 

1.過去問演習っているの?

身もふたもないトピックなんですが、後輩によく聞かれるので回答ついでに考えることにしました。大部分は友人との会話から構成されています。

 先に述べておくと、一橋ローの入試では典型論点や重要判例の理解を問うてくることがほとんどです。したがって、何か特化した対策が必要になるわけではありません。

 個人的には「受かりたいローの過去問なんだから解けるだけ解いてしかるべきでは」とも思いますが...まあ時間も有限ですからね。

 過去問演習の要否は受験生の現在の学習段階によります。

①予備論文受験生・予備論文過去問演習経験のある方

友人の多くはこれにあてはまり、過去問は直前に見たという程度の人がほとんどです。書き方の型が身についているはずなので、本腰入れてまで書く必要はありません。しかし出題傾向が独特なので、直近数年分を見通して答案構成をするなどはした方がいいと思います。特に刑訴。

 私は一応ここに当てはまりますが、対策は②と同じでした。

②予備論文受験経験がない方

未知で突っ込むのは危険。刑訴を除きオーソドックスな出題形式なので、出題の趣旨が出ている年度の過去問はしっかり書きましょう。演習量足りねえ!予備校行ってないから問研も重問も知らん!って方はアガルートの出してる実況論文講義シリーズ(書籍)や同志社ローの問題(量が多く、良問ぞろい)で埋めてください。

※【同期談】予備過去問ももちろん有用とのこと。独学でやるには分析本などが必要でしょうが。

 

③論文書いたことない方

現状では歯が立ちません。まずは過去問をみて今の自分と過去問との距離を測り、夏休みに上述の演習テキストなどで型をつかんで、対応できる問題を増やしていきましょう。

 

2.予備短答受かってないと無理?

 それはないです。私もぎりぎりで短答通過した身ですし、予備受験経験がない人も受かっています。

 

3.3卒で行きたいが難しいのか?

話を聞く限り「入学自体は難しくない」そうです。彼女らの言葉を借りれば「下駄をはかされている」と。配点が違いますし募集枠も別なので、ある程度真実なんでしょう。成績の芳しくない私が優秀な3卒の同期に代わり語って良いのかはわかりませんが。

 

雑ですが、とりあえずはこんなところです。次回は科目別の傾向についてお話ししていきたいと思います。疑問点等あれば、質問箱にお願いします。

 

                                    以上

一橋ロー入試対策③ 第三次選抜編

こんにちは。研究室に朝から夜までこもる日々が続いています。

さて、今回は第三次選抜についてお話しします。

 

第三次選抜は、東大ローや京大ローには存在しない面接試験です。

毎年10人程度が不合格になるので、法律科目試験を突破しても油断はできません(知人にも第三次選抜で不合格になった人がいました)。したがって、まったくの無対策で臨むのはリスキーです。

 

受験生が知りたいのは、端的に言って「どんなことが聞かれるのか」と「NG回答は何か」でしょう。

これを知るにはネットに出ている再現が参考になるのですが、古いものばかりなのが現実。ということで、筆者が受験した際の面接再現を書き起こしておきました。面接を受けた日の帰りの電車で書いたので、再現精度は相当高いです。

 以下が再現です。★は例年聞かれている質問、◆は今年度のアドリブ質問。

 

(A先生 ほぼ真顔)
★では、---さんは法科大学院に対してどのようなことを期待しますか。
―はい、法科大学院は、同じ志を持つ仲間と共に、既存の法律に関する理解を盤石にし、現実に起こりうる未知の問題に法律家として立ち向かっていく力を培う場であると考えます。
したがって法科大学院に対しては、法曹としての基礎的能力、未知の問題に立ち向かう姿勢を育成する場を提供してくれること、そして将来仲間となる法律家となる者と出会う場を提供してくれることを期待しています。
●(何度かうなずく)…「未知の問題」とありますが、具体的に取り組んでみたい問題などはありますか。
 ―そうですね…例えば最近、GPS捜査が違法である旨の判決が出ましたが、あのように、時代の変化に伴い生じてきた法律が想定していない問題や、これまでの考え方が時代に合わなくなってきているのではないかという問題に取り組んでみたいです。
★(若干首を傾げつつ、何度かうなずく)では、一橋大学を志望した理由はなんですか。
 ―はい、貴学を志望した理由は二つあります。第一に、実務を見据えた教育が他の法科大学院より充実しているからです。私は学生なので、このまま司法試験に受かれば社会経験がないままに実務に出るじゃないですか。となると、実務感覚を身に着けておくことは、法曹としての信用の基礎になります。したがって、その教育の充実性は大事なポイントだと考えているわけです。
第二に貴学の、先生方と学生とが一体となって、互いに切磋琢磨し一橋をより良いものにしていこうという雰囲気に強く魅了されたからです。これは、先生と学生との距離が他の大学院に見られないほど近いからこそ醸成されるものだと思います。切磋琢磨していく環境でこそ自分は大きく成長できるので、貴学で学びたいと切に感じました。
★あなたが一橋大学に入学して、周りの学生、あるいは一橋大学に貢献できることは何かありますか。
―はい、授業内と授業外のそれぞれで貢献できることがあります。まず授業内では、PS記載の通りゼミでたくさん発言してきたことから、議論において臆さず積極的に参加し議論の場の活性化に資することが出来ます。
授業外では、学部時代自主ゼミを運営していたので、その経験を活かし、授業外で共同して学習する場を提供することが出来ます。(ここで自主ゼミの話を聞いたとき、にわかに紙に何か書き始めた)
●…自主ゼミ、というのは何人でやりましたか。
―3人です。
●具体的に何についてやっていましたか。
―ええと…ここでいうのは憚られるんですが、予備試験論文の過去問をやっていました。
●予備試験論文は、何科目やりましたか。
―全科目です。
★…なるほど。では、入学後も予備試験を受験するつもりはありますか?
―いいえ、私は予備試験を受験するつもりはありません。
●…そうですか。結構、在学中に受ける人は多いんですけれどね。(なぜか二人とも笑う)…あなたは、在学中は受験されないんですね。それはなぜですか?
法科大学院の学習は大変と聞くので、予備試験の対策との両立が困難だと思うからです。せっかくこれほど恵まれた環境にあって、両者を中途半端にするぐらいなら腰を据えて司法試験を目指したいと考えています。。
●…なるほど。わかりました。では、B先生、お願いします。

(B先生 ほぼ笑顔)
●…えー、成績表の方を拝見させていただいたんですけれども、そのー…成績にはムラがあるようですね笑。私は刑法担当なので、特に刑法の成績が気になるんですが、これについて何か言い訳はありますか。
―ありません笑。まだ本格的に法律についての勉強を始める前だったので、全然理解が出来ていませんでした。
●…ああ、なるほどね笑。…まあ、本格的に勉強始めた後でも成績にはムラがあるようだけどね笑。何か苦手科目とかはある?
―刑事系が苦手ですね…検察官志望なんですが…
●そうですか笑。でも刑事系苦手でも検察官になれた人はいますから、入学後は刑事系の授業をぜひ頑張っていただきたいです笑。
―もちろんです、精進します。
◆…では、関係ない話になりますが、最近外国人の受け入れ拡大法案が可決されましたよね。日本に来る外国人が増えれば、外国人による犯罪などの問題も生じてくる可能性がありますが、この問題について、法曹にはどういった役割が求められると思いますか。
―えーと…それは検察官として、ということでしょうか。
◆…検察に限らず、ここでは法曹ということで。
―そうですね…彼らは日本においてはマイノリティ、弱者の地位に立たされるわけですから、違法労働や差別などには厳格な態度で臨み、彼らに寄り添うことが求められると思います。
◆うんうんなるほど。では、そのためにはどういった姿勢、能力が必要になると思いますか。
―まずは語学力だと思います。言語はコミュニケーションの基礎ですから…
◆語学力か笑。もちろんそれも大事になってくるけれど、何かこう…法曹固有の能力についてはどうかな。
―法曹固有…となると、文化の違いを理解し中立的な立場から物をみる能力が必要だと思います。ステレオタイプな見方は彼らの救済につながらないからです。
●なるほどね。わかりました。A先生は大丈夫ですかね。…では、これで終わりです。
―本日はありがとうございました。失礼します。

 

 

筆者受験時の面接再現は以上です。毎年聞かれる質問、という点が気になると思うので、筆者がかき集めた面接過去問から頻出の質問をまとめておきます。回答に際し気を付けるべき点についても書いておきますのでお役立てください。


①なぜ一橋を志望したか。
―当然聞かれます。素直に答えればよいと思いますが、「それなら他のロー・予備で良くない?」というような内容は避けるべきです。
②あなたが一橋に来て貢献できることは何か。
毎年必ず聞かれる質問。一橋は先生・学生に関係なく一人ひとりの距離が近く、互いに協力していく雰囲気(=先生方の言葉を借りれば、“共助”)を大切にする校風があります。この点に貢献できることを示すことが望ましいです。「授業内での積極的な発言ができます」は誰しもが考える回答ですが、別に加点にも減点にもなりません。合格者の一人になるといったものではなく、同学者と切磋琢磨しつつ学習していく意欲があることが重要です。自主ゼミを運営した経験などがあるとかなり話しやすいと思います(再現参照)。

※「来てもらう側の人間に対し貢献出来ることを問うとは何ごとだ」という趣旨の批判が多い名物の質問です(笑)。試験は試験と割り切って答えましょう。

法科大学院に期待することは何か。
―最初に質問されやすいです。予備ルートにはないメリットを強調出来ればよいでしょう。

④予備試験は受験したか。今後の受験予定はあるか。
受験の有無や合否は面接の採点に影響しません。入学後の受験を予定していると答えてもそれだけで減点にはならないでしょうが、法科大学院における学習と両立できるのか、といった問いには答えられるようにしておきましょう。

⑤最近気になっている事件や判決はあるか。
―法曹志望としてアンテナを張っているかが見られます。付け焼刃で答えられるものでもないので、普段から関連ニュースに気を付けておくしかありません。

⑥国際化が進む社会において法曹に求められる役割は何だと思うか。
毎年あるアドリブ質問に共通するテーマと思われます。一橋のディプロマポリシーにおいて、国際的に活躍できる人材の育成が掲げられていることから、この点を重視していると考えられます。あくまで「法曹」固有の能力として何が要求されているかを考えましょう。

 

なお、同期から話を聞く限り、面接には穏やかタイプ・標準タイプ・圧迫タイプがあるようです。

筆者の面接はおそらく標準タイプですが、この差はもっぱら面接を行う先生によって生まれるものであり、第二次選抜までの成績にそこまで関係がないとみています。穏やかタイプで落ちた人も、圧迫タイプで受かった人もいるからです。

 

面接がはじまって圧迫的だなと思っても、落とすつもりで聞いているわけではないということを忘れずに落ち着いて回答してください。

 

次回はいよいよ天王山の第二次選抜について書きます。

 

【追記】

面接時の服装に指定はありませんが、殆どの人がスーツでした。カバンなどはなんでも大丈夫だと思います。

 

 

 

                                     以上

一橋ロー入試対策② 第一次選抜編

こんにちは。中間試験が落ち着いたのもつかの間、あと3週間で期末です。目まぐるしい...

 

さて、今回は第一次選抜についてお話しします。

 

前回も述べましたが、第一次選抜はTOEICのみで行われます。GPAが全く考慮されない点で東大ローと大きく異なります。

 

閲読にかかる時間を削減すべく、受験生の方々が疑問に思うこと3つをこちらで予想し、Q&Aの形でまとめてみました。お役に立てば幸いです。

※記事を書いている時点で出願前に受けられるTOEICは9月が最後です。2018年3月11日以降受験歴がない場合は必ず受験してください(募集要項より)。

 

Q1.英語が死ぬほど苦手だが、どれくらいのスコアがあれば第一次選抜を通過できるか。

 

A1.490程度(最終合格者のtoeicスコア最低点はこのぐらい)。市販の模試を利用して一度

 試してみてください。

 

Q2.TOEICスコアが800以上あれば、入試において有利にはたらくか。

 

A2.それはありません。一応最終選抜まで考慮されますが、比率は低いものと思われます。

 

Q3.TOEIC勉強方法おしえてくれ

 

A3.質問箱に来ていた質問。以下の方法でやりました。ご参考までに。

①1日1-2時間×3週間、金フレ、文法千本ノック、至高の模試を準備する。

②1週目。金フレを1日100単語ずつ進める。次の日には前の日にやった100単語もみる。beyond900の部分は無視。最終日まで繰り返す。

③1週目週末に模試を一回分解く。

④2週目。文法千本ノックを1分野/日で進めつつ1回目の模試を復習。問題音声を早回しで聴き英語慣れする。2週目週末模試2回目を解く。

⑤3週目も同様の勉強をする。試験受けて終わり。結果は810点。

 

TOEICマニア、帰国子女・留学経験者、英語の得意な方からすればツッコミどころがあると思います。実際、トップスコアラーの方々が書かれているブログには洗練された素晴らしい勉強法が載っているでしょう。

 

ただ、ロー入試においては圧倒的高スコアは要りません。ぎりぎりでも選抜を通過できれば十分です。その観点からすると上記勉強法にはオーバーな部分もあります。照準を600点程度に合わせれば単語帳の範囲も削れるので、もっと効率化できるんじゃないでしょうか。

 

次回は第三次選抜について書きます。

                                     以上

一橋ロー入試対策① 入試形式編

こんにちは。ローの忙しさに押しつぶされ記事を更新していませんでした。

 

去年末のことになりますが、一橋ローに合格したことを報告する記事で「情報を提供したい」と書いていました。そこで、日々の勉強の合間に少しずつ発信していこうと思います。

 

というわけで初回の今回は、一橋ロー入試の形式についてお話したいと思います。

構成は以下の通りです。

1.入試形態について

1-1 第一次選抜

1-2 第二次選抜

1-3 第三次選抜

2.第二次選抜の答案用紙について

2-1 様式

2-2 日々の演習でどうするか

3.第三次選抜の流れについて

 

 

 

 

 

1.入試形態について

1-1 第一次選抜

去年までは適性試験の得点とTOEICスコアを合わせて選抜していましたが、2018年(2019年度)は適性試験が実施されなかったため、TOEICスコアのみでの選抜に変更されました。

第一次選抜は主に倍率調整のために行われ、第二次選抜の受験者数が募集定員の3.5倍程度になるように足切りを行います。(=スコアが一定以下だからといって不合格になるわけではありません)

例年、選抜通過にそこまで高いスコアが要求されるわけではないです。550点あれば第一次選抜は確実に通過できるでしょう。但し、スコアは最終選抜まで影響するので、できるだけ高得点を獲得しておくべきです(最終合格者の平均スコアは例年700750点前後)TOEICについて、作者が行っていた対策を記事にしますので、そちらも参考にしていただけると幸いです。

1-2 第二次選抜

 最大の関門、法律論文試験が行われます。合否のほとんどはこれで決せられているといっていいでしょう。細かい対策については別記事で詳述します。

出題科目は、憲法民法民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法5科目です。商法と行政法は出題されません。

試験は「民事系」→「憲法」→「刑事系」の順で行われます。民事系・刑事系はそれぞれ135分、憲法90分です。

例年、民事系は民法2問、民事訴訟法が1問。憲法は主張と反論・私見とが設問で分けられているため実質1問です。刑事系は刑法が2問、刑事訴訟法1問。配点は公開されていませんが、配点比率は表紙に記載されています。

1-3 第三次選抜

 第二次選抜合格発表後、わずか数日後に行われる第三次選抜。面接による選抜であり、例年10人前後が不合格になります。面接再現は別記事で書きます。

 

2.第二次選抜の答案用紙について

  書式が公開されていないため、過去問演習をするなかで「どのくらい書けるんだろうか」と気になる方もいると思います。そこで筆者が受験した年度の情報についてお伝えいたします(非公開情報であり、今後変更になる可能性もあります)。

2-1 様式

答案用紙と構成用紙が配布されます。答案用紙は、A3縦置きで、裏表それぞれ32行です(2019年度試験時)。紙自体が大きいので、予備試験用答練用紙1枚分(表裏4枚分)は書けます。大問1つにつき1枚、憲法のみ2枚が配布されます。本番において分量不足になることはまずありません。刑訴などでは分量が多くないため「ここまでしかいかないのか」と焦るぐらいです。構成用紙はA3の白紙1枚です。

2-2 日々の演習でどうするか

 制限時間に間に合う限り、分量を気にする必要はありません。予備試験の解答用紙を法務省からダウンロードしてコピーし、それに収まるように書ければ問題ないでしょう。

 

3.第三次選抜の流れについて

選抜は午前のグループと午後のグループとに分かれます。受験生は受験番号別に分かれた控室に集合します。集合時間になると、教員の方が来て試験の説明をなさいます。その後、試験開始五分前になると一巡目の受験生が呼び出され、控室を出ます。呼び出された受験生は、面接室の前の廊下に置かれた席で待ちます。前の人が終了して5分ほどすると、担当の方が部屋の外に出てきて、中に入るよう促されます(ノックしてドアを開けることはありません)。入室すると机に荷物を置くよう言われ、受験票で顔を照合されます。着席するよう言われて座ると面接スタートです。試験官は2人です。

 

次回は、第一次試験対策についてお話ししたいと思います。

                                    以上

【使用教材紹介9】呉基礎本 物権法

お久しぶりです。引っ越し作業や卒業旅行でドタバタしていたらもう2月が終わりそうですね。

本日紹介するのはこちらの教材です。

 

 

物権法 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 5)

物権法 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 5)

 

 


【教材利用の目的:1周目のインプット、論証の収集、二周目以降のための土台作り】

 総則に続くシリーズ。呉基礎本はここまでしか刊行されておらず、改正の絡む債権分野・家族法については他のテキストにあたるほかありません...

 総則と同様、①平易でありながら実際の論述を意識した文体を取っている点、②図表を多用しているため権利関係を視覚的に捉えられる点、③一周目に必要最小限度であり、判例通説に従った一貫した立場を身に着けられる点、④債権分野との関連もしっかり載っている点 において優れていると思います。

 特にわかりやすいのが担保物権。物上代位や根抵当、共同抵当における異時配当の処理、法定地上権といった初見殺しの分野が頻出しますが、文章と図説を丁寧に追えば苦手意識を持つことなく乗り越えることが出来ます。

 お決まりの論証パターンもついています。総則の記事でも述べましたが、とにかく「どの条文のどの文言との関係で生じる問題なのか」を意識すると変に暗記に走らなくて済みます。

 

 競合するものとしては佐久間物権や道垣内物権といった基本書が存在しますが、個人的にはこの本で早めに物権法の土台を作り、気になった部分を基本書等で修正していくことをお勧めします。確かに予備校本の正確さは基本書に劣りますが、粗削りでも一通り学習したという土台があるのとないのとでは、二周目以降・答練・過去問・基本書等の知識の吸収精度が全く変わってくるからです(基本書では土台作りに時間がかかりすぎます)。

 自分は当初この本でインプットして短答過去問を解き、出てきた知識を一元化していました。その後論文演習に移ったときは、誤った理解の修正を重点的に行い、粗削りな土台をブラッシュアップ。現在は、DK論証集にこの本で得たものを一元化しています。

                                     以上

 

 

 

 

 

 

論文の書き方と「ケーキの作り方」

 こんばんは。今日は一風変わったタイトルですが、友人と話していて「なるほど」と思ったので寝る前に記事に残しておこうと思います。コラム的なものですね。

 

 入門講座の一周目のインプットを終えた段階で良く抱く疑問は「どうやったら論文が書けるようになるんだろう」というものでしょう。私もそうでしたし(今もですが)、質問箱でもこの趣旨の質問が良く来ます。

 多くの合格者の方は「写経して書き方を学んだ」「まずは書いてみないと始まらない」とおっしゃっています。そして私も同じような返事をしています。

 この「まずは書いてみないと始まらない」というのに関して、友人が面白いたとえ話をしていました。それをまねて、何故「書かないと始まらない」のか少し書いてみます。

 予備の論文は、"時間内に指定されたケーキをつくれ"というイメージです。しかし、自分たちが基礎講座で学ぶのはあくまでケーキに合う材料の選び方や材料の下処理の仕方であって、ケーキの仕上げ方ではありません。なので材料の選び方だけひたすら鍛えてもケーキは作れるようにはなりません。作れるようになるには、先人がどのように材料をケーキにしていったのかを見て、それをまねて学んでいくしかないのです。

 入門講座で一通り学習を終えた後、論文演習への移行に謎の躊躇を覚えるのは、やはり「材料の準備・下処理」と「ケーキ作り」との間に乖離があるからだと思います。そもそも材料の準備の仕方を忘れたり(基礎知識が抜けたり)、論証を忘れたり(下処理の仕方を忘れたり)というのもありますが、一番大きい原因はここにあるはずです。この隙間を埋める役割を果たしてくれるのが、各予備校の論文講座のはずなのですが...

 友人は、論文講座についてこのように言っていました。

 「論文講座では、誰かが作った参考答案にマーキングし、適宜表現を修正して終わりだろ。これってケーキで例えれば『ここのイチゴが少し斜めだから直しましょう。クリームはこう絞るとよりきれいに見えますね。ここの飾り付け方は他のケーキでも使えるので参考にして下さいね』って感じじゃん。ちょっと待てと。僕らはイチゴの盛り付け順とかクリームの塗り方とかを教わってない。知りたいのは材料をどうやってケーキにしたかなんだよ。…ケーキの作成過程を実況中継してくれる、そんな先生がいれば初期で迷うことはないんだろうけどな」

 私は友人と同じく某塾の論文講座を受講していたのですが、抱いた感想はこれと同じものでした。もちろん教えてくれることは決して無駄にならないのですが、肝心の論文作成過程を教えてくれないのです。だから、論文を初めて書くときに書き方が分からず迷ってしまう。

 

 これは論文作成過程を講義として公開することが時間の制約上出来ないことも原因だと思いますが、優秀な先生方でもわかりやすく示す、というのはかなり難しいのでしょう。私の知る限り、作成過程から論文の書き方を教えてくれる予備校の先生は数人しか知りません。

 前にDK先生の論文処理手順ノートが画期的だといったのは、この論文の作成過程、つまり「ケーキの作り方」について、上位合格者の作り方を抽象化してその一例を示してくれた初の教材だったからです。今まで見様見真似で習得するしかなかったものを「教材」という形で示してくれたことで、この隙間は大分埋めやすくなったように思います。

 

 まとめると、論文を初めて書くぞという方は、以下の流れを踏めばいいのではないかなと思います。

①基礎知識・論証のインプットと論文起案とは性質を異にするものであることを意識する。インプットを完璧に近づけても論文が書けるわけではない。

②写経などを通して合格者の起案過程を追い、とにかく1通書きあげてみる(①がどういうことか理解できます)。これで「ケーキを作る」ことのイメージをつかみます。一回書ききってしまえば、論文起案への抵抗はかなり下がると思います。★DK先生の教材は文字通りマニュアルとして有用。

③色々な論文問題を通し、「この時はこういうふうに書くのか」といったレパートリーを増やしていく。作れるケーキのレパートリーを増やす感じですね。③の繰り返しの中で「論文が書ける」ようになっていくでしょう。★DK先生の教材はここでも有用です。ぶんせき本の上位合格者の答案も参考になる。

➃③まででケーキが作れるようになっても、まだケーキの形をしているだけで見栄えがいい(=高評価がもらえる)ものではありません。そこで、これ以降では細かいところを仕上げていく。この段階で、論文講座で教えられた「きれいなケーキ」を作る練習をすればいいわけです。具体的には、事実摘示と評価、言い回しなどの練習、論証のアップデートなど。

 

 ...予備論文でA無し、大半がCDという微妙な成績で不合格になった私が今思うことでした。私も精進しなければなりませんね...

                                                                         以上